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ワレ上方人、坂東ノ即興喜劇教室ニ入門セント欲ス [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]



 わが祖国・上方において「オモロないやっちゃなぁ」と言われることは死亡宣告に等しい重みを持ちます。

 ゆえに関西人の生活は常在戦場、「今年、何ドシや」「ウシやろ」など平凡な会話にも油断してはならない。

「そういえばなあ、こないだ梅田(浪速の繁華街)行ったらウシが服着て歩いとったわ」
「んなアホな」
「それがな、よお見たらキミのヨメはんやった」

とつなげば場は温かい笑いに包まれ、あなたの社会的評価はたちまちアップ。

 ビジネスシーンにおいてもアフターファイブにおいてもまた然り。

「東京のお方やったらやっぱりG党でっしゃろ」と異端審問され「はい原のファンです」などと正直に答えては危険だ。異教徒として焚刑、磔、車裂きなど迫害されます。

「いや3年前に大出血して手術しました」と飛んできた靴をよけるブッシュ大統領のようにスマートにかわしましょう。

 愛人いや恋人に「うちのこと、どれだけ愛してる?」と迫られた時はまっすぐ目を見て「ジンバブエのインフレ率くらいかな」(=10の16乗)と微笑むのがベスト。「東京の人やのにオモロイわぁ」とホットな歓待が待っています。

 こうした当意即妙のユーモアはサブプライム危機と格差社会を生き抜くには必須とか、私が移民しておりますここ坂東東国(ばんどうあずまのくに)においてもわが祖国の文化に学べという民声は高まり、喜ばしいことに「即興コメディ教室」さえ開かれているというではありませんか。嗚呼八紘一宇ノ世ハ来タレリ。

 感涙に咽びつつ坂東文化のハートランド渋谷そばの公民館風会場に行くと、休日だというのに40名近い善男善女が集うておる。

 四人一組。二人がセリフを即興で考え、残る二人はそれに合わせてこれまた即興で動く。春らしくテーマは「ひなまつり」。

 最初は素直に雛人形を飾る夫婦、その夫役たる私。いいねえ日本の美、日本の春。

 なのに!なぜか突然「ぼくを本当のお父さんにしてくださいっ!」とセリフが暴れ始めるもんだから、私はやむを得ず、やむを得ずだよ、相手の妙齢の女性を床に押し倒し、くちづけを迫る。ああっ僕はそんな人じゃないのに!でもいつの間にかベルト外してズボンのチャック下ろしてるし。

 三人一組。二人がデタラメ語をしゃべりながら即興で演技、二人が何をしているのか、私は自分が何なのか、当てる。

 が、わからん。

 何かおっちゃんとお兄ちゃんが抱きあってクネクネしながら私の手を引っ張るもんだから「全日本プロレスですか?」「もしかして二丁目系?」「それも3P?」と必死で尋ねるもむなしく二人が笑い転げて話にならん(正解=離婚する夫婦が子どもの養育権でモメている場面)。

 おい、即興コメディて難しいやんけ。講師の今井純先生、指導お願いしますわ。

 「頭で考えるんじゃなくて、まずは遊んでみて体感してください。現代人は『遊ぶ』って何か、わからなくなってるんです」。

そやそや。異議ナシ。

「日本の社会では『××でなくてはいけない』という縛りが多過ぎますよね。それから自分を解放するんです。あれはダメこれもダメの世界にいると心が病みます」。

 おお異議ナシ。満場の拍手。

「セリフでチンコとかマンコとか言っても、役になって言うんだからあなたがイヤラシイわけじゃない。イヤラシイと思うこと、それだって『縛り』でしょ?笑っちゃえばいいんですよ」。

 あーうー今井さん、私の母国ではマンコとは申しません。オメコです。って、今井さん関西人ちゃうの?

 実を言うとだね、今井師は「東京コメディストア」という即興コメディ劇団を主宰するマジメな演劇人なのよ。


 それもメリケンで演劇を長年勉学、「自由になるのは大変なのだ」という著作ありという学識者。

「ありのままの自分を解放し、他者とコミュニケーションを取る」という理想実現のため教鞭を執っておられる次第。

 つまりアレだね、わが祖国の伝統文化は米国の演劇理論をも先取りする先進性があったちゅうこっちゃね。何か強引なオチだな。ごめん修業と字数が足らんわ。



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