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映画でもアメリカ人に戦争で負けた 硫黄島 [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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ふざけ切った駄文ばかり書き散らしている報いと申しますか、小生、最終学歴がアイビーリーグ校の修士だと言っても誰も信じてくれません。

 またあのウツケ者のホラに違いないという顏を皆様なさいます。

 でもホントなんです。

 で何を専攻したの?よくぞ聞いてくださった。「国際安全保障論」つまり「軍事学」なんです。

 戦争に関する実学とでもいいましょうか。何せわが祖国が60年の平和に居眠りしている間にも、血みどろの戦争を大小取り混ぜ繰り返した国の学校です。宝の山でした。核兵器の作り方だとか、レニングラードを核攻撃した場合の命中率計算だとか、テロリズムとマスメディアのケーススタディとか、あの時ばかりは二年間クソまじめに取り組みましたですよ。

 しかし何でまたそんなもん勉強したの?それはですね、何故ニンゲンは叡知の限りを尽くして破壊し殺戮するのか、理由を知りたかったからです。

 だって、なぜ戦争が起きるのか知らんかったら、戦争の防ぎようもないでしょ?戦争は、人間が手足を動かして初めて始まる「実務」なんです。実務を予防するには実務が必要です。「センソー反対」と叫んでりゃええと思っとる平和ボケには、小生なりたくなかった。

 こういう人間が戦争映画を見ると、どうしてもヒネた見方をします。

 名優クリント・イーストウッドが監督、渡辺謙が主演した「硫黄島からの手紙」を見たとき、小生が好対照として思い浮かべたのは、同じ硫黄島攻防戦をアメリカの視座で描いた「硫黄島の星条旗」ではなかった。

 05年末に公開された日本映画「男たちの大和〜YAMATO」でした。

 DVDでよくご覧いただきたいのですが、「男たちの大和」には「殺す側の人間」(つまり米兵)が一人も姿を現しません。

 敵軍が米国であることすら曖昧です。

 登場人物は「二度と会えない君を守る」とかで、機銃掃射に引き裂かれ、海に沈み、尊い命を犠牲にします(そういや、恋人が待つ若人、新婚の若夫婦、子を抱える夫婦、母を想う若者と、登場人物がうじゃうじゃ出てくるのは、どんな観客でも感情移入できてマーケティング的には気が利いてますが、ストーリーの焦点がボケちゃったのが惜しかったですね。まあその話はまたの機会に)。

 が、彼らを死に追いやる邪悪な力は、まるで天災のように描かれている。当然、日本兵の砲弾に血を噴く米国人兵士なんて、とんでもない。絶対出てきません。

 似ているといえば、翌年に公開された「日本沈没」です。

 この映画で「守りたい人がいるんです。奇跡は起きます。起こしてみせます」と自らの命を捨て深海に沈みゆく草彅クンを見たとき、半睡状態にあった魯鈍な小生は、一瞬「あれ?これ、大和だっけ、日本沈没だっけ?」と錯乱しました。

 まあどっちもチンボツ映画ですからどうでもいいんですけど。

 結局「大和」での米軍は、日本を沈没させる天変地異と同等でしかない。つまり人間としては描かれないままなのです。

 よく見比べていただきたい。イーストウッド監督の「硫黄島からの手紙」は「戦争なんて『人知を尽くした殺し合い』にすぎない」という視点で透徹しております。

 日本人が殺します。アメリカ人も殺します。残虐さ、臆病さ、卑怯さ。そこに国籍は関係ない。

 だからこの映画はフェアだ。投降した日本兵を「見張りがメンド臭いから」と家畜のように虐殺する米兵までもきっちり描いている。

 この逆を、日本映画は描くことができるでしょうか? まあ無理でしょう。

 なんか、映画でも日本はアメリカに敗れたような気がして、悔しい。がるる。



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