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「格差社会」とは「年寄り天国・若者地獄」だった ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

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 21世紀の日本に出現した「格差社会」の正体って、一体なんだろう。誰がトクをして、誰が損をしているのか。

 答えは「世代間格差」であることが、だんだん誰の目にも明白になってきた。

 一度この欄で「年金の世代間格差」についても同じことを書いたが、いま進行している雇用や福祉の待遇格差を単刀直入に言ってしまえば「年寄り天国・若者地獄」なのである。

 例えば、パート・アルバイト、契約・嘱託社員など、非正規雇用者の割合は全年齢平均では33.7%なのに、15〜24歳に限ると48.1%に跳ね上がる(07年1-3月、総務省調べ)。

 実はこうした「世代間格差」は日本だけの現象ではない。ヨーロッパでもアジアでも、よく似た構造の現象が社会問題になっている。

 例えばフランス。1975年のフランスでは、30歳と50歳の労働者の賃金格差は15%だった。それが今では40%に拡大している。大学卒業後2年経っても就職できない若者の割合も、過去30年で6%から25%に増加した(『Newsweek』誌07年4月25日号)。同誌によれば、こうした若者の失業問題はドイツやベルギー、イギリスなどヨーロッパ全域に広がっている。

 就職不安のため、成年しても親元を離れない若者が増えている。イタリアでは30-34歳層の45%が今も親と同居し、フランスでは24歳で両親と同居している若者の割合が65%に達したそうだ。個人主義の傾向の強いヨーロッパでは異常な事態である。何のことはない、日本でいう「パラサイト・シングル」はヨーロッパでも大量発生しているのである。

 若者を圧迫している元凶が「ベビーブーマー」=「団塊の世代」である点も、日本と同じだ。

 第二次世界大戦が終結した直後に生まれたこの世代、日本でも欧米でも他の世代に比べて人口が膨らんでいる。しかも日欧では戦後の経済成長期に福祉制度が発達し、好景気も手伝って団塊の世代には安定した雇用と高い年金が保障された。

 ところが今、その団塊の世代が老年にさしかかり、日本でも欧州でも厄介な存在になってきた。彼らが企業に居座っているので、若者の就職口が増えない。少子化で若者は減る一方なのに、これから退職して年金を受け取る大量の団塊の世代の生活費を負担しなければならない。

 東アジアでも若者の雇用状況は厳しい。

 例えば、1980年代に急速な経済成長を遂げ「東アジアの四頭の虎」と呼ばれた香港、台湾、シンガポール、韓国。80年代後半から製造業が中国やベトナムなどの低コスト国へ流出したうえ、産業の軸足がIT、物流、金融などに移ったため、大卒専門職には新しい就職先が生まれたが、労働市場全体で見ると求人が減った。

 1986年以降、香港では工場の雇用数が60万件以上減少し、サービス部門が雇用の主な原動力になった。だが、単純労働の場合、ほとんど最低賃金しか支払われず、福利厚生も期待できない。販売員や警備員といった仕事の初任給は月わずか400ドル。かつては可能だった労働者階級から中産階級へのステップアップはほぼ不可能になった。

 台湾では、昨年6月に大学を卒業した25万人のうち10万5000人は9月末時点でも無職のままだったという(『Newsweek』誌07年12月5日号)。

 これも、企業が人件費の安い海外へ製造拠点を移したため、雇用が減った日本の状況(『製造業の空洞化』と呼ばれた)とそっくりである。

 この窮状は日本では非都市部で特に顕著だ。製造業に就職し、職能を身につけ熟練工へ成長していくというかつての就労形態は減った。代わりにチェーンストアの販売員など単純労働が増えた。が、こちらは非正規雇用が多く、熟練して職能が上がることは期待できないし、賃金もほとんど上がらない。ここでも若者は、上の世代が享受できた雇用から疎外されている。

 冷戦の終結と共に「保守・革新」(企業経営者・労働者)という対立軸が消えたと思ったら、今度は「世代」という新しい対立軸が浮かび上がってきた。

「ホリエモン」みたいな「ベンチャー成功組」が格差社会の勝者だと思っていると、問題の本質を見誤るのでご注意されたい。



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