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新聞週間って何のためにあるのかわからん [「週刊ポスト」小学館]

 私は元新聞記者だが、いまだに「新聞週間」って何のためにあるのかわからない。

 よくわからんのだが、とにかく10月15日からは新聞週間らしい。日本新聞協会のお祭りなので、加盟主要紙は数ページをつぶしてニギニギしい特集を組む。

 朝日だと9日に5面も使っているのだが、そのうち国内報道の問題を取り上げたのは「自衛隊派遣 取材に壁」「匿名発表 広がる影響」の2ページしかいない。

 残りは「岐路の立つ米メディア」と9.11事件後の米国メディアのレポートで、自分たちは安全地帯にいながら「対岸の火事」をウダウダと書きつづっている。

 もう1面は「朝日 改革しています」と、取材メモ偽造事件やら取材資料漏洩事件やらでメロメロになったカンバンを回復するための瑣末事を書き連ね「アサヒはこんなにガンバッてるんです」と叫ぶナルシスティックなPR記事である。内容は社内報(私は早期定年退職者なので、社内報が毎月送られてくる)と大差のないもので、読むに値しない。

 同じ9日の朝日外報面に、ロシアの女性ジャーナリスト、アンナ・ポリストコフスカヤ氏が自宅アパートで銃で暗殺された記事が出ている。99年の夏以来、チェチェンに通い、戦地に暮らす市民の声を報道してきた彼女は「ロシアの失われた良心」と呼ばれ、国際的な賞が数多く贈られている。

 ポリストコフスカヤ氏は一貫してプーチン政権に批判的、というより「嫌いだ」とさえ断言、その「対テロ作戦」の名のもとに行われる拷問や虐殺を暴いてきた。その苛烈なペンゆえに、政権からは忌み嫌われ、プーチン寄りのメディア界からも孤立。04年には北オセチアの学校占拠事件の際に、現地取材に向かう飛行機上で食事に毒を盛られて意識不明に陥るという事件まで起きた。その良心的な仕事ぶりの一端は「プーチニズム 報道されないロシアの現実」(NHK出版)でも読むことができる。

 「民主主義国家」を標榜するはずの隣国では、政権を批判するのに命を賭けなくてはならない。かたや我が国では、イラクに派遣された自衛隊・防衛庁と報道陣の小競り合いを、さも大手柄のようにクドクド報じている。何と気楽なジャーナリズムごっこだろう。

=「週刊ポスト」2006年10月27日号「メディアウオッチング」欄 


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