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行き詰まる日本語ネット ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

久しぶりにアメリカ全土を取材で回ってきた。

3週間ほどかけてサンフランシスコからワシントン、フロリダと3万キロ近くを旅してみたのだが、仕事用にと思ってMacBookを持っていったら、ホテルも空港もカフェも、場合によっては飛行機の中まで無線LAN完備が当たり前、ラジオみたいにどこでもネットオンできる。

あまりに快適でびっくりした。

テレビも新聞も必要ない。

もうすでに「インターネットがメインメディア」という前提で社会が動いているのだ。

まさかと思って旅の間ずっと空港や地下鉄、街頭でカフェでと必死に探したのだが、新聞を読んでいる人は十人も見かけなかった(いまアメリカの新聞社は次々に倒産している)。

いても老人ばかり。後は老いも若きもノートパソコンかスマートフォンを一生懸命いじっている。

ちなみに携帯端末は「パーソナルユースではiPhoneの圧勝、ビジネスではBalckberryが圧勝」だという報道を、これもネットで読んだ。

取材で友だちになったアメリカ人に、撮影した写真を見せたい。が、メールでは面倒くさい。

いいチャンスだと思って「あなたが使っているネットワーキングサービス(SNS)は何か」と片っ端から聞いてみた。

すると例外なく「メインはFacebook。次はMyspace」という答えが返ってきた。

日本では大ブームのTwitterも、アメリカでは使っている人に会わなかった。

そう思って調べてみると、Facebookの1ヶ月の訪問者数は約1100万人、Myspaceは約600万人もいるのに、

Twitterは180万人程度でしかない(2010年1月9日ニールセン社調べ)。

じゃあ、とFacebookを使い始めて驚いた。

名前で検索してみると、アメリカ人の友人はほとんど登録していたのだ。

16年前に卒業したコロンビアの大学院仲間を名簿でリストアップ、片っ端から検索してみたら、半分以上とFacebookで連絡が取れた。

しかもよく見るとインドやイギリス、フィリピンなどなど世界中に散らばっている。うれしくなって世界の音楽仲間、仕事仲間など検索してみたら、いるわいるわ。

「友だちの友だち」「友だちの友だちの友だち」とみるみる紹介が広まり、使い始めて1ヶ月で世界150人のネットワークができてしまった。

つまりFacebookはアメリカにとどまらず世界の標準ネットワーキングツールになり始めている。

ごくありふれたある日、私はパリのフランス人女性ジャーナリストと「きょうは吐き気がする」「心と体はひとつですよ」とチャットし、ニューヨークの画家とその作品を眺めながらアニメの影響について議論し、インドネシアのデザイナーにウエブ写真のオフロードバギーが排気量何CCか尋ね、フィリピンのキーボード弾きのお姉さんの背中のタトゥーをほめ、ベルギーの舞踏家に初メールの挨拶をしている。

土曜日の昼下がり、キッチンテーブルでのんびりメールしていたら、ガザのパレスチナ人青年(知らない人)から「ハロートウキョウ、元気ですか?」とメッセージが来て、1時間半チャットに熱中、最後はガザのラップグループのネット音源を教えてもらったこともある。

起きていることが現実とは思えないくらいパワフルな現象だ。

ひとつ注意してほしい。私はFacebookを全部英語でやりとりしている。

世界のインターネットの標準言語が英語であることは、もはや否定できない。

アメリカや欧州だけではない。アジア人やアフリカ人でも、旧宗主国が英語国だと英語を使える人が多い(人数の多さではインドが代表)。そんな人たちは次々にグローバルネットワークにつながり始めている。

いくらツィッターが盛り上がろうと、日本語を使っている限り、インターネットはグローバルメディアでも何でもない。

日本語を使える人だけの内側で終る「島国メディア」にすぎない。

つまり、世界中の人々にインターネットが普及し尽くしたとしても、英語を使える人と使えない人のラングエージ・ギャップは最後まで残るということだ。

当分の間、世界のネット標準言語一位は英語だろう。

それに続く言語が出てきたとしたも、まず間違いなく北京語だ。

リアルの世界と同じように、日本語は非日本人には使われない特殊言語のままだろう。

今はジョークでしかないオンライン翻訳がもっと賢くなってくれればいいのだが。そうでないと、日本人は世界の情報メインストリームから仲間はずれになってしまう。

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