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日本語をグルーブさせるのは難しいけど不可能じゃない [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 反核平和に地球温暖化防止にとグローバルプロブレムにビジーな週刊金曜日の読者様こんにちは。

 そんなハイスタンダードな皆様も、レアなリラクゼーションにカラオケなど一般ピープル娯楽をエンジョイされることもおありでしょう。薮からスティックで恐縮ですが、カラオケを歌ってみると「オンチ」には2種類あることに気付かれないでしょうか(いかんいかん。正月テレビの見過ぎで言葉がルー大柴化しとる)。

 ひとつは「音程オンチ」。所定の音の高さを外すオンチです。すなわち楽譜でいえば垂直方向のズレ。これはすぐご理解いただけますね。

 もうひとつ「リズム音痴」というのもあります。こちらは歌が所定の拍子からズレる。楽譜上では横方向のズレであります。こっちは案外気付かないが、不快指数は同じくらいキモチ悪い。ああヌカミソ腐る。

 こんなことを考えたのは、昨年末にLeyonaという日本人女性シンガーのライブを見に行ったからです。

 この胸まで届く美しい黒髪の彼女、歌のリズム感が抜群にいい。歌詞の日本語のアクセントと、バックの60〜70年代ブラック・ミュージック風音楽(つまりソウルとかファンクとかブルースですな)の演奏リズムがパンパンかっちり絶妙にシンクロしていて、とてもリズミカルで気持ちがいい。

 さよう「日本語がグルーブしている」のです。

 ありていに申しまして、日本ではプロの歌手でもリズム音痴はけっこう多い。

 なぜそーなるのか?はい、第一に、曲はちゃんと書けているのに、本人にリズム感が足りないというケース。

 カラオケ歌ってみてください。発声には必ず事前に息を吸うことが必要でしょ。つまり発声のほんの少し前に「息継ぎ」をしてないと正しいリズムで声が出ない。そして言葉のアクセントに合わせてパンと息を吐く。これ全部ゼロコンマ何秒内の作業ですから、アスリート的な瞬発力が必要です。

 そして「そもそも曲と歌詞のリズムが合ってない」という作詞・作曲者レベルのミスもあります。

「4分音符」という名前からも一目瞭然ですが、西洋音楽は一定の単位時間を小節→音符へと「分ける」構造を持っています。

 これは、西洋の言語、例えば英語の言語的構造と同じですね。

 すなわち、英語は一つ一つの単語が独立していて、必ず単語にはアクセント(音の強弱)がある。だから英文を朗読すると即リズムが発生します(それを突き詰めたのがラップです)。この「分ける」という点で、英語と西洋音楽は構造が一緒です。だから英語の歌詞を西洋音楽に乗せやすいのは当たり前なのです。人類最初の楽器は歌声ですから、音楽と言語の構造が似るのは当然なのですが。

 一方わが日本語は単語が「つながる構造」を持っている。そして音の強弱ではなく高低でアクセントをつける。西洋音楽とはまったく逆です。だからリズム優先音楽であるロックやファンクを日本語でグルーブさせるのはなお難しい。

 そーいやー、むかし政治闘争に負けてヒマになった全共闘世代の先輩方が「日本語でロックは可能か」なんて不毛な議論でマジメに盛りあがっていましたなあ。

 答は「英語よりはるかに難しいが、不可能ではない」に決まってます。

 Leyona嬢にしても、若い世代が「日本語をグルーブさせる」というハードルを軽々と飛び越えていくのを見ると、おっちゃんはとても心ストロングな思いに打たれるのであります。


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