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「GQ MEN たちの35歳の疑問にこたえる」 [GQ JAPAN]

Q1 35歳のとき、なにをしていましたか?

朝日新聞社の記者として「AERA」編集部で働いていました。ティーンエージャーのころからの夢だったニューヨーク駐在記者として赴任したのがちょうど35歳のときです。エンジン全開、トップギアで全速力という感じで記者の仕事をしていました。ホームレスからマイケル・ジョーダン、果ては通貨問題まで、全米を飛び回って記事を書いていました。アマゾンのジェフ・ベゾス社長やスターバックスのハワード・シュルツ社長にシアトルの本社でインタビューできたのも楽しかった。

Q2 仕事のために大きな借金はしましたか?

 朝日新聞社を休職して2年間Columbia大学のSchool of International and Public Affairsで軍事学の修士号を取ったとき(1992-94年)、2年分の学費だけで400万円払いました。世界一高いマンハッタンの家賃や食費、教科書代など合算すると800万円くらい使ったと思います。おかげで一日5ドルで生活するという赤貧ライフでした(笑)。

 借金はせずに済みました。奨学金を取り、大学でアメリカ人に日本語の授業を教えて乗り切りました(教職で働くと学費を割り引いてもらえる)。卒業したとき、帰りの飛行機代と引っ越し費用を払ったら貯金がちょうどゼロになりました。


Q3 35歳の大人なら見ておいたほうがいいだろう、という映画、本、音楽はなんでしょう

映画: スタンリー・キューブリック「フルメタル・ジャケット」「時計じかけのオレンジ」「シャイニング」「2001年宇宙の旅」「博士の異常な愛情」

 キューブリックの作品は映画という表現形態が到達しうる最高点を見せてくれます。

「生と死」「狂気」「国家と個人」「暴力」「文明」「自然科学」「戦争」といった人間にまつわる深遠なテーマが隠されていますから、見終わったあとに「文明って一体、何だ?」「科学技術は人間を幸福にしたのか?」と見た人が考えずにいられない。

 そんな日常生活に必要はないけれど、人間の本質にかかわる思考を促す入り口として、キューブリックの映画は素晴らしい。大人になったら「日常生活には必要ないけど、人間にとって重要なこと」を考えましょう。

 最近の監督ではアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の「21グラム」と「アモーレス・ペロス」もパンチを食らいました。彼の作品にも「死とは何か」「人生とは何か」「運命とは何か」「罪とは何か」「許しとは何か」といった人生の深遠な命題が語られています。

 あとデビッド・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」とエイドリアン・ライン監督の「ジェイコズブ・ラダー」も加えておきたい。あとはスティーブン・ソダーバーグ監督の「セックスと嘘とビデオテープ」も必修。

って、ぼくに映画の話をさせたら止まらないんだって(笑)。

本:「聖書」とか「論語」とか「孟子」とか、三千年、二千年経っても読まれている本を読み始めたのが35歳ごろのときです。

 日本のマスコミ業界の一員として新聞や週刊誌の仕事ばかり10年余りやって、「一日、一週間、一年でゴミになる出版物など、もうどうでもいいや」とうんざりしました。

「数千年読まれているベストセラー」というのは、読んでみると「なるほど」と思う理由が必ずあります。

 例えば孟子の「人を愛する者は人これを愛し、人を敬う者は人これを敬う」(他人を愛する人は他人に愛され、他人を敬う人は他人に敬われる)という言葉は胸にしみ込みます。

あるいは

レイモンド・カーバー「頼むから静かにしてくれ」
チャールズ・ブコウスキー「死をポケットに入れて」
辺見庸「もの食う人々」 

 映像がメディアの主流になったこの時代でも、文章はこれほどパワフルだということをぼくに教えてくれた本。活字の持つパワーという意味で、もみぞおちに一発食らったような衝撃を受けました。

音楽:Harold Budd and Brian Eno “Plateeux of Mirror”

ロックもジャズもファンクも、あらゆるジャンルを聞きあさって、最後に到達したのがこれ。夜、ひとり静かに思考に没頭するときに適した音楽がほしかった。流れる雲のようにゆったりとした、静謐な音楽です。

           
Q4 美術館から持って帰って、自宅に飾りたい絵画は?

Jackson Pollack ”Lavender Mist”  アクションペインティングの巨匠、ポラックは実は生涯抑うつとアルコール依存に苦しんでいました。また、美術の歴史をひっくり返す変革をやっただけに「こんなのは美術じゃない」という罵倒にもさらされていた。
 ニューヨークの現代美術館でこの絵を見たとき、彼の「俺には絵を描くしかないんだ!」「誰が何といおうと、俺にはこれが美しいんだ!」という鬼気というか情念のようなものが絵の具のデコボコや画材の匂いからびりびり伝わってきた。彼のカンバスに向かうときの「自分が信じるものだけに忠実な人生」をお手本にしたくて、今もポラックの仕事中の写真を仕事場に飾っています。



Q5 人生の師、またはヒーローは誰ですか? 歴史上の人物や架空の人物でも結構です。

ミュージシャンなら、ジム・モリソンとルー・リード。学校や親より、はるかにたくさんの人生にまつわる大事なことを教えてもらいました。

映画監督や作家、画家は他で述べたので省略。

Q6 ティッピングポイント ( 人生が軌道に乗った瞬間、転機 ) はいつでしたか?

30歳。ニューヨークで「チェルシー・ホテル」を訪ねるルポを書いたとき、記者になって8年目でやっと初めて「ああ、自分で見て、聞いて、匂いをかいだ世界を文章でも再現できた」という記事が書けました。その時に初めて、この仕事でやっていける自信のようなものができた。

40歳。一生書き手でいたかったので、管理職になるのをお断りして朝日新聞社を退社。フリーランスになりました。


Q7 大人になったな、と感じた買い物はなんですか?

ティーンエージャーのころ、憧れていたけどおカネがなくて買えなかったベースギターを買えたとき(笑)。Musicman社のStingRayです。高い楽器を買うと、もったいないので必死で練習するので、若いころよりベースがうまくなりました(笑)。



Q8 親友は何人いますか? 社会人になってからも出会えますか?

 人生の重大な選択をするとき、まっさきに相談してその判断を信用できる友人は4,5人います。この年でそれくらいの人数の親友がいれば、人生大成功ではないでしょうか。

 社会人になってからでも自称「親友」にはたくさん会いました。が、朝日新聞社の肩書きがなくなったとたんにあっという間に離れていきました。なので「あ、あの人は友だちじゃなかったんだ」とわかりました。

 元より、仕事の損得がからんだ相手や、会社の同僚は心から信頼できる「親友」にはならないと思っています。しょせん仕事は利潤のために人とつながる場であり「友人をつくる場所」ではありません。

 ぼくが信頼している「親友」はぼくの職業上の肩書きとは無関係に友だちになった人ばかりです。だからこそ信頼しています。


Q9 40歳=不惑といいますが、外的内的な変化はありましたか?

「性欲」と「恋」と「愛」が厳密に区別できるようになりました。

 そして「人生はあと半分だ。これからぼくは死に向かう。人生は有限だ。欲張るのはやめよう。自分にいまできることを一生懸命やろう」とはっきり自覚しました。自分の時間や才能が無限であるかのように夢想しているのは、若い時だけで十分です。



Q10 コンプレックスはありますか?

 自分の顔が大嫌いです。写真も鏡も嫌いだ。(笑)

 冗談はさておき。

 図書館や書店に入ると、書棚を見て「オレにはまだこんなにたくさん知らないことがあるのか!」と目まいがします。

Q11 「お兄さん」から「おっさん」になってしまうのはいつなのでしょうか。

 年齢にかかわらず「自分はもう努力して成長する必要はない」「学ぶことはもうない」と思った瞬間。


Q12 35歳までに経験しておくべきことはなんでしょうか。具体的にお教え下さい。

 どこでもいいですが、日本以外の異文化の中で2-3年くらい暮らしてください。

 できれば学校へ行って学位を取るくらい激しい競争の場に身を投じるのがいいでしょう。ひとつの異文化社会の価値観を丸ごと覚えてください。

 そして、長くても5年でそこを離れてください。5年以上いると「そこの土地の人」になってしまい、驚きがなくなります。


Q13 肉体的な衰えを感じたことはありますか? また、その対処方法は?

35歳を過ぎたら、若者のように錯覚するのはやめましょう。人間は加齢とともに体力が衰えるのが自然なのです。徹夜自慢、休日返上自慢、長時間労働自慢など恥ずかしいだけです。

ティーンエージャーのころからMTBに夢中でして、今でも乗っています。都内なら山手線の内側はMTBで行きます。おかげさまでトシのわりには元気です(笑)。

Q14 海外からのゲストが東京に来ます。どこに連れて行きますか?なにをしますか?


住んでいる建物の屋上テラスから隅田川と東京の夜景が間近に見えるので、そこで少人数でバーベキューをします。ゆったりとくつろいだ会話を楽しみたい。うるさい場所は大嫌いです。



Q15 外国人に信頼されるためにもっとも大切なことはなんでしょうか。

*外国語が上手であるかどうかはどうでもよろしい。
*それより、語る内容と行動が人間にとって普遍的な価値を体現しているかどうかでしょう。例えば、平和、自由、人権、反戦、非暴力、反差別、個人の尊重、民主主義など。
*そして、日本人にはもっとも苦手なことですが、相手の意見に安易に同意せず、反駁し、議論を戦わせる勇気を持つことです。


Q16 35歳までに行っておくとよい場所、見ておくべき景色を教えてください。

Q12と同じ。学校でも仕事でもいいですから、異文化にダイブしてください。
敢えて選ぶなら、ニューヨークはあらゆる意味で最高の舞台です。
「ニューヨークでサバイバルできたなら、世界中どこへ行っても大丈夫」というのは本当です。ぼくもNYでのサバイバルがその後の人生でどれだけ自信になっていることか。あそこでの競争に比べたら、日本での経験なんて何も怖くない。
あ、景色ですか? マンハッタンの夜景は最高です(笑)。


Q17 不倫のボーダーはどこでしょうか?

ステディ以外の相手とセックスしたとき。

Q18 女の子といるときに、恋人・妻に遭遇したら、なんと言いますか?

「おお、何してんねん? ごめんな。おれ、いま仕事でこの人と打ち合わせ中やねん。これぼくのヨメですねん。べっぴんさんでしょ? あ、今日ははよ帰るわ。おみやげ何がいい? キルフェボンのタルトでええか?」

Q19 鉄板のデートスポットはどこでしょう? レストラン、イベント、観光地などジャンルは問いません。

バイクの後に彼女を乗せて、レインボーブリッジを渡りお台場を一周。あと、レインボーブリッジと東京の夜景が絶景の誰も知らない埠頭があるので、帰りはそこへ。

Q20 35歳の自分にアドバイスをするなら、なんと言いますか?

 年上のオッサンの言うことなんか信じるな。時代はもうオッサンどもが若いころとは違うんだから。

 人の評価なんかに耳を貸すな。自分の評価は自分で決めればいいのだ。自分の人生は自分で考えて自分で決めろ。

(GQ JAPAN 2009年9月号)

GQ JAPAN 2009年 09月号 [雑誌]

GQ JAPAN 2009年 09月号 [雑誌]

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: コンデナスト・ジャパン
  • 発売日: 2009/07/24
  • メディア: 雑誌



タグ:GQ 35歳
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