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3.11 ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]


最初に結論を言ってしまおう。

2011年3月11日午後2時46分を境に、この国は新しい時代に突入した。

後世の歴史家は、日本の歴史を「3.11以前」と「3.11以降」に分けて記述するだろう。

「何もかもが、これまでとは違う」。

そんな時代が来た。

いま私たちはそんな歴史的な大事件を目撃している。

「大地震」「大津波」「原子力発電所事故」と、ひとつだけでも「国難」級のクライシスが三つ束になって襲ってきたのだ。

これ以上深刻な危機は「戦争」しかない。

いや、戦争は人間が相手なので交渉可能だが、地震や放射能はそれもできない。もっと厄介かもしれない。

少しだけ立ち止まって、この最大級のクライシスから学べる教訓を考えてみた。

たくさんあった。

そのひとつは、私たちの政府、官僚、政治家、マスコミといった、この国の「ベスト&ブライテスト」たちの振る舞いだ。

最大級のクライシスに対処する中で彼らが見せる実績こそが、この国のトップたちの「ベスト記録」であることを覚えておいてほしい。

どんなにがんばったって、彼らには「これ以上の力」は出ない。

いま私たちが見ている政府や官僚、マスコミ報道の姿が彼らの全力の実力なのだ。「次はもっとがんばります」と言い訳しても「次」はもうない。

そんな「最終実力テスト」で見えた問題はあまりに多い。

市民を混乱させるだけだった政府の秘密主義。
「想定外」といいながら「原発の全電源喪失も水素爆発も想定していなかった」と「無想定」だった東京電力。
そんな政府や電力会社を問う意志や能力に欠けた報道の無能ぶり。

被災地で唯一の情報源だったかと思えばデマが嵐のように吹き荒れ、信じていいのかどうかもわからないカオスだったインターネット情報。

ここで指摘しておきたいのは、政府が露骨な「new speak」政策を堂々と展開したことだ。

「ニュースピーク」とは ジョージ・オーウェルが小説「1984」の中で使った言葉だ。「政府にとって都合の悪い事実を、耳当たりのよい言葉を造語してすり替える」行為を指す。

アメリカ政府や軍はこうしたニュースピークの常連である。「collateral damage」(付随的被害)とは「軍の攻撃に非戦闘員の市民が巻き込まれて殺傷されること」。

「friendly fire」(友好的攻撃)は「間違って味方を爆撃してしまうこと」だ。

そういえば、旧日本軍が「撤退」「敗退」を「転進」と言い換えたのもニュースピークの古典例だ。

3.11クライシス以降、日本政府が「ニュースピーク」をあまりに堂々とやり続けるのには愕然とする。

例えば、もう流行語というかジョークにまでなっている「計画停電」という言葉。

これは地震と津波、原発暴走という東京電力にとって制御できない事態によって多数の発電所(火力含む)がダウンし、発電量が電力需要に追いつかなくなった事態を指す。

つまり「制御不能」が実態なのだ。

ところが東京電力と政府は「停電区域を計画的に回す」という最後の一部だけをピックアップして「計画停電」と強引な造語を流布してしまった。

これは「首都圏停電」という最悪の事態を招きながら、それでもなお「秩序は保たれている」「制御下にある」と事実をごまかす「プロパガンダ」以外の何物でもない。

また福島第一原発の建屋が水素爆発で粉々に吹き飛ぶ映像がさんざん流れたあと、枝野幸男官房長官が使った「爆発的事象」という言葉も悪質だ。

あの映像はどう見ても「爆発」だった。当時は、同原発が「炉心」→「圧力容器」→「格納容器」→「建屋」と三重の防御があることすらほとんど報道されていなかった(吹き飛んだのは一番外側の『建屋』だけ)。

「原子炉そのものが爆発したのではないか」「チェルノブイリ原発事故のような放射性物質が大気中にまき散らされるのではないか」というパニック寸前の恐怖が充満していたさなかである。

そこにあえて「爆発」ではなく「爆発的事象」という薄めた言い方をすれば、不安は倍増する。

「なぜそんな聞いたことのない言葉を使うのか」
「事態を軽く見せたいのではないか」
「何かもっと悪いことを隠しているのではないか」
「現実はもっと悪いのではないか」
という疑心暗鬼が飛び交った。パニックが起きなかったのは奇跡だ。

こうした政府や東京電力のニュースピークに「なぜ?」と問いかけることをしなかった報道も罪が深い。

結局ニュースピークを拡散させることに力を貸しただけだった。

3.11における政府、官僚、マスコミ企業の行動も、後々じっくり追求しなくてはならない。

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