ネットがあるから音楽評論家なんかもういらない [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]
インターネットが普及して不要になった商売の筆頭といえば、ジャパンの音楽ヒョーロンカでしょうなあ(さあ、ここツッコミどころですよ)。
最近のヤングは知らんでしょうが、おっちゃんが若かった80年代は「ミュージック・マガジン」「レコード・コレクターズ」てなマニアックな雑誌があって(えっ!まだあるの!?ごめんごめん)、ケツの青いうがや青年は「ナイジェリアの政治状況とフェラ・クティ」とか「初期ヴェルベット・アンダーグラウンドにおけるフランス文学の影響に関する一考察」とか、学術論文みてーなヒョーロンカ先生の玉稿を貪り読んでは感涙、レコオドを買い求めてはまだ見ぬナイジェリアやニューヨークに想いを馳せたものです。牧歌的な時代でしたなあご同輩。
しかし今じゃYouTubeを「フェラ・クティ」で検索すりゃ彼の演奏映像が拝めちゃう。80年代なら失禁するぞ。
ヴェルベット・アンダーグラウンドなんてGoogleで355万件もヒットするんですぜ。
カネ払ろて評論家先生なんぞに教えてもらわんでも、ずっと詳しい情報がネットでタダで読める。はははは。ホンマええ時代やなあ。
で、需要のなくなった先生方どないすんのと思たら、やれアフガニスタン音楽がどうしたの、アメリカの田舎音楽がどうしたのと「世界僻地音楽巡り」というか、まあ有り体にいえばそれぞれタコツボに篭城して本土決戦を叫んでおられる。
そんなもん、とっくにiTuneのインターネットラジオで聞いてますて。ええかげん降伏しなはれ。
じゃ評論家に残された最後の仕事は何だといえば「優れた才能を発見して世に紹介する」ことしかないっしょ。
で私はタコツボ戦には参加せず「現場に行く」って原点に戻ることにした。トーキョーやNYのミュージシャン仲間が「あいつはすごい」とほめる才能を探す作業ね。
で、ずっと前からみんな興奮気味にすごいすごい言うってたのが「ドラびでお」。何じゃその藤子不二雄作国民的人気ネコ型ロボットのパチモンみたいなのは。いかにも胡乱。いかにもうさんくさい。
この「ドラびでお」、要は一楽儀光って樵みたいなおっさんドラマー(山口在住の50歳らしい)一人のユニットなんだが、なんせドラムキットの太鼓にコントローラーを付け、どかすかドラムソロを叩きながらスクリーンに大写しになった画像を再生、逆再生、倍速、1/2倍速とぐちゃぐちゃに上映するっちゅうシロモノ。
マツケンサンバ、天皇皇后両陛下、赤穂浪士、北朝鮮、皇太子妃ご夫妻、シャイニング、ブッシュ、とワケのわからん画像がまったく無秩序かつ暴力的かつ脱法的かつ爆裂的に襲ってくる。ちっとやそっとのえぐいパフォーマンスじゃ驚かなくなったワタクシも、これにゃションベンちびった。
任期中に政権を放り投げた国辱国賊・安倍晋三の「美しい国日本」演説なんざ、おっさんのドラムソロに合わせて「ううつくしいううううつくしいしいううううううううううつくしいしいしいしいううううううううううううううつくしいうううううううつつつつつつううくしいいいいいいくにににいににににににっぽんぽんポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン」と、完全にあほ丸出し。いやあ安倍晋三って実はギャグだったんですね。
と、横ツラ張り倒すようなパンチにワタクシは卒倒しましたあるよ。
で、当然こんな著作権侵害・名誉毀損の塊みたいなアートは、ソフトファシズム国家・現代ニッポンでは犯罪者扱い、YouTubeに動画がアップされてもすぐ削除されてまう。
ひょー。だめじゃん。
いやいや、これでいいのだ。
インターネットに頼らずライブを見なさい、ライブを。
そういう芸術家と観衆が時間と空間を共有すること、そして再現不可能な「一回性」こそが、げげげげっげげっげげげげっげげいじゅじゅじゅじゅじゅじゅつつつつつつつほほほほほほ本来のすすすすすうすすすすすすがたというもんだだだだっだだだだだだだだだだだだだだだだだあああああ。
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