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老齢団塊 五つの赤い風船コンサートに突入せよ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 小生いやしくもジャーナリストのはしくれ、危険があろうが薄気味悪かろうが、そこにニュースあらば現場を踏む覚悟は常にできております。

 しかし、ぐわわ、「五つの赤い風船 結成40周年記念コンサート」の告知を新聞で見たときはさすがにビビった。

 なんでメンバーが4人やのに5つの風船やねん、とか72年に解散したのになんで40周年やねんとか、細かいツッコミはこの際、なし!

「遠い世界に〜 旅に出ようか〜」って歌、中学の合唱コンクールとかで歌ったこと、ありません?

 あの文部省推薦の名曲「遠い世界に」をはじめ、70年前後に数々の名曲を生み、日本のフォーク・ムーブメントの走りにして中心だった大物、それが「五つの赤い風船」なんです。

(いや、おっちゃんも子どもやったしあまり知らんねんで)。

 恐る恐る会場に行ってみて、またビビった。そこはなんと靖国神社そば、東京・九段会館。

 くわあ、ここ「日本遺族会」の本部やんか。

「戦争を知らない子どもたち」が声を合わせて歌っている隣の部屋で、「予科練乙×期・空の会」「トラック・パラオ諸島慰霊友好親善団思い出の会」なんてやってる。

「死して護国の鬼」となられた英霊のご遺族と、血気盛んなゲバルト団塊の世代が乱闘、なんてなったらどーすんだ。

 いやしかし、蓋を開けてみれば杞憂でありました。ゲバルト団塊も、すっかり枯れておられた。

 なにせリーダーの西岡たかしはコンサート当日の5月27日が63歳の誕生日!

 ゲストもすごいぞ。「走れコウタロー」こと山本コウタロー・元参議院議員候補にして白鴎大学教授が59歳。

「戦争を知らない子供たち」こと杉田二郎は61歳。「帰ってきたヨッパライ」「あの素晴らしい愛をもう一度」を大ヒットさせた、元ザ・フォーク・クルセダーズの北山修・九州大学大学院医学研究院教授にして日本精神分析学会会長(60)。元「かぐや姫」の山田パンダなんか62歳だ! どうだ、参ったか。昔なら赤いチャンチャコ着て長寿を祝う齢だぞ。

 最近はアメリカ文学の翻訳家になっちゃったけど高校生で「受験生ブルース」を大ヒットさせた中川五郎(58)とか、テレビの相撲中継の途中で力士のマワシが落ちたという名曲「悲惨な戦い」を書いたなぎら健壱(55)なんて若い若い。

 ウヒヒ、今出た名前が全部わかった読者よ、貴兄も相当なオールドタイマーですな。

 とまあ、昔はサングラスや口ひげでキメていたみなさんも、今じゃ古本屋のオヤジか老バーテンダーみたいな風貌となり、話し方も何かフガフガしている。

 山本コウタローが「こないだ道で『ムツゴロウさんですか』と言われました」と痛い自分ネタをカマせば、北山教授は「今度会う時はみんな死んでるかもね〜」とお医者さんらしいブラックジョークで応酬。

「いや〜無理矢理脈々と生きとります」

「え〜メンバーが胆石になりまして」。

 おい、MCがだんだん定年退職者の同窓会に似てきたぞ。

 でもやっぱりギター持って歌うと

「力を合わせて/生きる事さえ/今では/みんな忘れてしまった/だけどボク達/若者がいる」

 と、地滑り的にタイムスリップしちゃうんだな。

 嗚呼、永遠の青春に生きる団塊フォークの諸先輩方。おつかれさまです。

 みなさんにはジャズやブルースのように「自然に加齢する」ことは許されんのですね。60過ぎても「明日の世界」を探しに行かにゃならんのですねえ。

 もう「明日」は来てますよ。今ここに。


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