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EXILEはなぜ愛される?その4 [東京(中日)新聞連載アウトテイク]

 もうひとつExileがまとう物語「旧弊に満ちた世界を若者が独力で改革し、勝者になる」はどうでしょうか。

 こちらも言うまでもありませんね。「ロスト・ジェネレーション」以降の若者層がいま悪戦苦闘しているのは、自分たちより上の世代が強固に作り上げた既得権益の体制を突破することです。そして、それによって自分たちが犠牲者=敗者を脱することなのです。

 そんな動きに、ロスト・ジェネレーション層は常に拍手を送ってきました。平成不況まっただ中の1990年代末、多くの若い経営者がITベンチャー企業を興して台頭した時には「ITバブル」と呼ばれるほどのミニ好景気が生まれました。これも一例です。

 その一人「ライブドア」のCEOだった堀江貴文(ホリエモンと言ったほうが早いですね)は1972年生まれ、まさにロスジェネど真ん中です。

 05年にニッポン放送の経営権をめぐってフジテレビと互角の勝負を繰り広げたり、衆議院議員選挙で亀井静香と死闘を演じたときも、誰よりも快哉を叫んだのは、同じ世代の若者でした。議員選挙や民放テレビといった長年墨守されてきた既得権益の世界で、たった一人自力で起業した若者=ホリエモンが、老人たちと対等に渡り合う姿は、さぞや爽快だったはずです。

 勝てなくとも、彼が老人たちを翻弄するだけでも、胸がすかっとしたのではないでしょうか。それはホリエモンが、ロスジェネの若者が望んでも手に入れることのできない「物語」=「旧弊に満ちた世界を若者が独力で改革し勝者になる」を具現していたからです。

 しかしそのホリエモンも06年には東京地検に逮捕されてしまいます。そして2度の有罪判決を受け、今なお最高裁での判決を待っている。旧弊を改革しようとした若者は「東京地検」という「大人の権威」によってたたきつぶされてしまったのです。

 気の毒なことです。いえ、ホリエモンが、ではありません。彼に「物語」を見いだした多くの若者が、です。彼らを待っていたのは「幻滅」「絶望」でした。「やはりこの社会は老人ばかりがおいしい思いをして、俺たちは負け続けなのか」。そう思ったことでしょう。

 EXILEがやってみせたこと=自分たちのマネージメント会社を興して音楽業界で名乗りを上げること=は「若者が独力で旧弊に満ちた世界を改革する」という物語の構造がホリエモンと酷似しています。しかもホリエモンとちがって、Exileは成功している。居並ぶパワフルなマネージメント事務所を蹴散らし、ドームコンサートを満杯にし、音楽賞を総なめにしている。いやそれどころか、ファッションブランドや月刊誌まで出しています。若者ならこう思うことでしょう。「おお、すごいな」「こんなふうになりたいな」と。

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