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平成大不況のなかなぜ「アラフォー」は消費が活発なのか? ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

「アラフォーが元気」なんだそうだ。

「アラフォー」といっても「40がらみのおっさん」はアラフォーとは呼んでもらえない。女性専用である。

 じゃあ何歳から何歳までが”around fourty”(40歳前後)なんだ、とネットや新聞記事で調べてみると、だいたい40歳プラスマイナス5歳(35〜45歳)が共通理解だということがわかってきた(私はまだアラフォーじゃない!という数字に厳格な女性はプラスマイナス3歳説を唱える)。

 民放テレビとか雑誌とか、広告がらみのマスメディアがある特定の性別・世代を「元気だ」と言うとき、それは「消費行動が活発だ」ということを指す。他の世代に比べてエベレストに無酸素登頂できる人が多いとか、優れたトライアスロン選手が多いとか、そういう意味ではない。

 この「消費行動が活発な層」の条件は二つある。「一人あたりの購買力が大きいこと」=「お金持ちであること」。かつ「マーケットボリュームが厚い」=「人数がたくさんいること」である。つまり「お金をジャブジャブ使ってくれる人がたくさんいる」ことだ。

 企業にすれば、ここをターゲットに商品を開発すれば、モノがたくさん売れて利益がたくさん出る。「いいお客さん」なのである。

 折しも世は平成大不況にサブプライムローン危機が重なった泥沼の不況地獄。かくして、百貨店はアラフォー用オシャレな老眼鏡(いや『リーディンググラス』というらしい)を開発。化粧品会社は12万6000円のスキンクリームを、ホテルは2万円のバレンタインチョコレートを発売。果ては家電メーカーは「料理を作り置きすることが多い30〜40歳の独身女性をターゲットにした大型冷蔵庫」まで売り出した(9万円)。「アラフォー」は乾き切った不況砂漠最後のオアシスのようなもてはやされぶりである。

 アラフォー向け商品を売り出した企業は、マスメディアで宣伝する。スポンサー企業というお客様が広告料を払ってくれるので、マスメディアはアフラフォーが好むコンテンツを考えてCMの受け皿にする。

 テレビドラマはわかりやすい例だろう。「SCANDAL」「Around 40~注文の多いオンナたち」(TBS)「四つの嘘」(テレビ朝日)など、08年は「アラフォードラマ」の花盛りだった。

 天海祐希、鈴木京香、永作博美と実物のアラフォーを揃え「アラフォー視聴者が共感できるテーマ」(選択肢が増えすぎた現代女性の不安とかなんたらかんたら)を演じさせればOK。

 こう言ってしまうと実もフタもないようだが、そもそも「アラフォー」のように人口集団を「性別」と「年齢階層」という縦軸・横軸で切る考え方そのものが、マーケティングの発想であることをお忘れなく。

 ひとつだけ疑問が残る。じゃあなぜ、アラフォーはこの大不況の時代にそれほど「いいお客」なのだろう。まず、アラフォーの生まれた年を逆算してみよう。冒頭の例だと1963〜73年になる。

 ちょっと視点を変えてみる。雇用における性差別を禁止した「男女雇用機会均等法」が施行されたのは1986年だ。

 この法律以前、「女子学生はキャリア採用なし」とか、タリバーンみたいな性差別が日本でも当たり前だったのは、この欄でも書いた。

「女性と男性の給与待遇が同じ」つまり「女性の経済力=購買力が男性と同じ」時代が来たのは、86年からだ。つまり一般企業にとって女性が重要なお客様の仲間入りをしたのは、この年からだったといっていい。

 何を隠そう、この年に大学を卒業した女子学生が1963年生まれなのだ。86年といえば、バブル景気の真っ盛り。就職も楽勝だった。筆者はまさにこの世代。「地方私大文学部卒」の女性たちがロクな就職活動もなしに給料の高い企業にボコボコ就職するのを目撃した。

 この「就職楽勝期」が終わるのは、バブル景気が吹き飛んだ翌年、1993年からである。つまり逆算すると、アラフォー世代のうち1963〜69年生まれまでの層は「就職は楽勝。しかも男性と同じ購買力あり」ということになる。それで独身なら扶養家族もいないのだから、可処分所得が大きいに決まっている。これが「アラフォー」の「オーバー40」組の正体である。

 では「アンダー40」はどうだろう。

 日本が少子化を迎える前、最後の人口的膨らみである「団塊ジュニア」の定義は様々だが、広めに年齢層を取ると「1971〜79年生まれ」である。はい、もうおわかりですね。71〜73年生まれの団塊ジュニアこそ「アラフォー・アンダー40」のことなのだ。彼女たちはもちろん均等法世代だから購買力は男性並み。就職難だったとはいえ、人数が多いからマーケットとしては大きい。

 かつて90年代前半「F1層」(20-34歳の女性)が大きなマーケットとしてもてはやされたのをご記憶だろうか。

 あれは均等法で豊かになった女性が、重要な購買層として姿を現した初めての現象だった。さて「F1」に15歳足してください。きっちり「アラフォー」になりませんか?
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