Twitterブームなんて日本の外じゃもう終ってます [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]


おお亜米利加。
ふざけた切ったこの連載も4年、最後くらいマジメに仕事しようと思って3週間かけて取材したですよ。しかし経営難の週刊(ピー)曜日は取材費出してくれないんで、飛行機代もホテル代も自腹、サンフランシスコだワシントンDCだフロリダだと動きも動いたり全米ツアー3万キロ。時差3時間&気温差30度を言ったり来たりしたもんですっかり体がおかしゅうなってもうた。あぐぐ。
いやしかし噂には聞いてたんだけど、彼の国じゃホント新聞テレビって終ってるね。新聞読んでる人、飛行機で地下鉄で街角で必死に探したけど、3週間で十人おらんかったな。しかも全員老眼のジジババばっかり。
40歳以下はみんなiPhoneかBlackberryでチャカチャカネットしてるし、キンドルで本読んでいる人もけっこういた。ABCだとかNBCなんて三大ネットワークですら、広告はハナテン中古車センターレベルのベタな地元中小企業ばっかりで、メリルリンチとか金融系CMがどかどか出ていた十年前と同じ国とは思えん。
でわが祖国ニッポンに帰ってくると、こりゃ驚いた、誰も彼もみんなつぶやきだツィッターだと大騒ぎ。
て旦那、アメリカじゃツィッターブームなんてとっくに終ってますぜ。誰も珍しがらない。で結局facebookやmyspaceほどみなさん使っているという感触ないまま終った。
いや、便利なのは便利っす。すごいマスメディアっす。電車が遅れるとヤフーやJRのサイトより早く遅延情報出ます。寄ってたかって作る速報ニュースサイトみたい。新聞やテレビなんぞツイッターに息の根止められるのとちゃいますか。疑似世論ちゅうか、情報・意見・知恵募集ちゅうか「集合知」得るにはほんにええ道具どすなあ(ホメとかないとつぶやき攻撃される!)。
でも例によって経済雑誌なんぞの「140字、1億人の『つぶやき』革命」とか「ツイッター革命、上陸!」とか「ツイッターで企業も変わる!」って、なんかあ、ていうかあ、チョットちがう。って感じぃ?
ジャパンの皆さんはほとんど気付いていないけど、日本語でインターネットやってる限り、インターネットはグローバルメディアでも何でもない、結局ニポン人ていう島国民族から外に一歩も出ないローカルメディアなんですぜ(現段階じゃギャグネタでしかないオンライン翻訳がチョー賢くなりゃ話は別だが)。
わたしゃ愛国者なんでヒジョーに腹立たしいんだが、インターネットの世界標準言語がイングリッシュであることは間違いない。
現にわたしゃこの原稿書きながらフェイスブックでパリのフランス人女性ジャーナリストと「きょうは吐き気がする〜」「心と体はひとつやで〜」とチャットし、ニューヨークの画家とその作品を眺めながらアニメの影響について議論し、インドネシアのデザイナーにウエブ写真のオフロードバギーが排気量何CCか尋ね、フィリピンのキーボード弾きのねえちゃんの背中のタトゥーをほめ、ベルギーの舞踏家に初メールの挨拶をしとる。これ全部英語。ひとつのウエブ画面に、世界がフラットに並んどる。ホンマ夢のように素晴らしい。
でもブロークンでええから英語で書かないと、はっきり言うが、欧米はおろかアジアやアフリカ(旧イギリス植民地のインドとか英語めちゃめちゃうまいぞ〜)等等、世界のコミュニケーションメインストリームから完全仲間ハズレです。
同じSNSでもあの差別のデパート・アメリカでのフェイスブックには「嫌ユダヤ人」「ホモを国外追放に」なんてヘイトコミュニティが発生しにくいのは何でだと思います? 英語でそんなコミュ始めた日にゃ、世界中から反撃の書き込みと訴訟の嵐がこれまた英語で殺到するからです。
はい、わがミクシィでは「日本に朝鮮人はいらない」とか「史上最兇痴女酒井法子は許せない」とか、ヘイトコミュ花盛りですね。
おめでたいもんです。そんなもんで盛りあがってられるのは、みなさんがグローバルコミュニケーションから取り残され、浄化が効かない島国インターネットの住人だからなんですよ。
ツイッター礼賛のみなさん、そんなに楽観してていいんすか?日本語ツイッターに流れている言説なんて世界スタンダードからすりゃ大半は読む価値ゼロですぜ。
(2010.3.17)
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