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Twitterブームなんて日本の外じゃもう終ってます [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 おお亜米利加。

 ふざけた切ったこの連載も4年、最後くらいマジメに仕事しようと思って3週間かけて取材したですよ。しかし経営難の週刊(ピー)曜日は取材費出してくれないんで、飛行機代もホテル代も自腹、サンフランシスコだワシントンDCだフロリダだと動きも動いたり全米ツアー3万キロ。時差3時間&気温差30度を言ったり来たりしたもんですっかり体がおかしゅうなってもうた。あぐぐ。

 いやしかし噂には聞いてたんだけど、彼の国じゃホント新聞テレビって終ってるね。新聞読んでる人、飛行機で地下鉄で街角で必死に探したけど、3週間で十人おらんかったな。しかも全員老眼のジジババばっかり。

 40歳以下はみんなiPhoneかBlackberryでチャカチャカネットしてるし、キンドルで本読んでいる人もけっこういた。ABCだとかNBCなんて三大ネットワークですら、広告はハナテン中古車センターレベルのベタな地元中小企業ばっかりで、メリルリンチとか金融系CMがどかどか出ていた十年前と同じ国とは思えん。

 でわが祖国ニッポンに帰ってくると、こりゃ驚いた、誰も彼もみんなつぶやきだツィッターだと大騒ぎ。

 て旦那、アメリカじゃツィッターブームなんてとっくに終ってますぜ。誰も珍しがらない。で結局facebookやmyspaceほどみなさん使っているという感触ないまま終った。

 いや、便利なのは便利っす。すごいマスメディアっす。電車が遅れるとヤフーやJRのサイトより早く遅延情報出ます。寄ってたかって作る速報ニュースサイトみたい。新聞やテレビなんぞツイッターに息の根止められるのとちゃいますか。疑似世論ちゅうか、情報・意見・知恵募集ちゅうか「集合知」得るにはほんにええ道具どすなあ(ホメとかないとつぶやき攻撃される!)。

 でも例によって経済雑誌なんぞの「140字、1億人の『つぶやき』革命」とか「ツイッター革命、上陸!」とか「ツイッターで企業も変わる!」って、なんかあ、ていうかあ、チョットちがう。って感じぃ?

 ジャパンの皆さんはほとんど気付いていないけど、日本語でインターネットやってる限り、インターネットはグローバルメディアでも何でもない、結局ニポン人ていう島国民族から外に一歩も出ないローカルメディアなんですぜ(現段階じゃギャグネタでしかないオンライン翻訳がチョー賢くなりゃ話は別だが)。

 わたしゃ愛国者なんでヒジョーに腹立たしいんだが、インターネットの世界標準言語がイングリッシュであることは間違いない。

 現にわたしゃこの原稿書きながらフェイスブックでパリのフランス人女性ジャーナリストと「きょうは吐き気がする〜」「心と体はひとつやで〜」とチャットし、ニューヨークの画家とその作品を眺めながらアニメの影響について議論し、インドネシアのデザイナーにウエブ写真のオフロードバギーが排気量何CCか尋ね、フィリピンのキーボード弾きのねえちゃんの背中のタトゥーをほめ、ベルギーの舞踏家に初メールの挨拶をしとる。これ全部英語。ひとつのウエブ画面に、世界がフラットに並んどる。ホンマ夢のように素晴らしい。

 でもブロークンでええから英語で書かないと、はっきり言うが、欧米はおろかアジアやアフリカ(旧イギリス植民地のインドとか英語めちゃめちゃうまいぞ〜)等等、世界のコミュニケーションメインストリームから完全仲間ハズレです。

 同じSNSでもあの差別のデパート・アメリカでのフェイスブックには「嫌ユダヤ人」「ホモを国外追放に」なんてヘイトコミュニティが発生しにくいのは何でだと思います? 英語でそんなコミュ始めた日にゃ、世界中から反撃の書き込みと訴訟の嵐がこれまた英語で殺到するからです。

 はい、わがミクシィでは「日本に朝鮮人はいらない」とか「史上最兇痴女酒井法子は許せない」とか、ヘイトコミュ花盛りですね。

 おめでたいもんです。そんなもんで盛りあがってられるのは、みなさんがグローバルコミュニケーションから取り残され、浄化が効かない島国インターネットの住人だからなんですよ。

 ツイッター礼賛のみなさん、そんなに楽観してていいんすか?日本語ツイッターに流れている言説なんて世界スタンダードからすりゃ大半は読む価値ゼロですぜ。

(2010.3.17)

14年経って予想通り鳥肌実は生き残った [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 かつて私はアカ新聞の専従書記おっと間違えた朝■新聞社の社員記者として十七年間勤務いたしましたが、自慢ではありませんが人様に誇れるような実績は何一つありません。

 社是である憲法九条原理主義にも官庁発表絶対主義にも高校野球至上主義にも興味がなかったからです。

 唯一個人的に自慢している仕事といえば、小説デビューする前の町田康先生を「アエラ」の表紙にしたこと(だから肩書きはまだ『パンク歌手』オンリー)と、まだお笑い新人コンテストに出てきたばかりの鳥肌実を同誌でメジャーマスコミデビューさせちゃったことです。

 というか、みなさん鳥肌実なんか知らんでしょうな。あれから十四年、鳥肌がマスコミに出たのなんかそれっきりとちゃいますか。マスコミにとってあれほど危険な人はおりませんからなあ。ウヒヒ。

 などと若かりし頃を懐かしんでいたら、何と鳥肌実が東京は靖国神社近くで演説芸をするとの公安情報をキャッチ。

 かつては百人入らないシケた芝居小屋を一杯にするのも七転八倒の鳥肌、何をちょこざいなと件の九段会館へ出向いてびっくらこいた。ぐわわ千人収容のホールが五日間ソールドアウトになっとる!

 刈上げ•ギトギトオールバック=鳥肌ヘアの若者と公安警察官(とすぐわかる目つきの悪いますらお)が乱闘、物販コーナーで「ホップ•ステップ•玉砕」と染め抜かれたTシャツに人民は狂乱、玄関ではロバのパン屋さんみたいな軽トラをカーキ色に塗ったマヌケな街宣車をバックに記念撮影しておる。

 って、かつて鳥肌なんておもしろがってる変態、いや変人は私一人だったのに、世間、マジ!?

 鳥肌はまったく相変わらずだった。というよりますますアブナくなっておった。

 だいたいイベントのタイトルが「ダメ。ガッカイ。」ってあんた。

 で池田大作先生の等身大写真と一緒にマイケル•ジャクソン踊り狂ってるし「蓮舫みたいなチャンコロのメスブタに、なんで我が国の政策を仕分けされにゃならんのだ!」などと吼えていたかと思ったら四つん這いになって「こないだ蓮舫にアナルのシワを仕分けされる夢を見まして。あああああ」とか言ってウルウルしとる。いや久々に笑った笑ったああおなか痛いよう。

 と随喜の涙にまみれつつ気がついた。

 国粋主義•保守反動•日の丸崇拝•男尊女卑の右翼演説家•鳥肌実•四十二歳厄年•山崎製パン高井戸工場サンドイッチ班ピクルス担当契約社員•イルカセラピー歴五年•いらないものを処分しておったら何もなくなりました等々、醜悪な架空のオッサン鳥肌実(舞台を降りた鳥肌クンはオドオド小心の情けないチビです)がひたすら直立不動で演説、マヌケと差別と猥褻と暴言の限りを尽くす芸は十四年間まったく変わっとらん。

 こんなんテレビに出れるわけないじゃん。でオールマスコミ全力で鳥肌を無視し続けたがネバーマインド。最近じゃYouTubeで鳥肌動画もどかどか見られますし、ホンマええ時代ですなあ。ははは。

 だが! 鳥肌中将を甘く見てはいかん! 私は昔徹底的にインタビューしたから知っとるぞ。彼はけっこう真剣に笑いについて考えてます。

「テレビで受けるとか邪念を取り払って、自分にとって何がおかしいのか考えた結果が、醜悪なオヤジなんです。だから最初から商品として成立しない芸だな。ぬくぬくした日本で、お笑い芸までがブルジョア化してしまったんです。笑いはもっと本能に忠実なものだ!ダウンタウン路線はもういい!松本人志なんか芸人辞めなさい!」

とアエラで発言してダウンタウンににらまれ吉本興業を追われたとか、ホントは渋谷で突然全裸になってゴミ箱の中で倒立して公然猥褻罪で逮捕されたからだとか、まあどうでもいいや、その覚悟に十四年前のうがやさんは感動したものです。

 でも何という歴史の皮肉、十四年経ってみると、鳥肌の芸はまったく摩耗してない。

 レザーラモーンだとかギター侍だとかがテレビであっという間に超有名になりあっという間に消え、ダウンタウンはコメディアンじゃなくてテレビ司会業者に成り果てる一方、テレビが排除した鳥肌みたいな芸人の方が寿命が長いということが証明されてしまった。

 どうだ俺の審美眼は間違ってなかっただろうざまあ見ろ。

(2010.02.15)

タグ: 鳥肌
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YouTubeがCDの次の世界の標準音楽メディアになるでしょう! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]



 週刊金曜日をご愛読の共産主義者のみなさまあけましておめでとうございます。

 今年も日本の赤色革命を目指してさし上る朝日の如く前衛的に一党独裁いたしましょう。

 さて最近の革命運動の勝利といえば、年末の紅白歌合戦。

 無名の庶民から一夜にして世界的シンガーに躍り出るというプロレタリア暴力革命を成功させた大英帝国のイケズなおばはん、じゃなかった革命烈士スーザン•ボイルをご覧になりましたか。ご承知かどうか、片田舎に暮らすブサイクなおばちゃん、おっと間違えた、地味な主婦でしかなかったミセスボイルが世界でCDを数百万枚売るなんて、マイケルジャクソン殿下みたいな偉業を成し遂げることができたのは、英国で放送された素人タレント番組のビデオを誰かがYouTubeにアップ、世界中が彼女の歌をインターネットで視聴できるようにしたからですね。マイケル殿下を地球規模のスターにしたのが殿下の超絶ダンスビデオを世界中に流したMTVだったことを思い出すと、あれから三十年弱を経て音楽の世界標準メディアが完全に「テレビ」から「インターネット」に移行したことがわかります。ワーオ。


 いや玄人だけの話じゃないんです。ちかごろ若い音楽仲間なんぞに「最近なんかおもろいバンドある?」てな話を(もちろんメールで)しますと「これおもしろいですよ」と返ってくるのは決まってYouTubeのURLのリスト。

 クリックするとたちまちビデオクリップが始まる。すごい!世界中がよってたかって作る音楽ビデオ図書館だぞ。音楽も聴けるし動く絵も見れる、いや見ることができる。しかもタダ。うひゃーこりゃ快適だねえ。言うことなし。CDなんぞ買う気起こらんわ。

 そうやって教えてもらった私が最近ハマったのはイギリスの「Selfish Cunt」(日本語にすると(ピー)という意味です。まあジコチューメスブタてな意味です)です。このバンドの「I X NEW YORK」って曲のビデオがすごい。

 9•11テロでビルに飛行機が突入するおなじみのニュース映像と連ドラ「Sex and the City」の主人公のねーちゃんの画像、さらにアメリカ空軍の爆撃機がどかすか爆弾をばらまくニュース画像を切り刻んでぐちゃぐちゃにつなげたって代物。

 通しで見ると「アメリカもアルカイダも破壊と殺戮って点じゃどっちも同じじゃねえか」って壮大な批判がちゃんと映像で表現されてる。「グローバル経済への脅威となる連中を/法と秩序を回復するまで/殺して殺して殺しまくるぞ」ちゅう歌詞もワーオですが、その歌と映像が一緒になった時のインパクト、まあいっぺん見てください。

 もひとつYouTubeが革命的なのは、プロもアマも平等に世界に動画を公開できちゃうってことです。オリコン裁判で孤軍奮闘していた時、どこのテレビ局も取材に来てくれないので、ひがんだ私はビデオカメラに向かってしゃべる自分の映像を五分ほどのビデオメッセージにして約五十本アップしました。

 そしたらびっくらしたね、最多で十万を超えるアクセスが来た。わはは。

 時間無制限だし自由に好きなことしゃべれるし、テレビ取材よりよっぽどええやんけ。

 てんで、味をしめた私、最近はライブ会場(私ミュージシャンもやってるって言いましたっけ?) にビデオカメラと三脚を持参、自分がベースを演奏するライブをインターネットで公開しております。名付けて「うがやMTV」

 そしたらまたすごいんだ、これが。アリゾナ、オーストラリア、ドイツなどから「お前の演奏を見たぞ。カッコいいな。おれの演奏ビデオも見てくれ」とどかどかメールが来てあっという間にメル友。うひー東京にいながらワールドツアーでございます。

 おお一年の計は元旦にあり。今年の目標が決まりました。スーザン•ボイル先生のようにYouTubeで世界的スターとなり、紅白歌合戦に出て、キムタクの英語を鼻で笑ってやる。おおなんと清々しくなんと壮大な初夢!

(2010.01.17)

あまりにイタい 小室哲哉 回顧本 [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 大変喜ばしいことに2009年。ポピュラー音楽界は近年稀な盛況でありました。

 CDの売り上げはジリ貧だがネバーマインド。連日のようにきらびやかなスターたちが新聞テレビのトップニュースを飾っていたではありませんか。

 筆頭は酒井法子容疑者、じゃなかった元被告、いやいや創造学園大学生だったっけ?今年もっとも耳目を集めたビッグイベントは彼女の「ライブイン東京地裁」でしたね。

 そして久々にスキャンダルじゃなくバカ売れのマイケル寂聴おっと間違えたジャクソン先生。

 おおそうだ押尾学先生も健闘されました。

 愛し合ってるかい忌野清志郎先生は雨上がりの夜空に昇天されベイベー、し〜れ〜と〜こ〜のみ〜さ〜きに〜ハマナスの花が咲いたら森繁久弥先生を思い出しておくれ。

 チェ・ホンマンこと草薙剛先生は「裸で何が悪い!!」と人間存在の根源を問いかける哲学的名言を残されたました。

 とまあ、ヒットチャートの顔ぶれがあまりに豪華絢爛で若干小物感があるのですが、忘れてはならないのがミスターJポップこと小室哲哉先生です。

 さすがかつて九〇年代にCDの市場規模を倍増させた功労者、五億円の詐欺事件で懲役三年・執行猶予五年の有罪判決と、ミュージックシーンのみならずクライムシーンでもメガヒット級の業績を残されたのは今年五月でした。

 その小室先生が「なぜ事件は起こったのか? 絶頂からの迷走、転落、そしてヒッパリ棒マル」と思わせブリブリなコピーで書き下ろし「罪と音楽」(幻冬舎)を出版されたのは、わずか四ヶ月後。はいはい、買い求めましたとも。

 で本を手にしてのけぞった。

 何やねんこの表紙。漆黒のグランドピアノに向かう小室先生のブラック&ホワイトフォトグラフィー。これだけでも人格障害ギリギリのナルシシズム臭プンプンなのですが、奥付にStylistダレソレとかHair&Makeダレソレとか、アルファベットにする必要もないクレジットが並んでいるのを見た瞬間、小生「やめて〜」と本屋店頭で叫んだ。自己陶酔がスベって痛い。メイクってスタイリストってああた、反省するならカッコつけやめるのが先決でしょーに。

 まあ辛抱辛抱。本文、なかなか正直と思います。

「いつからか、音楽が動けば常にお金が動き、音楽の流れとお金の流れは近いものだと思うようになっていた」
「Jポップが幼児性を強めてしまった原因の一端は、僕にある」。

 いいじゃないですか。まあ執行猶予期間中に出版する本ですから、殊勝に反省するのはお約束。自然、この本も「ファンのみなさん、嘆願書を書いてくださった方々(日本レコード協会会長とかギョーカイ大物のみなさんね)、松浦社長、千葉副社長をはじめとするエイベックスのみなさん(被害者に賠償金六億円以上払ってくれたしね)、恩情をいただいたすべての人たちに報いる」決意表明に大きな紙数を割いておられます。

 しかしTK生、肝心な点では大ボケをかまし続けます。

「九〇年代、僕は、コード進行とリズムでヒット曲のスタンダードをつくった」と過剰な自己評価が出るあたりでもう激しくイタいのですが「地デジ効果により、音楽がまた景気づく」「地デジ時代を意識した半歩先のCMソングを作るなら」と、テレビタイアップという過去の成功体験から抜け出せない自説を延々と開陳されるに至っては、高度成長しか知らん昭和のオッサンの酔談のよう。「時代に付いていけません」と告白されているようで心が痛みます。

 そしてなによりこの本が痛々しいのは「音楽の価値は数字で計測できる」という自分を破滅に導いた思考をまったく治癒できていない点です。

「クオリティーを求める人々は健在である」「わかりやすさだけを求めない、質を求める層は枯れていなかった」と言うは正しい。

 が、なぜそう考えたのかっていうと、村上春樹の「1Q84」は発売1週間で100万部の「ミリオンセラー」を記録したからとか、辻井伸行の音楽を求める人が多数いたことはCDの売れ行きが物語っているとか、高品質テクノロジーのiPhone3GSは発売後たった3日で100万台を突破したとか、やれやれ小室先生、あなた本当に経済的数字でしかものごとの価値が理解できないんですね。

 歌詞がわかりやすいとかコード進行がわかりやすいとか、そういう「わかりやすさ」が日本のポピュラー音楽の破壊をもたらしたんじゃないってわかりませんか。

「数字」というわかりやすい価値指標こそが致死ウイルスだった。それに気付かない限り「小室哲哉の破滅」という大きな犠牲も報われませんなあ。

罪と音楽

罪と音楽

  • 作者: 小室 哲哉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2009/09/15
  • メディア: 単行本



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ヤンキーラップ これほど素晴らしい音楽はめったにないぞ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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「ケンカの弱い奴がパンクスになり、強い奴はヤンキーになる」

 そうおっしゃったのは誰あろうご自身もパンク歌手でおられる町田康様であります。

 けだし名言。

 小生が京都のパンクロック周辺でウロチョロしておった若かりしころ、パンクスって意外にガリ勉あがりが多かった。

 メガネ取られて急に強くなるいじめられっ子の逆襲て言いますか、鬱屈した暴力衝動が頭頂から噴出してモヒカン頭。が土台元が生徒会役員上がりですからライブハウス前でたむろ・ケンカ弱いの忘れてメンチ切って地元ヤンキーと乱闘・ボコボコにされパンクス全員顔面出血し路上に昏倒。と情けないありさま。

 しかも元パンクスども、今じゃ編集者・大学教員・銀行員など勤勉労働、・高校生の父親などと、すっかり健全な市民生活を送っておる。


 そこへ行くとヤンキーの皆さんは気合いが違う。マジな話、低学歴・低収入という点でホンマもんの日本のアンダークラスであります。社会構造的にいえばアメリカのアフリカ系やラテン系、イギリスの労働者階級と近い。

 さらに言えば「ヤンキー文化」ってのは日本の若者文化の中で欧米にお手本がない完全ジャパンオリジナル。いやマジっす。その意味で私はヤンキーとギャルは欧米のマネでない日本発の独創的なユース・カルチャーだと本気で考えておるのです。

 じゃあそのヤンキーから音楽文化が生まれたかっていうと、それが意外にない。

 矢沢のエーちゃんとか横浜銀蝿とか亜無亜奇異とかあるにはあるんだが、どっちかってえとそれは「ヤンキーのみなさんが愛聴する音楽」だった。ご本人たちはシャコタンと集会とケンカに忙しいのか、ギター持って曲書いて、何て創作活動にはなかなか入って来ん。イギリスのパンクやアメリカのブルースみたいなアンダークラス発の音楽ムーブメントにならないんだわ。

 ところがこの状況がラップ・ヒップホップの登場で激変した。なんせ詩さえ書ければ歌メロ書く必要ないし、楽器の練習する必要もない。しかも最近じゃYouTubeもあるからネットで動画見て歌も聴ける。うひゃー。

 で、すごい傑作がどんどん出てきたぞ。今年その名も「獄窓」ってアルバム出した「鬼」(ラッパーの名前ね)のアルバムの「小名浜」って曲は泣けます。

 これ福島県いわき市の小名浜のことだと思うんだけど、たぶん鬼の故郷なんだろうな。都会的な華やかさとは全然無縁の地味な漁師町が舞台、そこで語られるのは主人公の子どものころの話なんだが、それこそ低所得、父親が7歳で出奔、水商売の母が団地で彼と妹を育てるんだが、主人公は中学卒業と同時に矯正院だか少年院だかを出たり入ったり。それはまるで小名浜のかもめのよう。ううう何て美しい歌なんだ。

 こういうアンダークラスの日常風景を歌っているという点じゃAnarchyの「fate」もすごい傑作ですな。どこか都会の巨大団地。潤いもクソもない殺風景。アル中のオヤジの怒声、虐待される隣の女の子の悲鳴。真っ暗な家に慣れた小二。キレイごと言っても結局全部カネ。ああなんてリアルなんだ。

 低所得者が住む団地、崩壊した家庭、薬物依存、ドメスティックバイオレンスと、彼らが歌う風景は驚くほどアメリカのラッパーやアフリカ系ミュージシャンが歌ってきた風景と酷似している。

 今や新自由主義経済が世界を覆うと同時に格差社会は各国共通の社会問題となり、未来を奪われた若者はそのフラストレーションをラップに叩きつけるのであったなんて小賢しいインテリ気取りのブンカジンみたいな痴れ言いうとる場合かボケ。

 ヤンキー、いや正真正銘の我が国のアンダークラスがやっと自分の言葉を見つけて音楽というメディアで彼らの世界を歌い始めたのですよ。

 ロックだパンクだってたってしょせんミドルクラス家庭のボンボン&お譲ちゃんの手すさびだった我が国じゃ、これは革命的なことなんだぞ。


獄窓

獄窓

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: 赤落PRODCUTION
  • 発売日: 2009/09/02
  • メディア: CD



”DREAM AND DRAMA” LIVE!

”DREAM AND DRAMA” LIVE!

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: R-RATED RECORDS
  • 発売日: 2009/06/03
  • メディア: DVD Audio



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由紀さおり 恐るべし! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 つくづく売文業とは因果な商売よなあと思ひしはコンサアトに足を運びし時也。

 善男善女手を取り合い歌舞音曲に身を委ね慰撫愛撫に興ぜし折も、我監視兵の如く双眼鏡を握り絞め歌手の表情を鋭意観察せざるを得ず。

 何故なら如何なる永年歌手も歌唱誤むれば表情一瞬歪みたり。歌ふ途中集中力途切れし瞬間目線泳ぎたり。さういふ現場数々踏みたるに、焉んぞ歌の巧拙分からずを得ん也。

 が剣呑、最近は南蛮渡来イヤモニって飛び道具があるから油断なりませんぞご同輩。

 イヤモニ。ってタバコ吸ってクビになった加護亜依がいたモーニング娘。の分裂セクトではなく「イヤーモニター」って、爺の補聴器みたいに耳にすっぽり入るモニターイヤフォンてのがあるんですな。しかもワイヤレスですからコードもない。

 ぱっと見わからない。こん中にバックバンドの演奏はおろか、リズムクリックや場合によっちゃ歌メロまで流れるから要するにカラオケと同じ。あげくは「あと4小節でギターソロ入ります」なんて指示まで流れる。

 ははは。最近の「アーティスト」は歌がうまいはずだわ。

 そんな痴れ事まみれの土曜昼下がり、人に勧められ電車で二時間かけて湘南・厚木まで行って見たのが由紀さおり

 で例に拠ってショウの間ずっと双眼鏡握りしめて由紀さおりの顔を観察するんだが、これがびっくらこいたわ。

 だって完璧なんだもん。御歳六十一歳、異説には六十三歳だか、まあどっちでもいいや、休憩十五分挟んで三時間歌いっぱなしなんて、エイベックスのねーちゃん歌手でも最近やらんぞ。で、この三時間で、三十曲くらい歌ったかね、由紀女史。

 音程、リズムともただの一個所も狂わない。

 あんまり完璧なんで口パクじゃねーのかと思ったくらいだ。いやいや音程とリズムだけじゃない。音を伸ばす長さ、息継ぎのタイミング、クレッシェンドとデクレッシェンドの緩急、どれも一点のミスもない。

 なおかつ。手の動かし方や立つ位置や角度、視線の方向、顔の向き、マイクの持ち方と、何とかアラ探しするんだが、だめ! わし降参!

 じゃあね、感情のないロボットみたいな歌い方みたいに思うでしょ?

 それも違うんだな。ショウの幕間で女優さんが出てきて、ステージママだった母親との思い出を演じるシーンがありまして、その後に由紀女史が「あなたと出会った幸せ」を歌うんだが、母を思い出したかボロボロ涙を流し始めた。

 ウソじゃないよ。わしゃ双眼鏡ではっきり見たぞ。でも歌がまったく乱れないのだ。がるる。

 いや、訂正。一個所だけミストーンを出したのに、わしは気付いた。

 アンコールのおり「真綿のように」を歌っている由紀女史の頬にまた涙が幾筋も流れ落ちる。もうアラ探しはいいやと思ったら、一回だけ「スン」と鼻をしゃくり上げる音をマイクが拾った。

 この「スン」。

 スン。

 ただ「スン」だけが、三時間のショウでたった一回のミストーンだった。だがこのスンのおかげで後は口パクでも何でもない生歌だと断言できるのですよ。

 もうお気付きだと思うけど、私は由紀さおりがイヤモニを付けていないか、必死で探した。

 何度も何度も見た。が、ない。バックバンドのナマ音と床上のモニタースピーカーだけというオールドファッションなステージにマイク一本持ってぴんと立っている。うわーかっこええやんけ。

 るーるるるーるーるるるーって「夜明けのスキャット」で彼女がスターになったのは一九六九年でしたか、そのころからポピュラー音楽は「シンガーソングライター」って歌手と作詞作曲家兼業ってのが流行りになりまして、専業シンガーに専業ソングライターが曲を提供する分業制度は「歌謡曲」と呼ばれ「つくりすぎ」と若者の侮蔑の対象にさえなったのです。

 でも「つくりすぎ」の「つくり」には、プロの歌手としてのスキルは死守するという気概も入っていた。

 で、四十年。ふと振り向けば「歌謡曲」にアレサ・フランクリンやエディット・ピアフにも匹敵するようなシンガーがごろごろいるのに気がついて唖然とするのです。

「再評価」なんて失礼なことは口が裂けてもよお言わん。だって由紀さおりは四十年間ずっと歌い続けてるから。

「アタシはずっと評価されてんのに再評価って何よバカ若造」と叱られそうな気がする。

 すみません。


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なんでのりピーなんかにモラルの規範なんて求めるの? [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 いつの間にか、秋。

道端に虚しき声や蝉骸。

暮れなずむ空に茜の鰯雲。

おお何と儚くも人生は過ぎ去ってゆくものであることよなあ。

 などと詠嘆に浸りつつ思索散策、路傍の虫の音に耳を澄ませておりましたところ

「タカソーノリコヨーギシャ、タカソーノリコヨーギシャ」

ってスズムシの声。何やねんそれ。わわわ。こっちじゃ

「ジショープロサーファー、ジショープロサーファー」

って虫が鳴いとる。

 ぎゃっ。八月ずっとネットとテレビで芸能ニュースばっかり見てたせいで、幻聴が聞こえる。ごめんなさいお母さんぼくの魂はすっかり汚れてしまいました。

 んで、何だっけ?シブヤでポリさんに職質かけられて薬物で現行犯逮捕されたって、押尾学だっけ?ちがう?トンズラしたヨメはんは和田アキ子だっけ?え?矢田亜希子?誰それ?だんだん混乱してきたぞ。

 まあどうでもいいや。

 でも読者のみなさんだってアレでしょ、私が愛してやまかなった川村カオリが乳がんとの闘病の末38歳で早逝してしまったことなんぞ、すっかり忘れてるでしょ。「芸能人名誉毀損判決高額化」の先頭を切って芸能マスコミから少し恨まれ、なが〜く恨まれた大女優・大原麗子が亡くなったなんて忘れてるでしょ。

 いやあ、1955年以来続いた自民党独裁をひっくり返した大政変くらいしかのりピー報道に勝てるニュースはなかったんだから、さすがだね、らりピーは。じゃなかった、のりピーは。

 でもひとつわからんことがある。なんでみなさん歌手や俳優の私生活に「モラルのお手本」なんて求めるの?

 警察とか新聞なんぞマジメに「芸能界も薬物の一掃に真剣に取り組むべきだ。今回のような人気タレントの事件が続けば、安易に薬物に手を出す風潮に拍車をかけかねない」(讀売)なんてぬかしとる。わはは。ほとんど寝言以下ですな。

 言うのも馬鹿馬鹿しいけど、ミュージシャンや俳優、画家や小説家とか表現者(古風に言うと芸術家だな)の私生活なんて、どうでもよろしい。

 すぐれた作品を生んでいるのなら、本人は社会落後者でも犯罪者でもええのとちゃいますか。作品だけで評価すればいい。

 もとより芸術家ってのはそういう「法律」とか「道徳」とか、社会のマジョリティが合意した価値観とは別の価値世界を表現するのが仕事じゃないですか。

 詩人のウイリアムズ・バロウズなんかへろへろのジャンキーだったし、ウイリアム・テルの真似して奥さんの頭に林檎乗せてピストルぶっ放して殺しちゃった、とかムチャクチャなじーさんですが、彼の文学作品の価値は微動だにせんね。

 アメリカでミュージシャンや俳優がドラッグやろうが拳銃ぶっ放そうが、まあスーパーのレジ横で売ってるタブロイド誌やケーブルTVのワイドショーは大騒ぎでしょうが、それでDVDやCDを回収するだとか、事務所やレコード会社クビになるなんてありえない。

 ドラッグのリハビリやって復帰した人、多いっすよ。その方が青少年が立ち直るお手本になるしね。

 そのへん、アメリカ人の友だちに聞いたら「モラルのお手本を社会に示すのは聖職者や宗教家の仕事であって、芸術家の仕事じゃない」と即答された。なるほど。

 じゃあのりピーもそうかって言うと、苦しいね。だってのりピーは歌手としても俳優としても、創造性も独創性もないから。芸術家だなんてとても言えない。作品だけでは勝負できないんです。

(あ『いただきマンモス』はなかなかクリエイティブなギャグやった)。

 じゃあ彼女は何だったのかというと、日本独自の「メディア・キャラクター」としか言いようのない存在ですな。

 業界では昔「タレント」、最近ではいちびって「アーティスト」などと呼びます。

 つまり「歌または映画またはドラマで人気者になる→企業のテレビCMや商品のキャラクターになる→また人気アップする→最初に戻る」と「歌ドラマ映画→商品宣伝」というマスメディア上のサイクルをぐるぐる循環する職業。

 悲しいかな、このメディア・キャラクターさんたち、表現者のフリはしてるが、拠って立つ「自分の作品」ってのがない。ただマスメディア上での「大衆の認識」という、得体の知れない、実体のないモンだけがその商品価値なんです(これは精神的に空疎でツラいやろなあ)。

 あ、そうか。わかった! 誰ものりピーを歌手や俳優として評価なんかしてなかったんですね!

 メディア・キャラクターだからこそ、私生活で法律違反すると「大衆の認識」が総崩れになる。もともと商品宣伝にがんがん使われていただけに「パッケージには品行方正・清純なアラフォーママだと書いてあったじゃないか」って「騙された感」で消費者は怒る。商品購買だから、契約違反ですわな。

 そうすると、日本人の消費者はけっこう賢くのりピーを見抜いてのかもしれんなあ。(敬称略)

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時代はお笑い2.0へ! ヒトラー総統がクリスマスにお怒りのようですよ! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

y2bimages.jpg そーいやー最近テレビ全然見てへんなあ。

 ホンマ地上波なんかこの前見たのいつやろ? 思い出されへん。

 等々、猛暑に朦朧とする頭で横臥・放屁などしつつ思索しておりました。

 だいたいサラリーマン記者やって早朝から未明まで農奴労働していたころにゃ、定時にテレビの前におるなんてできるわけあらへん。カンチエッチしよもぼくは死にましぇんもレンタルビデオで見たもん。

 HDレコーダーなんて便利なもんが出たんで買ったはいいが、録画してまで見たい番組なんかまずないことに気付いてアフターフェスティバル。自慢じゃないが小学生だった30+x年前には「テレビジャンキー」とまで言われたわしが、なぜ?

 ああああわかった。YouTubeのせいだわ。い

 えね、最近MacBookを買ってキッチンテーブルに置いてるんですよ。それがネットにつながってるから、毎晩お笑い動画を見て毎晩笑い転げておる。

 浅越ゴエの「スーパーマリオブラザースのマリオさんが集めたコインを申告していなかったとして東京国税局に逮捕されました」て「しっくりこないニュース」シリーズとか、マッシュルームカット・銀縁メガネのブサイクなデブが「親の財産食いつぶす〜ちょろいぜ〜」と歌って行進、イタすぎるニート芸人「ガリガリガリクソン」とか、関西に住んでる妹が「これおもろいで」とYouTubeのURLをメールで送ってきよる。

 それだけじゃない。なんせとにかくキーワードぶち込んで検索すりゃたいていのモンは出てくる。

 先般崩御されしマイケル陛下のインタビュー番組も、英米でしか放送しなかったの、全部見たぞおれ(オプラ・ウインフリのインタビュー / 'Living with Michael Jackson'

 要するに「世界中よってたかって録画する巨大HDレコーダー」みたいなもんだわな。

「アメリカのどっかの田舎町食堂で椅子につまずいて転倒、ガラス窓を突き破って道路に転げ落ちるウエイトレス」なんて爆笑実画もある。

 いやあ、断言するが今の日本の地上波テレビでYouTubeよりオモロイ局なんてないね。

 しかもYouTubeは最近じゃどっかの無名お笑いクリエーターの作品発表の場になっとる。一人が傑作動画をアップすると、また誰かが対抗して同じネタでアップ。連歌ですな。

 最近私のお気に入りは「ヒトラー総統がお怒りのようです」シリーズだ。

 これ元は「ヒトラー最期の12日間」てマジメなドイツ映画、包囲され崩壊寸前のベルリンでヒトラーが将校たち相手にキレて怒鳴りまくる5分ほどにシーンに日本語字幕を勝手につけちゃうってバカバカしいシロモノ。

 「クリスマスについてお怒りのようです」って最高傑作じゃ「クリスマス中止命令」を出したのに無視されたモテない童貞ヒトラーが激怒するちゅう設定です。

「ドクオだって言ったヤツあれウソかよ!!」
「結局童貞はいつものキモオタメンバーだ!!」
「ニコ厨のくせにバーカ!!」
「揚げ句の果てはキモヲタだ引き籠りだと言われ気付いたらNEETの仲間入りだ!」

 とまあ、ドイツ第三帝国独裁者がアキバ系社会落後者みたいな情けない話しとる。

 おまけに

「お前らだいっキライだ〜!」
「畜生め〜!」
「おっぱいぷる〜んぷるん」

とか、意味不明の字幕もホントにヒトラーが日本語でそう言っているような空耳が。まあ見て。ホントに笑えるから。2万8531回も再生されているから、DVDならけっこうなヒットだぞ。

 あまりによくできているので「ヒトラー総統ドラえもんについて語る」「コミケに必死なヒトラー」とか「総統アンパンマンを語る」とまあ、一体どこのヒマなやつがこんなにイカれたこと考えとるんじゃというくらい、どかどか爆笑作品がアップされとる。

「ヒトラーが松岡修造だったら」(暑苦しい)とか「ヒトラー総統が地デジ大使(そうです。『ハダカで何が悪い!』の名せりふで有名なアノ方です)にお怒りのようです」とかも笑えますぜ〜。

「総統は金融危機にお怒りのようです」ってけっこうインテリな作品もあるんだが、金融用語が高度すぎてアクセス数はいまいち伸びない。ははははは。

 これだけよくできた動画がみんな作者不詳なんだからすごい。

 大多数の無名の人たちの中に、こんなにユーモアのセンスがあるヤツがいるなんて、やってみないと分からないもんだね。

 お笑いも少数エリートの「芸人」とか「放送作家」が独占できる時代じゃねーな、こりゃ。だって、こっちの方がおもしろいんだもん。

(今回はブログにしてみんなに感謝されますな。リンク張りまくりや。下のがオリジナルね。YouTubeがおもしろすぎて思わずこっちも買ってしまった)





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団塊の諸先輩方、みなさんも負の歴史と向き合えない腰抜けなの? [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

「バーダー・マインホフ」。

 おおブレネリ、何と懐かしき名前よ! 

 などと、この名前を聞いてすぐピンと来るなんて、さすがは週刊金曜日の読者、オールドレッド様でございますな。

 別名ドイツ赤軍(RAF)。1960年代末から約10年間、マシンガンと爆弾で武装、デパートや出版社、米軍基地爆破、裁判官や検事総長、財界有力者の暗殺や誘拐、ハイジャックに大使館占拠とまあ、ヤンチャの限りを尽くした左翼過激派の若人たちです。

 この バーダー・マインホフの物語をドイツ人、しかも彼らと同じ団塊世代の監督やプロデューサなど制作陣が映画にしたって言うので、すっ飛んで見に行った。彼らドイツ団塊の世代が「自分たちの世代の負の歴史」をどう映画にするのか? んで、試写が終わってワタクシごろごろ床を転げ回った。ぐわわ。ぐやじい。やられた。またドイツ人にやられた。

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「ヒトラー最期の12日間」というドイツ映画を見たときも、ワタクシは悔しさの余り映画館の床を転げ回りました。映画館を三周くらいしたところで係員に蹴り出されました。だってこの映画は「ヒトラーを人間としていいところも悪いところも公平に描く」という途方もないリスクに挑戦、見事に成功しているですよ。

「夜遅くにすまないね」「料理おいしかったよ」と女性秘書やコックを気遣い、ワンちゃんを可愛がり、時にはジョークまで言う。

 だけど戦況が自分の思い通りにならないとキレて部下に怒鳴り散らすわ、手柄は全部自分のものにして失敗は全部人のせいにするわ、ああこういう困った上司うちの職場にもいるよなあ、ヒトラーてただの困ったぶちキレおじさんやんか。とまあ、ものすごくリアリティがある。ヒトラーとて悪魔でもモンスターでもなく、愚かな人間の一人であるという意味で、私たちと連続しているんですな。それがよくわかる。

 この「自分たちが犯した負の歴史」に真っ正面から対峙しようとするドイツ映画の勇気というのはすごい。日本映画に「昭和天皇を主人公にした第二次世界大戦の映画」なんて作れるか? 

 ははははは。無理っす無理っす。同じ敗戦国なのに、戦後64年経った今でも負の歴史を直視できず「ただ家族に会いたかった」とか「ただキミのために死にに行く」とか、おセンチな少女趣味に逃げ込んでウジウジメソメソしとる腰抜け日本映画とはどえりゃあ違うがや。ぐぐぐぐやじい。私は愛国者なのでドイツ人に負けるのは腹立つぞ。がるる。

 んで「バーダー・マインホフ」。この映画、主人公たちに何の感情移入もない。アンドレアス・バーダーはただの粗暴な阿呆。ファタハの軍事キャンプでもアラブ人を見下している傲慢なヨーロッパ人。作戦がいい加減なのでリーダーのくせにあっという間に逮捕されちゃう。ウルリケ・マインホフはジャーナリストなのに勢いに流されて武装闘争に入っちゃったはいいが、逮捕されるとメソメソ泣くし、獄中で真っ先に自殺しちゃう。

 んなもん、世界同時革命なんぞ実現するわけねえだろってのに、無実の人を殺しまくり、警察との復讐合戦になって最後はお定まりの分裂と裏切り。その描写はリアルで乾き切っている。まるで「役者を使ったドキュメンタリー映画」みたいだぞ。

 で、やっぱり比べちゃうのは若松孝二監督の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」だな。

 ははは。でもダメだわ。やっぱり。「バーダー・マインホフ」のように潔く自分の歴史と対峙した作品と比べると、「実録・連合赤軍」の方はお葬式で流す「故人さまの生前思い出ビデオ」みたいに見える。監督が実在の登場人物に近すぎたからなの?「なぜ、革命運動が仲間のリンチ殺し合いみたいな愚行に終ったのか」という歴史としての問いを徹底して突き詰められない。対象を突き放して直視できないんですな。

 やれやれ、団塊の世代の諸先輩方。昔あなた方は父親世代を「戦争責任を総括できないのはケシカラン」とデモったりアジったりして暴れてたんじゃないの? じゃあ、自分の世代が犯した負の歴史もちゃんと直視したらどうなのよ。

 日本人って、結局どの世代も負の歴史を直視できない腰抜けばかりなの? ぬおお大和魂はどうなったのだ? 

 何て吠えていたら、ヒトラー役の俳優ブルーノ・ガンツがインタビューで「日本のことはよく知らないけど、戦後処理ではドイツのほうがうまくいったみたいだねえ」などとしゃあしゃあとぬかしてけつかるのでまた憤激。ああ情けない。



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キヨシローの何がエラかったんかお前らわかっとるんか? [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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ありがとうキヨシロー!お前の遺してくれた音楽はサイコーだぜ!オイラたちみんな愛しあってるからどうか安らかに眠ってくれベイベー!

 てなこと言ってアツくなってる御仁、気付いていないでしょうがあんた相当なオッチャンだよ。

 いやもうどっちかちゅーと前期高齢者だね。メタボでしょう?細かい字が読みづらいでしょう?頻尿でしょう?ハゲでしょう?哀しいでしょう?

 だいたいキヨシローの葬式で弔辞読んでた甲本ヒロトがアタクシと同じ46歳だ。そのアタクシが高校んとき初めて見た日本のバンドのライブがRCサクセションです。だからもう忌野清志郎に影響を受けたバンドに影響を受けたバンドに影響を受けたバンドに影響受けたバンドくらいが20代のピチピチなんじゃないかね。つまりキヨシローがばらまいた子種でいえば「ひ孫」が最前線で現役って時代ですな。

 まあファンが老化すんのはしゃーない。何がマジムカつくって「死ぬまで時代の最先端を走り続けた」だの「社会問題にも積極的な姿勢を貫いた」だの、どいつもこいつもくだらん決まり文句ばかり並べやがって、ゲロが100万リットル出そうだ。結局、忌野清志郎の何がすごかったって、わかっとるんかお前ら。歌は死ぬほどうまいぞ。カラオケ行け!マネできないのすぐわかる。ギターも実は卒倒しそうなくらいうまい。「こんなコード進行あり!?」って曲作っちゃう(井上陽水の『帰れない二人』『待ちぼうけ』ってキヨシローの曲だかんね)。そこまではよろしい。

 だがね、ほとんど誰もわかってないのは、彼が「黒人音楽は欧米社会のタブーを破り続けた」ってことを理解して、それを自分も音楽で実践しちゃったこと。これは日本じゃいまだ誰もマネすらできてない。

 説明しよう!その後ずっとトレードマークになった「化粧+ピン立ち頭」で出てきたころのRCサクセションてのは、衣装やバンド編成をよく見ると当時のローリング・ストーンズをそのまま真似してる。まストーンズのサル真似バンドなんて掃いて捨てるほどいるんだが、キヨシローが抜きんでてたのは、そのローリング・ストーンズがお手本にしていたブラック・ミュージックを曲も歌詞もステージアクションも隅々まで知り尽していたことなんだわ。MTVもインターネットもない時代だよ。どうやったんだろ?

 それは1960年代のオーティス・レディングだったりジェイムズ・ブラウンだったりするんだが(ガッタガッタガッタとか愛しあっているかい?とかキヨシロー定番はオーティスの十八番)、当時のブラック・ミュージックは比喩に隠してセックスのことを堂々と歌っていた。

 日本人は意外に知らないが、欧米=特にアメリカは公的な場所(テレビ・ラジオ等)での性表現にはめちゃめちゃウルサイ。日本の深夜番組なんてほとんど放送できないっす。何でかっちゅーと、キリスト教保守派ってのが政治勢力として存在して、放送や音楽にニラミを効かせているから。アメリカでキリスト教保守派に逆らうってのは、日本で言えばやね、皇室をおちょくるくらい危険なことでして、場合によってはテロに遭いかねない。だから当時黒人音楽なんてのはキリスト教保守派からすれば「汚らわしいクロンボの騒音」だったわけ。

 その黒人音楽の精神をキヨシローはよーく分かってたんだな。「バッテリーはビンビンだぜ」とか「お前についてるラジオ感度最高」とか「こんな夜に発射できないなんて」とか、化粧したキヨシローががんがん歌うのを聞いた高校生のワタクシはビビりました。「言っちゃいけない」と教師や親が言うことを堂々と歌ってしかもラジオやテレビで流れているんだもん。これは胸がスカッとしますわな。モヤモヤイライラしているガキは喜びますわな。シングアロングしますわな。

 だからキヨシローが後日「原発」とか「君が代」とか、もっとでかいタブーに逆らい始めたとき、私はちっとも驚かなかったね。ああこの人は相変わらず「社会の良識」とか「常識」とかに挑戦し続けておるなあ、と。でも、その後も同性愛とかマリファナとかキリスト教とか王室とか「タブー破り」を続けた欧米と違って、日本のポピュラー音楽は無難だけが取り柄になっていった。その後もキヨシロー一人だった。

 ちょっとそこのJポップさん、だからお前らつまんねえんだよアホンダラ。

PLEASE

PLEASE

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  • 出版社/メーカー: USMジャパン
  • 発売日: 2005/11/23
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ライブハウスはミュージシャンを育てない。なぜなら! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

 ここだけの話ですが、私は「週刊金正日」おっと間違えた「週刊金曜日」様の御給金だけでは生活が成り立たないので「夜のお仕事」をしています。

 いやいや、ホストになれるほどの容貌も愛想もありませんのでミュージシャンをしております。はい某即興演奏バンドで電気低音ギタアを弾いております。都内あっちこっちのいわゆるライブハウスで演奏しております。ご興味おありの方は是非マイスペご覧くださいって誌面私物化してる場合じゃなくて、ええとですね、つまりワタクシ自分も演奏者であるくせに、自分のことは完全にタナに上げてプロの皆様をエラソーに批評してけつかるのでございます。誠にメンボクない。

 で最近よく演奏先のライブハウス経営者orブッキング担当者の方からよく聞くのが若いバンドに関する嘆き。「最近の若いバンドは出演当日まで下見にも来ん。けしからん」「『デモ音源を持って店においで』と誘っても『音源はmyspaceで聞いてください』『連絡はメールでお願いします』とぬかしよる。ふざけとる」てな話です。

 まあおっちゃんがパンクバンドで暴れていた80年代、すでにライブハウスのおっさんどもは「オレの若いころはP、ハウエバー最近の若いモンはQ」とかボヤいておりましたので、原始時代からよくある老人の若者コキオロシ話なのかと思いきや、そうでもない。確かに若いバンドのギグを見ると何だか変だ。なんせ客がいない。いや、決して下手なバンドじゃないんですよ。なのにガラガラの客席に向かって大音量で黙々と演奏、対バンの演奏も聞かず、内輪だけで談笑、せっかく仲間をつくって知らない音楽を吸収する好機だってえのに、下戸の公務員みたいに直帰しちゃう。何じゃこりゃ。

 でも、わたしゃ自分も出演する側なんで、彼らの気持ちも分かる。みなさん、日本のライブハウス独特の制度で「チケットノルマ」って知ってます?東京圏じゃ、平日夜、駆け出しバンド3つまとめてライブでも、入場料(『チャージ』っていいます)2000円前後が相場です。まずこれが高い。駅から遠い、まともなドリンクや食べ物も出ないハコがほとんどですぜ。フツー2000円ありゃ映画でも見ますわな。来てくれる方が奇特よ。

 そして、バンドには「ノルマ」が課せられる。「チケット20枚売れ」=「客を呼ぶ努力はバンドが負担せよ」=「客の多寡にかかわらずバンドあたり4万円は店がいただく」。つまり身もフタもなく言ってしまえば「店がミュージシャンからカネを取る」って仕組みですね。

 チャージバックつうてバンドとカネ分ける例もよくあるけど、アンプとかドラムの『機材使用料』(店に備え付けのアンプやドラムを使うと1000円くらい払わされる)取ったり、ひでえ店になると『JASRAC料』とかぼったくるんだな。

 これを当たり前だと思っちゃいかん!わたしゃニューヨークでも「bar」(日本のライブハウスに相当)で何度か演奏しましたが、お店が出演者に「出演料」を払いこそすれ、出演者からカネを取るなんてありえない。まったく逆です。

 これ、いろんな条件の違いでこうなる。米国のハコは百席はある。面積が日本の倍くらい広い。だから店を区切って「ライブハウス部分」と「レストラン・バー部分」に分けてしまえる。つまり客の飲食で店におカネが入るわけですな。レストラン・バーなら客が回転するので効率もいいが、日本のライブハウスは客が回転しません。

 おまけに東京圏でライブハウスやりゃ、賃貸料だけで月50万〜100万はするし(六本木のはずれで30席くらいの小さなハコが賃料40万円代だった)、照明だ音響だモギリだとレストランにゃいらん人間を雇って人件費は発生するわで、店は出演者に金銭ノルマを課して商売にするわけです。あるライブハウス経営者が「ウチはミュージシャンが客で、客はまあ客だけど何だろうムニャムニャ」とか言ってました、そういえば。ははは。

 つまり実もフタもなく言っちゃえば、日本の「ライブハウス」はミュージシャンからカネを取って経営しているってことさ〜。おっとっと。「ミュージシャンから搾取している」なんて左翼チックなことは言いませんぜ旦那。

 ミュージシャンにすりゃ、演奏すればするほどおカネが出て行くので、どんどんビンボーになるっちゅう仕組みですな。そんな環境でミュージシャンが育つわけないじゃん。あほらし。演奏すればするほど金銭も入るから「プロ」になっていくってもんじゃねーの? 当然、欧米じゃそう。国際水準で見りゃ、日本の「ライブハウス」ってのは奇形なのだよ。

 へ?じゃあミュージシャンが客呼ぶように努力すりゃあいいじゃねえかって?馬鹿かねあんた。ミュージシャンの仕事はいい音楽を作ることであって、客を動員するのは仕事じゃない。そんなことは店の仕事だろうが。サボってモウケようとしなさんな、ライブハウス経営者のおっちゃんどもよ。

考えてもみてよ。どこの世界に「客を呼ぶことはウチの仕事じゃない」なんてぬかすレストランや食堂がありますかね。

 んで、元に戻って。もしやと思って若いミュージシャンに聞いてみると、やっぱりそうだ!彼らにとって「ライブハウス」は「レンタルホール」と同じなんですね!

「おカネはちゃんと払ったでしょ?後はお店なんて関係ないじゃん」。そういう発想なんですな。そりゃレンタルホールの経営者や共演者とオトモダチになろうなんて思わんわ。まして説教される義務なんてないな。あははは。そりゃ正しい。

 はははは。「ライブハウス」の経営者諸兄、ついに正体を見破られましたね。

 みなさんがもしミュージシャンに、不動産賃料を払うリスクを負わせて自分たちはそのリスクから逃げているなら、「おれたちはミュージシャンを育てている」「音楽シーンをつくっている」なんてエラソーなことぬかすのはただちにやめて「ウチはレンタルホールです」って言いなさい。胸を張って言えばいいじゃないですか。ええかっこしなさんな。ミュージシャンからカネ取ってい集客の責任負わせている限り、あなたたちの経営実態は「レンタルホール」よ。実際。

 てなわけで、今夜もジャパン各地でガラガラのライブハウスに轟音が響き、でも誰も損せず、ますます才能は埋もれ、ライブは人々の生活から遠のいていくのでありました。


(追記)2010年5月12日になってこんなメールが来た。

「益々ご隆盛のこととお慶び申し上げます。
突然のメール申し訳ございません。
(会社名)productionの(差出人名)と申します。
この度、弊社では下記の日程で、イベントを開催する事になり、貴殿にはご出演をお願いいたしたくご通知いたしました。
過去に多数のSOLD OUTの実績や、現在メジャーシーンでご活躍のアーティストも多数ご参加頂いているイベントです。
詳しくは、下記日程及び出演規約をご覧の上、いずれか1つの日程のみでもご検討頂ければ幸いです。
つきましては、お気軽にお問い合わせいただきますようお願いいたします。
取り急ぎ、イベントご出演のお願いまで。

6/13渋谷HEAVY SICK(ノルマ10枚)
6/27高円寺Club ROOTS(ノルマ12枚)
7/25渋谷HEAVY SICK(ノルマ14枚)
7/30新宿SUN FACE(ノルマ13枚)
8/22渋谷HEAVY SICK(ノルマ23枚)
8/29高円寺Club ROOTS(ノルマ26枚)

全日程チケット前売:1500円前後」

とこういうイベント会社というかプロモーション会社もメールをばらまいて営業しているわけだ。一枚=1500円と仮定します。最安値の渋谷HEAVY SICKでもノルマ10枚=15,000円、最高値の高円寺Club ROOTSだとノルマ26枚=45,000円を要求している。

この意味するところは「カネを前払いせよ。そうすればライブやらせてやる」ということです。

おわかりと思いますが、このカネをバンドから取ってしまえば、ライブハウスもプロモーション会社もまったく懐が痛みません。損するリスクがまったくないのです。

ぼくがライブハウス経営者なら、家賃や人件費を合計して、一回あたりのノルマ額を計算してバンドに割り振ります。家でテレビでも見て、バイトのブッキングマネージャーに店を任せておけば、毎月定収入が入る。なんてラクな商売でしょう。

バンドは、ライブすればするほど、15,000〜45,000円という高額のライブ出演料を請求され、演奏すればするほどカネがいる。そして集客の責任を負わされる。

どう考えても馬鹿げている。これは水が下から上に流れるような倒錯した世界だ。

ミュージシャンはいい音楽をつくるのが仕事であって、どんな世界でも集客は店(またはプロモーション会社)の経営努力に決まっている。欧米じゃ当たり前のことだ。

欧米では出演者にギャラを店が払う。だから演奏することが「仕事」になり「プロ」になるのだ。


(以上)
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ネットがあるから音楽評論家なんかもういらない [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]



 インターネットが普及して不要になった商売の筆頭といえば、ジャパンの音楽ヒョーロンカでしょうなあ(さあ、ここツッコミどころですよ)。

 最近のヤングは知らんでしょうが、おっちゃんが若かった80年代は「ミュージック・マガジン」「レコード・コレクターズ」てなマニアックな雑誌があって(えっ!まだあるの!?ごめんごめん)、ケツの青いうがや青年は「ナイジェリアの政治状況とフェラ・クティ」とか「初期ヴェルベット・アンダーグラウンドにおけるフランス文学の影響に関する一考察」とか、学術論文みてーなヒョーロンカ先生の玉稿を貪り読んでは感涙、レコオドを買い求めてはまだ見ぬナイジェリアやニューヨークに想いを馳せたものです。牧歌的な時代でしたなあご同輩。

 しかし今じゃYouTubeを「フェラ・クティ」で検索すりゃ彼の演奏映像が拝めちゃう。80年代なら失禁するぞ。

 ヴェルベット・アンダーグラウンドなんてGoogleで355万件もヒットするんですぜ。

 カネ払ろて評論家先生なんぞに教えてもらわんでも、ずっと詳しい情報がネットでタダで読める。はははは。ホンマええ時代やなあ。

 で、需要のなくなった先生方どないすんのと思たら、やれアフガニスタン音楽がどうしたの、アメリカの田舎音楽がどうしたのと「世界僻地音楽巡り」というか、まあ有り体にいえばそれぞれタコツボに篭城して本土決戦を叫んでおられる。

 そんなもん、とっくにiTuneのインターネットラジオで聞いてますて。ええかげん降伏しなはれ。

 じゃ評論家に残された最後の仕事は何だといえば「優れた才能を発見して世に紹介する」ことしかないっしょ。

 で私はタコツボ戦には参加せず「現場に行く」って原点に戻ることにした。トーキョーやNYのミュージシャン仲間が「あいつはすごい」とほめる才能を探す作業ね。

 で、ずっと前からみんな興奮気味にすごいすごい言うってたのが「ドラびでお」。何じゃその藤子不二雄作国民的人気ネコ型ロボットのパチモンみたいなのは。いかにも胡乱。いかにもうさんくさい。

 この「ドラびでお」、要は一楽儀光って樵みたいなおっさんドラマー(山口在住の50歳らしい)一人のユニットなんだが、なんせドラムキットの太鼓にコントローラーを付け、どかすかドラムソロを叩きながらスクリーンに大写しになった画像を再生、逆再生、倍速、1/2倍速とぐちゃぐちゃに上映するっちゅうシロモノ

 マツケンサンバ、天皇皇后両陛下、赤穂浪士、北朝鮮、皇太子妃ご夫妻、シャイニング、ブッシュ、とワケのわからん画像がまったく無秩序かつ暴力的かつ脱法的かつ爆裂的に襲ってくる。ちっとやそっとのえぐいパフォーマンスじゃ驚かなくなったワタクシも、これにゃションベンちびった。

 任期中に政権を放り投げた国辱国賊・安倍晋三の「美しい国日本」演説なんざ、おっさんのドラムソロに合わせて「ううつくしいううううつくしいしいううううううううううつくしいしいしいしいううううううううううううううつくしいうううううううつつつつつつううくしいいいいいいくにににいににににににっぽんぽんポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン」と、完全にあほ丸出し。いやあ安倍晋三って実はギャグだったんですね。

 と、横ツラ張り倒すようなパンチにワタクシは卒倒しましたあるよ。

 で、当然こんな著作権侵害・名誉毀損の塊みたいなアートは、ソフトファシズム国家・現代ニッポンでは犯罪者扱い、YouTubeに動画がアップされてもすぐ削除されてまう。

 ひょー。だめじゃん。

 いやいや、これでいいのだ。

 インターネットに頼らずライブを見なさい、ライブを。

 そういう芸術家と観衆が時間と空間を共有すること、そして再現不可能な「一回性」こそが、げげげげっげげっげげげげっげげいじゅじゅじゅじゅじゅじゅつつつつつつつほほほほほほ本来のすすすすすうすすすすすすがたというもんだだだだっだだだだだだだだだだだだだだだだだあああああ。


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ワレ上方人、坂東ノ即興喜劇教室ニ入門セント欲ス [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]



 わが祖国・上方において「オモロないやっちゃなぁ」と言われることは死亡宣告に等しい重みを持ちます。

 ゆえに関西人の生活は常在戦場、「今年、何ドシや」「ウシやろ」など平凡な会話にも油断してはならない。

「そういえばなあ、こないだ梅田(浪速の繁華街)行ったらウシが服着て歩いとったわ」
「んなアホな」
「それがな、よお見たらキミのヨメはんやった」

とつなげば場は温かい笑いに包まれ、あなたの社会的評価はたちまちアップ。

 ビジネスシーンにおいてもアフターファイブにおいてもまた然り。

「東京のお方やったらやっぱりG党でっしゃろ」と異端審問され「はい原のファンです」などと正直に答えては危険だ。異教徒として焚刑、磔、車裂きなど迫害されます。

「いや3年前に大出血して手術しました」と飛んできた靴をよけるブッシュ大統領のようにスマートにかわしましょう。

 愛人いや恋人に「うちのこと、どれだけ愛してる?」と迫られた時はまっすぐ目を見て「ジンバブエのインフレ率くらいかな」(=10の16乗)と微笑むのがベスト。「東京の人やのにオモロイわぁ」とホットな歓待が待っています。

 こうした当意即妙のユーモアはサブプライム危機と格差社会を生き抜くには必須とか、私が移民しておりますここ坂東東国(ばんどうあずまのくに)においてもわが祖国の文化に学べという民声は高まり、喜ばしいことに「即興コメディ教室」さえ開かれているというではありませんか。嗚呼八紘一宇ノ世ハ来タレリ。

 感涙に咽びつつ坂東文化のハートランド渋谷そばの公民館風会場に行くと、休日だというのに40名近い善男善女が集うておる。

 四人一組。二人がセリフを即興で考え、残る二人はそれに合わせてこれまた即興で動く。春らしくテーマは「ひなまつり」。

 最初は素直に雛人形を飾る夫婦、その夫役たる私。いいねえ日本の美、日本の春。

 なのに!なぜか突然「ぼくを本当のお父さんにしてくださいっ!」とセリフが暴れ始めるもんだから、私はやむを得ず、やむを得ずだよ、相手の妙齢の女性を床に押し倒し、くちづけを迫る。ああっ僕はそんな人じゃないのに!でもいつの間にかベルト外してズボンのチャック下ろしてるし。

 三人一組。二人がデタラメ語をしゃべりながら即興で演技、二人が何をしているのか、私は自分が何なのか、当てる。

 が、わからん。

 何かおっちゃんとお兄ちゃんが抱きあってクネクネしながら私の手を引っ張るもんだから「全日本プロレスですか?」「もしかして二丁目系?」「それも3P?」と必死で尋ねるもむなしく二人が笑い転げて話にならん(正解=離婚する夫婦が子どもの養育権でモメている場面)。

 おい、即興コメディて難しいやんけ。講師の今井純先生、指導お願いしますわ。

 「頭で考えるんじゃなくて、まずは遊んでみて体感してください。現代人は『遊ぶ』って何か、わからなくなってるんです」。

そやそや。異議ナシ。

「日本の社会では『××でなくてはいけない』という縛りが多過ぎますよね。それから自分を解放するんです。あれはダメこれもダメの世界にいると心が病みます」。

 おお異議ナシ。満場の拍手。

「セリフでチンコとかマンコとか言っても、役になって言うんだからあなたがイヤラシイわけじゃない。イヤラシイと思うこと、それだって『縛り』でしょ?笑っちゃえばいいんですよ」。

 あーうー今井さん、私の母国ではマンコとは申しません。オメコです。って、今井さん関西人ちゃうの?

 実を言うとだね、今井師は「東京コメディストア」という即興コメディ劇団を主宰するマジメな演劇人なのよ。


 それもメリケンで演劇を長年勉学、「自由になるのは大変なのだ」という著作ありという学識者。

「ありのままの自分を解放し、他者とコミュニケーションを取る」という理想実現のため教鞭を執っておられる次第。

 つまりアレだね、わが祖国の伝統文化は米国の演劇理論をも先取りする先進性があったちゅうこっちゃね。何か強引なオチだな。ごめん修業と字数が足らんわ。



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スカトロもウエブ2.0の時代へ! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]



 親愛なる読者のみなさまあけましておめでとうございます。

 旧年中は数々の言葉の暴力たいへん申し訳ありませんでした。

 お原稿料をいただいている週刊金曜日様を「国賊アカ雑誌」「極左偏向媒体」と罵倒したり、大事な読者さまでおられる団塊の諸先輩に「時代錯誤の徘徊老人」と罵声を浴びせたり、あげくの果ては将軍様じゃなかった偉大なる編集長さまを「毛がない」等々と暴理暴論の嵐、いかに事実とはいえ筆が過ぎました。もうこれ以上名誉毀損訴訟はごめんです。本年からは無産階級としての本分をわきまえ赤色革命の道を精進する所存でございます。

 というわけで早春にふさわしい清々しい話題を供したく申し上げるのですが、みなさま「スカトロ」をご存知でしょうか。

 はいはい、キューバ革命を成功に導いた革命家にして元国家評議会議長?

 ああそれ週刊金曜日のアカ読者的には正しいのですがチョットちがうようです。

 排泄物・吐瀉物などを偏愛の対象とする前衛的な性的嗜好。まあ手っ取り早く言えばウンコやオシッコを愛好する革命組織ですね。

 大便を食べる、または尿を飲むと性的に興奮する。人前で脱糞する、あるいは着衣のまま失禁すると快感を覚える。ゲロや痰、鼻水を愛好される党員もおられるとか。セクト活動は多岐に亘るようです。

 いやいやスカトロ議長をナメてはいけません。昨年、インターネットで世界最大の視聴者を集めたのはオバマでもサブプライムでも蟹工船でもなかった。どうぞYouTube(あ?ああ、動画投稿サイトっす)で”Two girls, one cup”って検索されたい。これブラジルのスカトロポルノの予告編(ウィキペディアにまで載ってるので正体がわかった)。たった1分の画像なんだが、愛くるしい女性ふたりがガラス容器にモリモリと脱糞、仲良くソフトクリームみたいにペロペロ食って最後はお互いの口にゲロ吐きあうというとんでもない爆裂映像なんです。

 いやオモロイのはコッチじゃない。これを見た世界中の人たちが「リアクション動画」ってのを次々にアップし始めたんですな。つまり自分の家族や友だちをダマして件の動画をパソコンで見せ、そのげろげろな狂態をまた録画してYouTubeで公開しちゃう。これが腹よじれるほど笑えるんだわ。

「91歳の祖母に見せました」(殺す気か)
「美人の婚約者に見せました」(破談や)
「ウチの弟に見せたら吐きました」(兄貴ってのはまったく)
「一家で見ました」(頭おかしい)

って、おいこら地球人、お前らホンマようやるわ。

「マーリーンおばあちゃんに見せました」で白人のばーさんが「がっ。ぐえっ」と目をむいて「コラあんた、一体どういう気だい!!」と孫に激怒する映像は275万回も再生されとる。

 アメリカ陸軍の宿舎らしき部屋では、若い米兵が本気で吐いてます(87万回再生)。こんな兵力ではイラクは持たんでしょうなあ。

 どっかの中南米じゃラティナ・ガール4人が「わっきゃー。ヤメテー」(多分)と叫びながら明るく飛び跳ねている。

 アフリカ系の男性2人は「う〜ひょっひょ・う〜ひょっひょ」とヒヨコのように両手足をばたつかせながらイスから転げ落ちる。

 おお見よ。これぞグローバル・シチズン。これぞウエブ2.0。スカトロは世界をつなぐ。

 いやマジで。糞食動画に「ぎょえ〜」と反応する世界の人々見てると、しみじみ思う。人間てどこ行ってもあまり変わらん。でもやっぱ微妙に違う。万国のスカトロよ団結せよ

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70年代フォーク専門カラオケに潜入取材だ! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

081206フォーク専門カラオケに潜入

 格差社会ニッポン。日本の赤化革命を目指すプロレタリアのみなさまの愛読誌「週刊K曜日」にさえ格差は存在する。以下は極秘で入手した、正規雇用者•編集部員Kと、身体以外に生産手段を持たない無産階級フリーライターUの間の電話盗聴記録である。

K「年末号のコラム、とっとと出してください。私の正月休みが来んでしょうが」

U「あーうー、じゃあここは週刊K曜日らしく『2008年ベストスターリン主義者大賞』なんてどうでしょう」

K「またタワケ言って、クラミジア菌が脳に回ったんじゃないですか」

U「連載始めるとき『K村編集長の髪型批判以外なら、言論の自由は保証する』って約束したじゃないですか」

K「あのころはまだ編集長にも毛があったんです。ウダウダ言ってると訴訟がまた増えますよ」

 というわけで哀れな無産者Uが命じられた任務は、対立セクトへの潜入•偵察、すなわち「エス」(スパイのこと)であった。

 監視対象は東京•上野にある「フォーク専門カラオケ店」、そこに客を装って潜入し、決起盛んな(誤字)団塊フォークゲリラたちを監視報告せよとの命令が党中央から下ったのである(なお以上の物語はフィクションであり、実在する週刊誌および編集者、ライター、訴訟とは一切関係がありません)。

 てまあ字数稼ぎのヨタ話は置といてだね、そんなもんホンマに実在するんかと思ったら、あるんだよねフォーク専門カラオケ店。

 師走、泥酔リーマン&ゲロでぐちゃぐちゃの金曜日夜9時の上野。

 嗚呼そこはイモを洗うようなオヤジの海であった。

 あったあった「ビッグエコー」の地下に「フォーク居酒屋」って看板が。

 ぐわわ「HIT STUDIO 70’s 旅のつづき…」ってこの店名、最後のテンテンは何だ。団塊の諸先輩方、まだ旅してんの!?はよ家帰らんと徘徊老人と間違われてケーサツに保護されまっせ。

 うくくドア開けると店ん中、ムンムン満員。みなさん老眼鏡使用、毛がないか、あっても白髪またはビゲンへアカラー使用って風体が渋い。うう加齢臭とポマード臭で息苦しいよう。

 ちょっと待て。ステージあるやん。ドラム、ベースもおる。ギター、キーボードも。これカラオケちゃうやん。バックバンドつきライブハウスやんか。

 うわわ客、どんどんステージに押し寄せ、ギターを取り歌うわ歌うわ。出た!吉田拓郎だ!かぐや姫だ!オフコースだ!ヤァ!ヤァ!ヤァ!

「すみません、歌詞が細かい字なんで間違えました」と謝る客に「大丈夫です!うちのお客さんはたいてい目が弱ってます!」と司会の店員がアブない客イジリ。

 客席から「総務カチョー」と自虐的なヤジが飛べば、ステージのおっちゃんは「うるせえ!総務はまだやってねえ!」とまた泣かせる返し。

 ギャーホワヒョーと雄叫び手拍子足拍子、山賊の宴会かねここは。

 いやねでもね正直感心した。みんなチョーうまいんだわ、これが。歌詞と、自分のキーに転調したコード進行をパソコンでプリントアウトした「マイソングファイル」をちゃんと持参してる!

 銀縁眼鏡にオールバックがしぶいエロカワさんが歌うはオリジナル曲「新宿レイニーブルース」だ。

 大学教授と名誉教授みたいな高齢デュオがギター弾きながら絶妙なハーモニーで歌うは「22歳の別れ」。この人たち、普段一体何してんの?

 で、スパイ活動はっていうと。

「じゃあ、そこの初めてのお客さん!」
「歌手的には誰が好み?」

と指差されたわし、衆人環視の中

「あーうー、昔の井上陽水が好きです」

なんて口走ったのがまずかった。たちまちステージに引っ張り上げられヤケクソで「帰れない二人」を歌ったらバカウケしちまった。

 大歓声と拍手。みなさん「うまいね〜」「渋いね〜」と握手してくださる。ううう何ていい人たちなんだ。何だか嬉しいし楽しいぞ。

 あ、これ、おれも「あっち側」へ行っちゃったってこと?

 もう「お迎え」?

 オーマイガーノオノオノオ。

(1580字)



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めったにほめない私だがほめますよ コマイヌ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

 す•び•ば•せ•ん•ね。今回もブーたれますよ。

 わし、日本のいわゆる「ライブハウス」て好かん。

 だってミュージシャンを甘やかすから。

 ほれ、よくある駅前商店街の雑居ビル地下一階、どーでもええ模倣バンド四つ二千五百円で!、紙コップ入りシケたドリンク五百円で!、壁は落書きとギグ宣チラシだらけ、てなハコよ。あんたらほんま保守的やね。おっちゃんがパンクバンドで暴れてた二十五年前から時計止まっとるやん。

 いやね、アタシもニューヨークで演奏するまで気づかなんだがね(おっちゃんベース弾きやねん)、あちらの”bar”(バンド演奏つき酒場)って、基本は飲酒酩酊•泥酔乱闘•嘔吐失禁する場所なのよ。

 有名なパンクのゆりかご「CBGB」(今はもうない)だって店内の半分はバーとビリヤード場だ。言ってみりゃ「つぼ八」でバンドが演奏してるみたいなもんで、よほどいい演奏しないと客は振り向かん。

 ホント東夷南蛮ども、大音響なんぞ屁とも思わず飲んだくれとる。ここじゃミュージシャンは海兵隊みたいに鍛えられるぞ。

 それに比べりゃ日本のライブハウスなんて大アマ。だって客は最初から演奏聞きに来てるんだもん。

 んでしょーもない演奏でもイエーイエー、最後はアンコールアンコールのお約束(客はだいたい知り合い)。

 こげなメダカの学校じゃ、客が振り向かざるをえんようなパワフルな音楽は出てこんじゃろ、フツー。

 NYみたいなハコは東京にはないなあ、寂しいなあ、などと落涙してたら、あった!

 渋谷はラブホテル街の薄暗い裏路地、エログッズ屋とエロマッサージ屋の裏に「Ruby Room」って怪しげな電飾看板。

 ワケわからん倭人•異人どもが出入りして、とってもラブリーないかがわしさ。しかも火曜夜はサインインすりゃ20分間ステージで何してもいいっていうじゃありませんか。

 で客ほとんど毛唐、じゃなかった欧米人だからだろうね、演奏がよけりゃアカペラだろうがバグパイプだろうが大歓声と握手攻めが待ってる。

 が、つまらんと義理拍手もない。ほんまアングロサクソン的実力主義。

 だから「こら他じゃ演奏できんわなあ」って個性的なミュージシャンが雲霞のごとく集まってきよる。ぼかァ大好きだなァ、こういうの。

 以上前置き。長い。すまん。ここで見つけた中でもとびきりオリジナルだったデュオ「コマイヌ」を紹介したかったのだよ。

 いいよ〜コマイヌは。かわいらしいTシャツ•ジーンズのおねえちゃん二人組。

 が!ANAどってはいかん。アンナちゃんはマックの白いラップトップを「演奏」しながらボサノバみたいな声で淡々と歌っとる。相棒マイちゃんはトランペットを吹いとる。サンプラーやらディレイやらフェイズシフターやら機械とコードの山に埋もれ、声にペットに山びこみたいなエフェクトがかかっておお牧場はアンビエント。

 じゃ、よくあるアンビエントテクノじゃん。ウヒヒ最後まで聞けなさい。

 コマイヌは何と即興演奏バンドなのだ。鈴だパンダ太鼓だとおもちゃ、ケータイに録音した踏切の警報音、ガキの声、雷の音など(演奏に来る途中でテキトーに拾ったらしい)エフェクトがかかって音楽の一部でアンビエント。これがまるで雨上がりの森を歩いているように気持ちイイからぼかァ不思議だなァ。

 だいたいやね、パソコンとペット、おもちゃにケータイで即興音楽やっちゃうってのが、ギターだベースだドラムだって頑迷固陋の邪教「バンド教」を断固粉砕してくれて気持ちええね。

 おれはめったにほめないが、今回は拍手すっぞ。ブラボーブラボー。

さらばサラリーマンNEOまた会うヒマで [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 今では本欄のようなふざけきった駄文を書き散らし怠惰極まる日々を糊塗する小生も、かつては憲法九条原理主義、おっとまちがえた世界恒久平和思想新聞で17年間社畜をしておりました。

平日は帝政ロシアの農奴も怠け者に見える苦役労働、土日は死体同然眠るだけのスレーブリー人生。万国の社畜よ団結せよ。だから日曜夜のあのゲロゲロディプレッシブな気持ちはよくわかる。

 ほやし!日曜夜11時からNHKが「サラリーマンNEO」の放送を始めたときにゃーぶっ飛んだね。

 だって、平成大不況&サブプライムローン危機に呻吟するニポンのサラリーマン諸兄がげろげろアワーを過ごすその時間に、カイシャをネタにしたコント番組ですぜ。

 まあわが郷土の誇る怪物コメディアン俳優、槍魔栗三助(やりまくりさんすけ)こと生瀬勝久が「書類をなめる癖のある部長の指にワサビを塗る社内スタントマン」とかあほの極みを演じるのはわかるよ。

 だがね、私の永遠のアイドル•スケバン刑事南野陽子はブチ切れたオバチャンになって暴れてるし、ピカピカに光ってた元祖巨乳スター宮崎美子は嫌みなオカンになって20代の娘に毒気を吐き散らしてるし、東宝正統派二枚目スター宝田明はアブないイカレポンチ社長だし、中田有紀アナウンサーは眉ひとつ動かさず共演男優をイジメる残虐冷血サド女だし。

 あううう。いいのかみなさまのNHK。ホントにいいのかまっすぐNHK。

 いや、それだけならコメディにはクソうるさい小生があれほどはまらなかった。

 サラリーマンNEOがすごかったのは、NHKそのものをおちょくり対象、つまりセルフ•パロディにしちゃったところなんだわ。

「昼寝スペースでサラリーマン客の熟睡のために『退屈な上司』が導入されました」なんてうそニュースをまじめくさって読み上げるスタジオはどう見ても本物のニューススタジオ(だから背景に『これはコメディ番組です』と書いてある)。

 じじむさいオッサンが出てきてコントについて原稿棒読みで解説する「コントを読む」って、ニュース解説「あしたを読む」のパロディだろが。

 ハゲ、ちょんまげ、ヒゲのおっさん3人がピアノの伴奏で繰り広げる「テレビサラリーマン体操」って、ちょっとあんた、日本放送協会もサバけたもんだね。かつて1970年前後にイギリスの公営放送BBCが放送したギャグ番組「モンティ•パイソン」にやっとジャパンも追いつきましたかね。ナーイス。

 なーんて。そう思ったけど、やっぱ違うね。

 これだけ大暴れのサラリーマンNEOも、政治家のおちょくりにだけは手を出さないんだよね。

 一度「会社の王国」(何のパロディかわかるね)ってコントで「困った上司編」の中に、ライオンみたいなグレイヘアーの長髪、灰色の背広で「まあみんながね、それぞれ力を出し合って」とかゴタクをモゴモゴつぶやく「一見もっともらしく聞こえるんだが結局何言ってるんだかわかんない上司」が出てくる。

 これどう見ても、俳優の小泉孝太郎のパパで内閣総理大臣だったオッサン(名前忘れた)ですわな。

 だが解説は「ほひふひ劇場型上司」って氏名部分が音声も文字も消されてる。

 グエヘヘヘ。

 ま〜このオッサンが任命する総務大臣がNHKの予算も役員人事も握ってますからね〜。剣呑、剣呑。

 同じ公営放送でも「モンティ•パイソン」じゃ連邦大臣が施政方針演説をしながらストリップを踊っていたし、内務大臣はピンクのワンピースに白いハイヒールの女装で住宅政策を語っていたんだがね。

 あ、そうか。「ほひふひ」コントそのものが、政治家に逆らえないへなちょこNHKのおちょくりってことかね。

 ウヒヒ。それなら笑えるし許したる。

(冒頭の画像はネットに落ちていたのをあまりに笑えたので筆者が勝手に拾って貼付けたものです。サラリーマンNEOとは無関係でした。でもサラリーマンNEOもこれくらいがんばってくれればよかったのにと思います。お詫びして訂正します)


そのオチはねえだろSEX AND THE CITY!! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 小生ニューヨークには3年住んだんですが、何が困ったって「颯爽と歩く美人キャリアウーマンの写真を撮れ」っていう東京の上司からの注文にはホンマ困った。

 だってそんな人いないんだもん。

 田舎者ジャップ、おっと間違えた日本人が思うNYのキャリアウーマンって、パツキンのきれーなねーちゃんがビジネススーツばしーと着てS女王様みたいなピンヒールで闊歩しとる、なんて勝手に想像するらしいんだが、アホらしゅうていかん。断言するよ、そんな人ゼッタイおらんね。

 あんたらね、ファッション誌やテレビドラマの作り話にだまされとったらあかん。アタクシもNYで大学院行ったから証言しますがね、学校のお仲間でMBAとか弁護士資格とか持ってるホントのエリート女性は、髪形も服装もジミーヘンドリクス。地味なのよ。

 だって、チャラチャラしとるとクライアントや上司に信用されんでしょ? 重い書類資料等担いでいるうえに、NYの街路は舗装がガタガタ。ピンヒールなんぞで歩けるもんかい。みんなダサいスニーカーかペタ靴だオーイエー。

 ところが98年ごろから、やたらハーデーな「本物のニューヨーカーよりニューヨークっぽい」ねーちゃんたちがオッサレーなブティークやらバァやらに出没し始めた。

 一体いかなることぞ、と呆然としておったら、彼女らは「Sex and the City」なる連ドラを見て、NYに押し寄せたアメリカの田舎者あるいはオーストラリア人などであることが判明。あぷぷ。

 ドラマの登場人物そっくり、オッパイの谷間ドバーのボディコン(おお何と懐かしく甘美なる響き!)にピンヒールではしゃぐ「なんちゃってニューヨークガール」に、本物の地元民は「あんなのニューヨーカーじゃない」と顔をしかめとった。

 かくして本作「SATC」(て略称するんだって)はWTCがアルカイーダにぶっ飛ばされようがお構いなしに2004年まで続き、グローバリー大ブーム、今年ついに映画版まで公開されたのはみなさんご存知ね。

「何でこの人らこんなに頻繁に着替えるの?」

「あの混雑した街でいつも女四人横一列に並んでのろのろ歩いて迷惑でしょ?」

「何でキャリアウーマンのくせに毎週ランチに集まれるほどヒマなの?」

 等々、疑問噴出だが、まあいいや。

 NY在住経験のある女性に聞いてみると「私もハマった」って人、意外に多い。主人公四人が「私もそう思ってた」てことを代弁・代行してくれるんで、スカッとするんだって。

 例えばその会話。キョーレツにお下劣ざます。

 病気で睾丸をひとつ摘出した男友達を評して

「キンタマひとつでも健康ならいいじゃない」
「女はキンタマなんてどうでもいいのよ」
「女のハンドバッグみたいなものでただのフクロだけどないと困るのよね」
「私の彼、チンチンは大きいけどキンタマが一つか四つかなんて覚えてないわ」

だって。お母さんぼくこわいよう。

 が!ドラマが始まって十年。最初は「大都会、三十過ぎて恋人もおらん。仕事はうまくいかんし貯金もねえ」って貧しくもリアルな女性の悩みが人気だったのに、人気が巨大化したせいでストーリーが暴走、惚れた別れた腫れた切れたと痔のような反復運動のままみなさん四十すぎに!

 んで映画はどう着地するんだと思ったら「チョー金持ちの男と結婚する」ってオチ。おい、そりゃねえだろ。

 ブツクサ言いながら映画館を見回すと、カップルか女性客しかおらん。

「そうそう、そうなのよね〜」と上映中ウルサイ後の席の女め、終映後も「だからね、あれはね」とツレの男にウダウダ解説しとる。

 悄然と押し黙る男の沈痛な表情。くくく、わかるよ思想教育に連行された同志よ。

 夢、破れたんだね。黙祷。



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映画「LOOK」を見て偽善者どもを撃て! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 カネの切れ目が縁の切れ目とは誠によく申したもので、新聞社を辞めたとたん、月百枚くらい来ていた無料のサンプルCDも、映画の試写会の案内も、ピタリと来なくなりました。

 レコード会社も映画会社も、分かりやすすぎだぞ。友だちみたいなフリして、いけず。パブリシティがほしかっただけなのね。

 試写会の案内ハガキなぞ、AERAの編集部の真ん中に「ご自由にお取りください」と書いたハコがあってザクザク取り放題だった。

 それが今じゃ、たまにハガキが郵便受に入って喜んでいると「エルビス対ミイラ男」とか「芸者vs忍者」とか、ケッタイな映画ばっかり。

 がるる。おちょくっとんのか。これ送ってくるヤツ、おれのことものすごく分かってるか、完璧にカン違いしとるか、一体どっちやねん。

 でもたまには上玉も来る。ピンク色のカードに「あなたも、見られている」「全米3000万台の監視カメラが捉えた決定的瞬間!人々は安全と引き替えにプライバシーを捨てた」という思わせブリブリのキャッチコピー。

 監視カメラのレンズをかたどった「LOOK」(映画のタイトルね)のOの字には、何かしらんが裸同然のTバックねーちゃん二人がクネクネしとる。
 おお充血する海綿体。

 何やて? 映画史上初めて、全編監視カメラによる映像を使用? 通常の映画では決して描かれることのない衝撃のプライバシー映像? 事件、事故の決定的瞬間?

 つまりナニかね、監視カメラが記録したのぞき見映像を構成して映画をつくっちゃったってことかね。うっひ〜もう辛抱たまらん。これが行かずにおられようか(いや、行く)。

 って、チャリンコをぶっ飛ばして試写会場に突進、映画が始まってしばらくして気が付いた。

 しまった。これはワナだ。

 くそっ監督アダム・リフキン、サノバビッチのマザーファッカーめ。観客を全員ワナにかけやがった。

 あのですね、バラしちゃいますけどね、この映画、全員俳優が演じるフィクション劇を監視カメラ風画角・画質で撮影した作品なのよ。

 警官を射殺しATMでオバチャンを誘拐する凶悪犯。中年教師をゲーム感覚で誘惑するスケベ女子高生。エレベーターにて大音量でオナラするキャリアウーマン。モールで幼女を誘拐するロリコンのおっさん。内緒でゲイの弁護士カップル。デパートの倉庫で女子従業員とヤリまくるマネージャー。

 これ全部俳優が演じているお芝居なんです。

 でも、監視カメラの画像になると、たちまちどっかのリアリティ番組(なんたら県警交通機動隊密着24時間!!とかね)で見た映像とそっくりになる。

 フィクションがリアリティに限りなく近づくというえげつないトリック。デジャブー。高木ブー。

 つまり、ワタクシも含め、この映画の宣伝文句に釣られて試写会に行ったエーガヒョーロンカとかシンブンキシャさんとかライターさんたちは、リフキン監督のしかけた巧妙なワナにはまっている。

 つまり他人のプライバシーを堂々と鑑賞できると思って足を運んでいるんですな。

 そういう人たちに限って、この試写を見たあと、自分のことは棚に上げて、週刊金曜日とか朝日新聞とかのアカ媒体、おっと間違えた良識派メディアにすました顔で説教を書くのです。

「この映画は、監視カメラによる監視社会のプラバシー侵害を告発している」
「日本でも昨今監視カメラの行き過ぎが問題となっている」

 とかなんたらかんたら。くだらん。しょせん斉藤貴男の受け売りのくせにね(笑)。

 わははは。リフキン監督は、そんな連中をあざ笑っているのに気が付きませんか?

 ほれ、お前らだって最初はソソられたじゃねえか。

 他人のプライバシーがノゾキたかったんだろ? 

 自分のプライバシーはああだこうだ守ろうとするくせに、他人のプライバシーは覗きたいんでしょ?

 そんなお前らは、偽善者だ。そう言ってる。

 だいたいタイトルからして「LOOK」=「ほら、見てごらん」て挑発的なの、気付いている?

 さあみなさん、これから新聞・雑誌にご注目を。

 この映画の評論で「監視カメラのプライバシー侵害による社会問題を告発云々」なんて、陳腐でくだらねえ説教たれてるヤツを見つけたら、名前をメモしておいて。

 そいつ偽善者だから。

(追記:こんなことを書いて公表したら、この映画について誰もピタっと取り上げなくなった=笑。みんなそういう凡庸なことしか思い浮かばないんだね)
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天皇の出ない玉砕ドラマなんてやめてくれ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 過日汗だくの夜、エアコンの下ぐったり横臥し放屁などしつつテレビジョンをスイッチオンしてみると、日本兵捕虜がただ死ぬためだけに収容所で暴動を起こすってドラマやってる。

 へー民放もやるじゃん。

 これ「カウラ事件」ちゅうんですな。知らんかった。

 1944年8月にオーストラリアのカウラにあった収容所で、約1000人の日本兵捕虜が「生キテ虜囚ノ辱ヲ受ケズ」って「戦陣訓」(はいはい原典は『軍人勅諭』す。ややこしい歴史学的ツッコミはヤメロって)に執着するあまり、野球や将棋のリクリエーション三昧の楽しい生活を捨て、機関銃に撃たれるためだけに鉄条網に突撃するというムチャクチャな、だが実話なんですな。

 このドラマ「あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった〜カウラ捕虜収容所からの大脱走」って、名前長いやん、は「日本テレビ開局55周年記念番組」なんだって。

 3月に放送された「東京大空襲」に続いて「第二次世界大戦3部作ドラマ」の2作目になるとか。

 日テレよ、何でそないなハンパな年を記念する必要があるのか?

 まあええ。相変わらず「日本人は戦争被害者」ちゅう視点しかないし、生ぬるい。まあ、それも勘弁したる。キムタクが検事になったり総理大臣になったり、お台場の警察が踊ったりマラソン大会が爆発したりのふにゃふにゃドラマしか作れないテレビ局に比べりゃ「戦争」なんて重いテーマに敢えて挑戦したその志たるや、大いによし。

 でもリアリティはないな〜。

 主演の小泉純一郎の息子(名前忘れた)のサル芝居、何とかしてくれ。

 大泉洋の野良犬プードルみたいなロンゲ、あれなんやねん。んな日本兵おるか、どあほ。役者やったら髪くらい切って役作りせんかい。んでその風貌で「生きてたら何かいいことあるって〜」って萩本欽一みたいなセリフ(そういや顔も似てるな)やめてよ。

 山崎努と阿部サダヲの重量級名演技(特に阿部の狂信的日本兵はすごい。彼のはまり役になるでしょう)がなかったら、それこそドラマが玉と砕けてたのとちゃいますか。

 でもね、一番リアリティを削いだのは何だと思います? 兵士が誰も「天皇陛下」て言葉をいわないんですよ。大日本帝国陸軍の兵隊さんが、ですよ。ホント一言もない。一人だけ「大日本帝国万歳」て叫んで撃たれる日本兵がいる。けど「天皇陛下万歳」とは誰も言わない。

 阿部サダヲ率いる狂信的日本兵グループでさえ、一人も言わない。当時朝の必修行事だったはずの「宮城遥拝」(皇居の方向を臨んで頭を垂れ敬礼する)もしない。うっひょ〜そんな「皇軍」あるわけないじゃん。

 あのね、当時ね、天皇陛下は神様だったんだよ。天皇の祖先霊が兵士の行動を天上から見てますよ、「皇軍」である大日本帝国軍はその神様である天皇の軍隊で、死んでも御霊は軍神として靖国神社に安らかに奉られますよ、ってマジメに政府もマスコミも言ってたの。

 だから皇軍兵士は死ぬのを恐れないってことになってた。「天皇陛下」って具体的な「神様」がいたからこそ、職業軍人じゃない庶民兵士までみんな「死のう」って思ったんでしょーに。

 んで「週刊金曜日」のような国賊アカ雑誌、おっとまちがえた硬派ジャーナリズム雑誌としては、すわマスコミすわ菊タブー、とステレオタイプに張り切り、ピカピカの日本テレビに電話して「何で誰も天皇陛下て言わんのですか」と気合いで聞いたら、明るい声のおねーさんが(きっと美人なんだろうなあ)「原作の手記に記述がありませんので」とハキハキおっしゃり秒殺。

 あうううう腰が砕けた。椎間板ヘルニア。痛い。


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上野樹里ちゃん あんた修行足りんわ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 脳ましい脳ましい僕の変人・上野樹里さま。あなたは僕の大腸だ。

 映画「ジョゼと虎と魚たち」であなたが演じた、リアルな偽善者を拝見、僕はあなたの虜になりました。

 なんちゅうベッピンさん!なんぼ演技うまいねん!

 その後あなたは「スウィング・ガール」「のだめカンタービレ」で国民的スターになりましたね。

 おっちゃんはね、おっちゃんはね、まるで自分の娘がヨメに行ったような嬉しさで…涙が、涙が…おおおおおお。

 その上野樹里チャンと、これまた私が愛してやまない長澤まさみチャンが共演する!

 しかも「禁断愛」だとか二人のキスシーンがあってとか、思わせブリブリなキャッチコピーが番宣で流れまくり、ワタクシ毎週木曜夜十時はフジにロック・オン、熱い期待に股間、おっとまちがえた胸を膨らませながらそのドラマ「ラスト・フレンズ」をおし拝むように見たのであります。

 なるほど。樹里チャンは性同一性障害、つまり肉体は女性だが精神は男性という役なのですね。

 だがカミングアウトできないまま、まさみチャンに恋して苦しむ。一方まさみチャンはDVカレシとの共依存状態から抜け出せず、そこにセックス恐怖症のなんとかクンが絡んでどーたらこーたら。うううヤヤコシイ。

 思い出した。「ラスフレ」と同じく性同一性障害の女性(精神が男性)を主人公にしたアメリカ映画「ボーイズ・ドント・クライ」(1999年)って見たことあります?

 この作品はヒラリー・スワンクのメジャー・デビュー作なんだが、わたしゃ最初見たとき「えっ!この俳優さん、女なの!!」と椅子から転げ落ちそうになった。

「男と女では笑う時に使う顔の筋肉が違う」とまで研究したスワンクの演技は、細かい表情も仕草も、完璧に男そのもの。その「彼」が、生理に舌打ちし、膨らんだ胸をサラシで巻いて必死に隠す姿が、性同一性障害の苦しみを実にリアルに伝えていた。

 そう、スワンクが完璧に男にしか見えないからこそ、実はその肉体が女性であることの心の痛みに共感できるんです。さもありなん、ヒラリー・スワンクはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞します。

 樹里ちゃん。ごめん。イケズなおっちゃんを許して。

 アカデミー賞女優と比べたら酷やけど、あんたまだ修業足りんわ。

 いくら髪をベリーショートにして、メイクを男っぽくして、男みたいなセリフしゃべっても、あんたはまだ「ボーイッシュな女の子」にしか見えん。

 なぜか? あなたが生理になって苛立つシーンなんてないよね。胸のふくらみを隠したり、股間に人工(ピー)を入れてこっそり男装なんてリアルなシーンはないよね。

 そう。このドラマ、「性」がメインテーマのくせに、核心を突くような性的描写は注意深く取り除いてある。宣伝に使える場合を除いて。

 そもそもこのドラマ、木村拓哉と福山雅治の同性愛(あるいは性同一性障害)物語だったら、番組企画が通ったかね。

 断言するが答えはノーだね。

 わたしゃ、このへんどうしようもない「同性愛内差別」を感じる。つまり「レズは美しいがゲイはキモい」という偏見ですな。

 実はこの発想、異性愛男性のものなんです。テレビ局やスポンサーの決定権限者を筆頭に、日本社会の主流は今でも異性愛男性優位だからね。

 そうか、だから「ラスフレ」には日本郵政だとか味の素だとか三菱自工だとauだとか、名だたる保守的なスポンサーが顔を揃えているわけか。

 ははははは。何だつまんねえの。


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「ホームレス中学生」 結末のわかっているリアリティドラマ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 今日はボヤキますよ。

 ノンフィクションのライターなんて、インケツな商売を選んだものです。

 まずカネに縁無ッシング。

 だってノンフィクションって暗くて重くて、売れないんだもん。

 ワタクシの書いた本なんか、1万部ちょっと売れたら担当編集者が赤飯炊いて芸者ワルツを踊ったらしい。

 ノンフィクションもので10万部なんてメガヒット(死語)が出ようモンなら、もうそら出版社周辺で提灯行列ですわ。

 だいたいこの週刊金曜日の連載かてやね、原稿料(ピー)円ですよ(ピー)円。どうです、ご想像より一桁違うでしょう。

 ワーキングプア問題を取材する前に自分がワーキングプアになっとる。

 そのインケツなノンフィクション業界で、なーんと200万部を売る特大ホームランが出たという福耳情報が入った。

 ほほう、父親が破産して家族が離散、ホームレスになった中学生時代の実体験をつづった? そらすごいな。ライター、誰?

 田村裕? この業界じゃ聞かん名前やなあ。

 え、何? 吉本興業所属?

 こら待たんかい、田村裕てお笑いコンビ「麒麟」のあの田村か!

 しょうもない冗談かますな。そんなもん「ノンフィクション」に分類すな。「タレント本」に入れとかんかい。心臓に悪いがな。

 が、この本「ホームレス中学生」、読んでみると意外にバカにできない。

 中学二年生のある日、帰宅してみると自宅が差し押さえられ入れない。父親は家族の「解散」を宣言してそのまま蒸発。兄姉とも別れた田村少年は公園の巻き巻きウンコ型すべり台に住み着き、雑草に段ボール、鳩のエサのパンの耳を食ってサバイバル。ぷるる、なんちゅう泣ける話や。こんな話が九〇年代の大阪で本当に起きるなんて…おおおお。

 へ? ちょっと待て。公園のホームレス生活は1ヶ月で終わりやんけ。

 百九十一ページのうち、四十五ページしかあらへん。後は貧乏で悲惨な話は続くけど、いちおう家あるやん。こら、どこがホームレス中学生や。なんてね、

 関西人は本読みながらでもツッコミ入れるんです。

 ツッコミつつ、おっちゃんはわかった。暗く重い社会問題本がサッパリ売れないこのご時世に、なぜこの悲惨な話が売れるのか。

 田村が人気者だから? もちろんそれもある。

 それより何より、この悲劇の最後にはハッピーエンドが待っていることをみんな知っているからです。

 ウンコ型すべり台でホームレスやっていた田村少年はやがて高校を出て吉本総合芸能学院に入り「麒麟」としてデビュー、テレビやラジオにレギュラーを多数抱える人気者に。そのホームレス体験を描いた本は大ベストセラーになり、田村はフェーマスリッチマン。

 みんなそれ知ったうえで読んでる。つまりこれは安心して読める悲劇本、ハッピーエンドが決まってるリアリティ・ドラマなのです。

 一方。

 不景気と雇用崩壊のあおりをまともに食らった団塊ジュニア層が、自分一人食っていくこともままならぬまま三十歳を超えていく絶望感を「希望は戦争」という衝撃的な言葉に託した文筆家・赤木智弘氏にインタビューしたことがあります。

 彼の「若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か」は誠実な思考と丁寧な筆致に貫かれた良書ですが、売れ行きは五千部だったそうです。

 こういう残酷な現実に打ちのめされている若者の方が、田村みたいな僥倖に恵まれた人よりはるかに多いんじゃないの?

 ははははは。いくらリアルでも、ハッピーエンドじゃないと人は振り向かないんですね。

 そこまでしてこの狂った現実から目をそらしたいですか、みなさん。


ホームレス中学生

ホームレス中学生

  • 作者: 麒麟・田村裕
  • 出版社/メーカー: ワニブックス
  • 発売日: 2007/08/31
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



ホームレス中学生 スタンダード・エディション [DVD]

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高齢者用エロ映画だと思うな!「ラスト、コーション」 [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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「世界を騒然とさせた過激なセックス描写」
「アメリカでは成人指定」
「本番をやっているのではとの噂も」

 云々、善男善女のスケベ心、いやちがった知的好奇心くすぐる前評判が広まったせいでありましょうか、アン・リー監督の「ラスト、コーション」は、単館上映系の地味な人間ドラマがいつものこの監督にしては異例の拡大ロードショー・ロングランになっております。

 元よりスケベ、ノーノー知的好奇心旺盛な小生も公開初日に東京・日比谷のオッシャレーな映画館へダッシュしたのですが、何と二回先の最終回まで売り切れで入れん。

 ぎゃわ。こうなったら意地でも見てやると平日昼間に行ってもまた満員。何なんだこの熱気は。

 着席して周囲を見回すと、観客の年齢がやたら高い。

 どう見ても男は定年退職者だなカップル、あるいは、映画が描く日本軍統治下の上海で姑娘とラブラブしたのか?って遠い目をした爺ちゃん。そんなのばっか。

 だから、映画が始まってもゲホゲホ咳が止まらないし、フガフガムニャムニャ独り言いってるし、あああああうるさいっちゅーねん。

 それが!噂の「過激なラブシーン」になると、急にみなさん静かになるからおかしい。

 ゲホゲホもフガフガもピタリと止まり、シーンとなった場内にウエイ・タン(抗日スパイ役)とトニー・レオン(親日政権の秘密警察高官役)のアヘアヘ声だけが響く。そしてしばらくすると、回りのあちこちからゴクっと唾を飲む音がするんだな。終わるとフーとため息。もうカンベンしてよお父さんお爺ちゃん。

 その後もラブシーンのたびにゲホフガ→アヘアヘ→シーン→ゴク→フーなんだもん。みなさんわかりやす過ぎ。

 これは映画より観客観察の方がおもしろい。とふざけた考えはすぐ実行に移す小生、わざと平日の「レディース・デイ」(女性割引日)にゴーバック。

 ぐわわ、また見たこともない長蛇の列だ。今度はオバチャン、おっと間違えた、妙齢の女性ばっかりだぞ。しかも集団で来ているからペチャクチャうるさい。

 だが映画が始まったら、おおやっぱり同じだ。ペチャクチャ→アヘアヘ→シーン→ゴク→フー。ほんま笑かしよるなあ。

(ご参考までに。いやまあ、確かにボカシが入りますよ当該のシーンになりますとね。でもね〜最近のアダルトビデオに比べりゃカワイイもんすよこんなもん。むしろメープルソープのヌード写真みたいに芸術的で美しいです。)

 アン・リー=漢字で書くと李安監督はもともと台湾人です。国立台湾芸術大学を卒業してからアメリカに留学して英語と映画を勉強し直し、四十歳近くになってから世界で認められたという遅咲きの俊英。

 本作を前作「ブロークバック・マウンテン」(そんなつもりは全然なかったのに、激しい恋に落ちてしまって二十年間人目を避けつつ愛し合い続けるカウボーイ二人のお話)との「双子の作品」と位置づけています。

 本作の原題”Lust, Caution”は「体だけのセックスだと思ったらご用心」とでも訳せばよいでしょうか。

 人間、本気で愛し合える相手は一生のうちそんなに何人も出会うもんじゃない。その相手は同性かもしれないし、戦争の敵同士かもしれない。そんな不思議が人生には起きるんだ。

 李監督の作品にはそんな深遠な洞察が込められているのですが、まあゲホフガ→アヘアヘ→シーン→ゴク→フーでご鑑賞されるみなさんのお姿も、それはそれでまた人生ってもんですね。

 いやあ映画って本当にいいもんですね。


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おっちゃんは行っちゃうよ 売れない外タレ再結成来日ラッシュ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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「前略 週刊金曜日編集長様 最近の『ずっと音沙汰なし外タレ』の再結成来日ラッシュ、腹に据えかね一筆啓上申し上げます。チープ・トリックにナイト・レンジャー、デュラン・デュランまでは何とか堪えましたが、シカゴとヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの抱き合わせ公演とは何たる烏許の沙汰でありましょう。何の音楽的共通項もないではありませんか。敢えて言うなら私の如き四十歳代中年が若かりし頃『ベスト・ヒットUSA』なるテレビ番組で胸躍らせ観賞したバンドばかり束にした『おつとめ品セール』。息子の大学の学費が欲しいのか離婚で慰謝料がいるのか、お互い人生の辛酸をなめ尽くせるこの年齢、おカネがほしい事情はご同情申し上げますが、日本のファンの無知につけ込んだこの『懐かし商法』如何なもの御座いましょう。地球温暖化防止と核兵器廃絶のためにも、是非御誌でこの不正を糾していただきたい。あらあらかしこ 東京都 匿名希望 ペンネーム・そよかぜ」

 うむむさすがは週刊金曜日の読者さま、ご慧眼でございます。

 この手の再結成公演、音楽的には何も新しいものを生まない。「本人たちによるそっくりさんコンサート」みたいなもんであります。

 母国でやると地元の新聞や評論家にボロカスに書かれるから、ってんで日本だけでカネ稼ぎして帰る。トホー、我が祖国もナメられたもんです。こうした不逞夷狄の音曲など、無視のみが見識の示し方でありましょう。

 へ?そう言っているウガヤ、二月十三日のポリスの再結成コンサートで東京ドームで見かけた?

 ウへヘ、そりゃ他人の空似でしょう旦那。

 いや、あの真冬に膝の破れたジーンズなんか履いているバカなビンボー中年は他におらん?

 それじゃイトコじゃないかな? よく間違われるんですハイハイ。

 え?スティングの歌に合わせてイエーイエーイヨーヨとか泣き叫びながら腰を振って踊っておった?

 は?二階席17列163番?

 ぐぐぐ。まあそこはオトナの事情ってことでね、まあまあまあ。

 え? イエスの再結成公演でもウガヤが飛んだり跳ねたり踊ってるのを見た? あああううう。

 何、エイジアでも?ジェスロ・タル?ニューヨークのELP再結成公演でも見たって? まあ仕事ですよ仕事。

 じゃ何で売店で嬉しそうにツアーTシャツ五千円も出して買ってんだって? もう、あんたホントよく見てますな。いけず。

 だってね、おっちゃんがこの前ポリスの三人見たのは一九八〇年の京都大学西部講堂だよ。

 いまじゃ五十六歳のはげちゃびん・スティングはまだ三十歳前、売れてなかったけど、ふさふさした金髪がハイジャンプのたびに揺れ、ピチピチしてそりゃあカッコよかった。

 おっちゃんはまだ真っ白な高校生で、オレの人生どーなるんだ不安と劣情だけを持て余し、パンクギグで隣の客を殴ったり噛みついたりのミーニングレスな青春。

 それが二十八年経って、あっちは世界のスーパースター。

 こっちは新聞記者になったり辞めたり結婚したり離婚したり七転八倒ばっか繰り返すうちに人生半分終わってもうた。人生依然ミーニングレス。うるる、

 あのスティングの甲高い歌声も、三人のタイトな演奏もあんときのままなんだなあ。

 ごめん。おっちゃん、あかんわ。

 やっぱ泣くわ。歌うわ。イエーイエーイヨーヨ。


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「臨死!!江古田ちゃん」読んだかね若人よ! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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おお恥ずかしきもの、汝の名は若気の至り。

 今を去ること(ピー)十年前、おっちゃんがまだティーンだった昔、「女心」なるものはナスカの地上絵なみの大神秘でありました。その無知につけこんだのが「ホットドッグ」「ポパイ」「週刊プレイボーイ」あたりの青年誌。「女心はこう読め!!」など踊る大見出しにツラれ「カノジョが脚を頻繁に組み替えたらOKサイン!」(ナニがOKなのか分かりますね)「利き腕と反対の手で頬杖をついたら誘ってほしいシグナル!!」(ナニに誘ってほしいのか分かりますね)等々、今考えりゃそりゃーねーだろー的記事を本気にして突撃、カノジョからビンタ、蹴り、鉄拳など玉と砕けた戦友は数知れず。あまりの惨禍に「ホットドッグ被害者の会」を結成しよう、とガキどもは本気で話し合ったものでした。

 その後も妄想、じゃなかった女性美化ファンタジーは再発を繰り返し「嗚呼これが女の正体であったか」と我に返るころには、時すでに遅し。齢四十を超え、オバチャン、じゃなかった妙齢となったかつての可憐なカノジョはユニクロのジャージでへそ出してガーガー爆眠しとる。傍らで愕然とするかつての妄想少年。おお二度と繰り返すまじ、この過ち。

 てなわけで若人よ、我々の轍を踏みたくなければ、瀧波ユカリの四コマギャグまんが「臨死!!江古田ちゃん」(講談社)を読みなさい。

 主人公の江古田ちゃんは北海道出身の二十四歳。このストレートヘアで時々白目むいている雪女みたいな風貌の彼女、なぜか知らんがいつも全裸で暮らしている。昼間は生命保険のカスタマーサポートやって、夜は日本人なのになぜかフィリピンパブで働いている。なぜか彼女を恋人にする気のない(=本命が他にいる)男とばかり寝てしまう。

 何がすごいってこの江古田ちゃん、ここまで言ってインカ帝国的に女のホンネ全開なのです。ヤバいぞ。

 宴席で「オナニーなんかしたことな〜い」とカワイ子ぶる女にちゃぶ台ひっくり返し「断言する!!全ての成人女性はオナニーの経験がある!!」と一コマつぶして絶叫。必死で抗弁する女子男子を「現実を見ろ!!」「カマトトぶるな!!」「自分のマ○コもさわったことないのか?」と喝破しちゃう。公衆トイレに入って紙がなくても「男の子みたいにこきざみにふるえて シェイクシェイク」「でもね、最近は手でふいたあと手をあらうって技もあみだした」と友人M(25歳)とマジメに情報交換しとるぞ。うくく。

 でも、やっぱ破壊力ナンバーワンは彼女のセックスに対する醒め切った態度だわ。

 もう夢もキボーもない。駅前で出くわした男性四人組を見て「全員しとねを共にしてる!!」と青ざめるも、次の瞬間には彼らを並べ替え「向かって右から一、二、三、四位」と順位付け。古びたパンツを「これはT君に強引に脱がされ」「これはS君のとき」と「時系列」「良かった順」に並べて遊んでおる。あうう、かつての小生みたいな女性美化系妄想少年は皆殺しの虐殺テロまんがだね、こりゃ(すんません。筆者の好みでネタ選択が下ネタに偏っております。若干)。

 てえことはだね、女性に現実的に対処するにはだね、江古田ちゃん読んでから出撃した方がいいよ、若人よ。ここに描かれている通り、オンナだって一皮むけばオトコとそんなに変わらんのだからね。ああイヤだイヤだ、何ておじん臭い説教やってんだ、おれ。

臨死!!江古田ちゃん 2 (アフタヌーンKC)

臨死!!江古田ちゃん 2 (アフタヌーンKC)

  • 作者: 瀧波 ユカリ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/04/23
  • メディア: コミック



臨死!! 江古田ちゃん 1

臨死!! 江古田ちゃん 1

  • 作者: 瀧波 ユカリ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2006/04/21
  • メディア: コミック



臨死!!江古田ちゃん 3 (アフタヌーンKC)

臨死!!江古田ちゃん 3 (アフタヌーンKC)

  • 作者: 瀧波 ユカリ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/05/23
  • メディア: コミック



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日本語をグルーブさせるのは難しいけど不可能じゃない [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 反核平和に地球温暖化防止にとグローバルプロブレムにビジーな週刊金曜日の読者様こんにちは。

 そんなハイスタンダードな皆様も、レアなリラクゼーションにカラオケなど一般ピープル娯楽をエンジョイされることもおありでしょう。薮からスティックで恐縮ですが、カラオケを歌ってみると「オンチ」には2種類あることに気付かれないでしょうか(いかんいかん。正月テレビの見過ぎで言葉がルー大柴化しとる)。

 ひとつは「音程オンチ」。所定の音の高さを外すオンチです。すなわち楽譜でいえば垂直方向のズレ。これはすぐご理解いただけますね。

 もうひとつ「リズム音痴」というのもあります。こちらは歌が所定の拍子からズレる。楽譜上では横方向のズレであります。こっちは案外気付かないが、不快指数は同じくらいキモチ悪い。ああヌカミソ腐る。

 こんなことを考えたのは、昨年末にLeyonaという日本人女性シンガーのライブを見に行ったからです。

 この胸まで届く美しい黒髪の彼女、歌のリズム感が抜群にいい。歌詞の日本語のアクセントと、バックの60〜70年代ブラック・ミュージック風音楽(つまりソウルとかファンクとかブルースですな)の演奏リズムがパンパンかっちり絶妙にシンクロしていて、とてもリズミカルで気持ちがいい。

 さよう「日本語がグルーブしている」のです。

 ありていに申しまして、日本ではプロの歌手でもリズム音痴はけっこう多い。

 なぜそーなるのか?はい、第一に、曲はちゃんと書けているのに、本人にリズム感が足りないというケース。

 カラオケ歌ってみてください。発声には必ず事前に息を吸うことが必要でしょ。つまり発声のほんの少し前に「息継ぎ」をしてないと正しいリズムで声が出ない。そして言葉のアクセントに合わせてパンと息を吐く。これ全部ゼロコンマ何秒内の作業ですから、アスリート的な瞬発力が必要です。

 そして「そもそも曲と歌詞のリズムが合ってない」という作詞・作曲者レベルのミスもあります。

「4分音符」という名前からも一目瞭然ですが、西洋音楽は一定の単位時間を小節→音符へと「分ける」構造を持っています。

 これは、西洋の言語、例えば英語の言語的構造と同じですね。

 すなわち、英語は一つ一つの単語が独立していて、必ず単語にはアクセント(音の強弱)がある。だから英文を朗読すると即リズムが発生します(それを突き詰めたのがラップです)。この「分ける」という点で、英語と西洋音楽は構造が一緒です。だから英語の歌詞を西洋音楽に乗せやすいのは当たり前なのです。人類最初の楽器は歌声ですから、音楽と言語の構造が似るのは当然なのですが。

 一方わが日本語は単語が「つながる構造」を持っている。そして音の強弱ではなく高低でアクセントをつける。西洋音楽とはまったく逆です。だからリズム優先音楽であるロックやファンクを日本語でグルーブさせるのはなお難しい。

 そーいやー、むかし政治闘争に負けてヒマになった全共闘世代の先輩方が「日本語でロックは可能か」なんて不毛な議論でマジメに盛りあがっていましたなあ。

 答は「英語よりはるかに難しいが、不可能ではない」に決まってます。

 Leyona嬢にしても、若い世代が「日本語をグルーブさせる」というハードルを軽々と飛び越えていくのを見ると、おっちゃんはとても心ストロングな思いに打たれるのであります。


Rollin’&Tumblin’

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  • 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
  • 発売日: 2007/03/21
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Clappin’

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  • 発売日: 2006/07/26
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PANTA 1980X 30年経って価値のわかる音楽アルバム [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 ぐわわ、もうそんな季節!?とパニックする人間どもをよそに地球は無慈悲に公転を続け、はや年の瀬。

 この時期ともなりますと、全国紙・総合雑誌などにて音楽ヒョーロンカの先生方が「今年の傑作アルバム・ベストテン」などと御健筆、小生それを横目で見て「ムフフ、そろそろ執筆依頼が来るかな?」などと電話の前にて待ち焦がれるのですが、どうしたことでしょう、ウンともスンとも話が来ない。

 うるる枕を涙で濡らす。

 そんな烏許の沙汰を毎年繰り返すうち、小生はすっかりいじけ切ってしまいました。

 もうこうなったら自分で書いてまえ。題して「過去30年からウガヤが選ぶ日本のポピュラー音楽ベストアルバム」だ。どーだ参ったか。

 前フリ長いな、いや失敬。では発表です(ファンファーレ鳴る)。

 受賞作はパンタ&HALの「1980X」であります。

 何やて? ソレ見ろ、週刊金曜日はサヨク雑誌だから日本赤軍シンパのパンタのアルバムなんかホメてる、てか?

 そういう阿呆な寝言いっている人、一歩前に出なさい。

 絹ごしとうふあげるから頭部を自分で殴打しなさい。うどんあげるからそれで首を吊りなさい。

 おのれ戯けども、そのような程度の低い話ではござらん!

 このアルバムは、そのタイトル「1980年代のいつか」のとおり全10曲が「近未来の日本の姿」というテーマで貫かれております。

 小生がこの作品に驚嘆するのは、1980年にパンタが歌で予言した数々の不吉な近未来像が、2007年のいま、ほとんど現実になってしまっていることなのです。

 すなわち、ハイテクによる監視・管理社会や遺伝子操作、石油をめぐる戦争、社会暴力のありさまであります。

 例えば「IDカード」という歌。「IDカード No.2525/名前なんて捨てられた/IDカード No.2525/この数がおれの名前さ/それでもこうしてる間に見張られつづける/コントロールされた数字に守られて」という歌詞は、02年8月に稼働し始めた「住民基本台帳ネットワークシステム」の姿そのもの。

「何でそんなことが予見できたの!?」と驚かずにはおれません。パンタが歌った「IDカードナンバー」は「住民票コード」という名になりましたが。

 そのほか「モータードライブ」はカメラで市民を監視する男の話を歌っている。

 どっかで聞いたことありません? そう、87年から導入された「自動車ナンバー自動読み取り装置」(通称Nシステム)や、「犯罪防止」を名目に街角のあちこちに設置された監視ビデオカメラに取り囲まれた、現在の日本社会の姿そのものではありませんか。

 「ナイフ」という曲で「ただその笑い方だけ 気にさわっただけさ/だから目の前にナイフ ちらつかせただけさ/それなのに本気になるから」と描かれる、些細なことでキレてナイフを振り回しては教師や家族、通行人を殺傷する犯罪は、パンタがこの歌を書いたずっと後になって社会問題化しますよね。そんな曲が並んでいる。

 英語には”stand the test of time”という成句があります。「時を経て真価が証明される」。そんな意味です。

 小生はこの言葉を「1980X」に贈りたい。この作品は27年を経て「かつて音楽で社会の危機を警告する者がいた」ことを証明する名作なのですから。



1980X (紙ジャケット仕様)

1980X (紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: 中村治雄,鈴木慶一
  • 出版社/メーカー: インディーズ・メーカー
  • 発売日: 2004/06/23
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タグ:PANTA 1980X
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2009-12-23 [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 いやね、イヤーな予感がしてたんです。六本木の駅を降りて「東京ミッドタウン」に足踏み入れた瞬間から。

 なんせもう、六本木ヒルズとタイマン張るみたいに屹立するピーカピカの再開発ビルざましょ。オッシャレーなカフェーやブティークにレストラーン、その間をよろばい歩く、ズタボロのライダーズジャケット&膝の破れたジーンズを着た、欠食顔のおっちゃん。それが小生。

 もう、どっからどう見ても場違い。勝ち組の城に迷い込んだ負け組プロレタリカット中年に、勝ち組ビジネスメン&ウイメンの視線が刺さる。あうう、痛いよう。

 ほなお前、何でそんなところにおんねん。

 よくぞ聞いてくだすった。

 アラン・トゥーサン見に来たんです。何?ありがとうさん?バッタがかあさん? まあフツー知りませんわなあ。

 トゥーサン氏は生まれも育ちも米国ニューオリンズのピアニスト、ブルースやジャズのみならず、隣接するカリブ海のラテン音楽やフランス植民地時代の音楽をも血肉と化した、その独特のピアノは高い評価を受け、60年代から数々の大物ミュージシャンとのセッションやプロデュースを何たらかんたら、来年70歳の生ける伝説でどうたらこうたら、ああ字数もったいない、要するにやね、そのテの音楽マニアにとってはやね、経絡秘孔を突かれるようなツボ直撃ミュージシャンなの!ひでぶあべし。

 その会場が「ビルボード・ライブ」という東京ミッドタウンの中のライブハウスなんだが、行ってみてわかった。こりゃライブハウスじゃなくて高級クラブだわ。

 立ち見やと翌日腰痛で寝込むし、席はちゃんと予約して、と中年の弱みを祈りに込めてインターネットでチケット買ったら、お代金1万1500円。

 いちまんいっせんごひゃくえん。た、たまらん。

 いや見ろ、これでも安い方だ。フランスの歌姫ジェーン・バーキン(本人はイギリス人だが)なぞ3万円だぞ、さささささんまんえん。がるる。

「ウガヤさま、お待ちしておりました」と席まで案内してくれる上品なフロア係の女性に「いやあ、どうもどうも」とヘコヘコ卑屈になっている自分が情けない。

 メニューを安いものから順番に探している自分が情けない。

 この赤ワイン1本11万円て何や。レミー・マルタン5万4000円て何やねん。いちいち周章狼狽している自分が情けない。

 フォカッチャって、コンビニじゃ350円だったんだけど、なんでここ1200円なの?

 おおお、隣席では勝ち組のミュージシャンかITベンチャー系のユルい服装のにーちゃんがギャルをはべらせスッポンスッポン白ワイン抜いているし。

 ここって中国?ロシア?これがあの、噂に聞いた「格差社会」ってやつ?

 むおお気を確かに持たねば。東京のコンサート代って、高すぎるぞ。

「ぴあ総研」によりますと、「ポピュラー/ロック」公演の「1人当たり単価」は5920円から6072円(2005年)に1年で値上がりしておる。

 ニューヨークに住んでたとき、マジソン・スクエア・ガーデンで「サイモン&ガーファンクル」の再結成コンサート見たけど、チケット代30ドルだったぞ。それでもニューヨーカーは「高すぎる」とブーブー言っておった。アラン・トゥーサンだって今のNYならまあ、高くて30ドルだね。

 いや、ウソじゃありません。NYでの3年間、ライブハウス・コンサートの類いには通い詰めたが「こんなに有名な人が、こんなに安くていいのか!?」と感涙することが何度あったことか。夏にはセントラル・パークでほとんど毎晩無料コンサートやってたし。

 あ、ジャパンのヤングが「夏フェス」好きなのは、結局あれが「一番お買い得だから」って説、ありますな。

 でも阿呆だね、音楽マニアって。アラン・トゥーサンのピアノと歌を1時間半堪能したら、もう感極まっちゃって、オシボリ振り回しながらブラボー叫んで、スタンディング・オベーションやっている自分。

 嗚呼耳に正月が来た。って、1万1500円のことなんかころっと忘れてるんだもん。

 んでまた騙される。


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家からCD棚が消えてなくなる日 [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

 2008年を占えって、週刊金曜日さん、んなご無体な。あたしゃ記者で易者とちゃいますがな。ほんなこと細木数子に聞いてくださいな。オワリ。

 いかん! これでは御原稿料がもらえん。ますますワーキング・プア化してしまうよう。お許しください将軍様じゃなかった編集長様。自己批判して労働します。

 もとい。それにしてもイケ好かないね、iPodってやつは。ホンマに。どもならんのかね。もう辛抱たまらんわ。

 だって、ものスゴク便利なんだもん。

 使い始めてしばらくして、CDをかけるのが面倒くさくなっている自分に気付いて愕然とした。親の愛に背を向け音楽で人生狂って30余年、こんな便利な再生機はかつてなかった。

 もう手放せない。中毒だ。依存症だ。どーすんだ。

 といいますのは、私事にて恐縮ですが、ずぼらの極みである拙宅は未整理のCD(3000枚を超えたあたりで数えるのを諦めた)が地層をなし渦を巻き、直下型地震来襲のおりにはCDにて圧死または脳挫傷死は必至、ぐわわ、こうなると生存権の問題と■十万円を張り込んでCD棚をずらずらと買い、ようやく安眠できるようになったのです。

 そこへiPod発売。これおもろそうやんけと何も考えずに60GBのでかいヤツを買ったんですな。

 そしたらもう、入るわ入るわ。いま約7000曲入れて、まだ60GBの半分しか使ってない。

 7000曲って、小生のバヤイ、だいたい3週間24時間不眠不休ぶっ通しで聞き続けてまだ終わらない曲数だよ。

 つまり、この手の中に入る小さな機械の中に6週間分の音楽が入るってことじゃん。

 あうう、そうすると、同じiPodを4台か5台買えば(ていうか、もっと容量のでかいiPodが出れば)あの壁一面のCDが全部入ってまうやないか!そういえば、最近CD棚からすっかり足が遠のいている。トホー。

 コラ、■十万円のCD棚どないしてくれんねん、スティーブ・ジョブス!

 いや私怨はさておき、iPodとiTuneってすごく楽しいんですよ。シャッフルかけると、ピストルズの轟音の後にショパンのノクターンが流れ、山崎まさよしの鼻声が続く。まさにジュークボックスですな。

 全世界のインターネットラジオも聞けるから、サンフランシスコのアングラテクノ局なんて愛聴してます。こりゃCDの売れ行きも落ちるし日本のFM局なんか聞かんわなあ。

 む。ちょっと待て。こうして音楽を運ぶかたちが「ディスク」から「データ」になってくると、重大な懸念がひとつ出てくるぞ。

 小生のマックのハードディスクがクラッシュしたら、iPodをトイレ(特にくみ取り式)に落としたら、7000曲のデータが全部パアってことじゃん。

 読者諸兄、こんな経験ありません? PCがクラッシュしてメーラーのアドレス帳が消えてしまい、誰にも連絡が取れなくなって仕事もできず、リストラ対象になった。ありますよね。これと同じことが音楽データにも起こりうる。

 賢い人は「ウエブメール」(ヤフーとかGoogleとか)を併用、アドレス帳をヤフーやGoogle側のサーバーに預けます。

 重要なデータベースは、メインテナンスのユルい個人PCじゃなく、管理のしっかりした会社のサーバーに預けちゃう。これ「パソコンちょっといい話」です。

 と、いうことは。はい、もうお分かりですね。■十万円張り込んでCD棚数台を狭い家に置く必要なんかなくなる。iPod数台もいらん。

 どこかの会社が、管理のしっかりしたサーバーを用意して、そこに音楽データの個人ライブラリーを預かってくれればよいのです。つまり音楽データのウエブメールアドレス帳化ですな。

 ブロードバンド回線さえあれば、音楽を聞きたいと思わば、その個人ライブラリーを呼び出し、送信してもらえばよろしい。おうちの中もすっきりさっぱり、お掃除もラクラク手間いらず。

 おお、なんていいアイディアだ。このビジネスモデル、実行する会社は小生にアイディア料払ってくださいね。CD棚代、回収せなアカンから。

 黙ってやったら訴訟起こすよ。わははは。坊主丸儲けだ。


タグ:CD iPod

中村中ってすごくいい歌い手だなあ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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  二十余年前はパンクだデストロイだと若気の赴くまま大暴れしていた小生も、馬齢四十四のおっちゃんとなり、ロケンロー取材にもつらい場面が出て参ります。

 オール・スタンディング・ギグなど観賞しますれば、翌日は腰痛と足の筋肉痛で寝たきり状態。

 炎天下催される「夏フェス」に参加すれば、はしゃぎ回るヤングを横目に脱水状態でぐにゃぐにゃ。ついつい「後でスカパーで見よう」などと怠惰街道一直線となるわけです。

 が今年は行きました。夏フェスです。アジシオじゃなかった味の素スタジアムです。

 それも天下の「エイベックス」が催す「a-nation」です。オールスターです。浜崎あゆみ大明神です。花火ドンパチです。倖田來未観世音大菩薩です。カンカン照りです。ペンが汗でヌルヌルします。ぐわわ。

 あああ意識が混濁してきた。

 そんなおり、メインステージが機材入れ替えの幕間でした。横のサブステージに、黒いノースリーブのワンピースを着たきれいなお姉さんが出てきた。ピアノの前に座ると、涼やかなアルトで歌い始めた。栗色の髪が肩で揺れ、白い指が鍵盤の上を踊るさまが実に優雅です。

手を繋ぐくらいでいい
並んで歩くくらいでいい
それすら危ういから
大切な人は友達くらいでいい
笑われて
馬鹿にされて
それでも憎めないなんて
自分だけ責めるなんて
いつまでも
情けないね

(『友達の歌』)

 不意打ちでした。

 不覚でした。

 電光掲示板に流れる歌詞を読んだ瞬間、両目からぼたぼたと涙が落ちて止まらなくなった。

 何てすごい歌を書くんだ、この人は。

 こんな歌は、愛する人に拒絶され、裏切られ、傷つけられた「愛に絶望した経験がある人」にしか書けない。

 しかし、どう見てもこの人、20代前半だぞ。一体何者なんだ、この「中村中」ってのは?

 インターネットを検索して、やっと思い出した!去年の秋ごろ、性同一性障害(身体は男性で精神は女性)をカミングアウトして、新聞やテレビが大騒ぎしていた「なかむら・あたる」じゃないか!

 しかしこうして検索してみると、イヤラしいね、マスコミってのは。スポーツ新聞やテレビはもちろん、朝日新聞の「ひと」欄に至るまで、判で押したように「性同一性障害であることを公表した歌手・中村中さん」って扱いじゃないの。

 彼女はこれだけすごいミュージシャンなのに、その音楽的才能に言及する記述がほとんどない。

 そりゃヘンだ。おっちゃんに言わせればだね、彼女は「才能あるミュージシャンがたまたま性同一性障害だった」というにすぎんのだがね。

 こういう取り扱いを小生は「正の偏見」(ルビ:ポジティブ・バイアス)と呼んでおります。

「負の偏見」(ルビ:ネガティブ・バイアス)はもちろん、オカマだ、気持ち悪い、イジメちゃえみたいな「負の発想」を指します。

 逆に「正の偏見」は、マイノリティをマイノリティであるという理由だけでゲタをはかせ、甘く評価する。

 これ、一見間違ってないように見えるが騙されちゃいかん。

 何が「ノーマル」で何が「非ノーマル」か、評価者が勝手に決めてしまっていて、自分は「ノーマル」で「非ノーマル」を自分たちと同じとは見なさないという点では、「負の偏見」と同じ発想なのです。

 いや、善人ぶっているだけに余計にタチが悪いかもしれない。

 まあいいや。阿呆は放っとけ。

 ブルースの巨匠マディ・ウォーターズは「ブルースは、欲しいものが何でも手に入る人間にはできない音楽だ」と名言を残しています。

 小生は、中村中の音楽にブルースに通底するものを感じる。

 愛しても愛されない苦しみ、痛み、そして絶望。彼女はそんな「負の感情」を美しい音楽にできるからです。

 性同一性障害だなんて知らんでも、彼女の音楽は小生の魂を揺さぶりましたぜ。


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友達の詩

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