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そのオチはねえだろSEX AND THE CITY!! [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

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 小生ニューヨークには3年住んだんですが、何が困ったって「颯爽と歩く美人キャリアウーマンの写真を撮れ」っていう東京の上司からの注文にはホンマ困った。

 だってそんな人いないんだもん。

 田舎者ジャップ、おっと間違えた日本人が思うNYのキャリアウーマンって、パツキンのきれーなねーちゃんがビジネススーツばしーと着てS女王様みたいなピンヒールで闊歩しとる、なんて勝手に想像するらしいんだが、アホらしゅうていかん。断言するよ、そんな人ゼッタイおらんね。

 あんたらね、ファッション誌やテレビドラマの作り話にだまされとったらあかん。アタクシもNYで大学院行ったから証言しますがね、学校のお仲間でMBAとか弁護士資格とか持ってるホントのエリート女性は、髪形も服装もジミーヘンドリクス。地味なのよ。

 だって、チャラチャラしとるとクライアントや上司に信用されんでしょ? 重い書類資料等担いでいるうえに、NYの街路は舗装がガタガタ。ピンヒールなんぞで歩けるもんかい。みんなダサいスニーカーかペタ靴だオーイエー。

 ところが98年ごろから、やたらハーデーな「本物のニューヨーカーよりニューヨークっぽい」ねーちゃんたちがオッサレーなブティークやらバァやらに出没し始めた。

 一体いかなることぞ、と呆然としておったら、彼女らは「Sex and the City」なる連ドラを見て、NYに押し寄せたアメリカの田舎者あるいはオーストラリア人などであることが判明。あぷぷ。

 ドラマの登場人物そっくり、オッパイの谷間ドバーのボディコン(おお何と懐かしく甘美なる響き!)にピンヒールではしゃぐ「なんちゃってニューヨークガール」に、本物の地元民は「あんなのニューヨーカーじゃない」と顔をしかめとった。

 かくして本作「SATC」(て略称するんだって)はWTCがアルカイーダにぶっ飛ばされようがお構いなしに2004年まで続き、グローバリー大ブーム、今年ついに映画版まで公開されたのはみなさんご存知ね。

「何でこの人らこんなに頻繁に着替えるの?」

「あの混雑した街でいつも女四人横一列に並んでのろのろ歩いて迷惑でしょ?」

「何でキャリアウーマンのくせに毎週ランチに集まれるほどヒマなの?」

 等々、疑問噴出だが、まあいいや。

 NY在住経験のある女性に聞いてみると「私もハマった」って人、意外に多い。主人公四人が「私もそう思ってた」てことを代弁・代行してくれるんで、スカッとするんだって。

 例えばその会話。キョーレツにお下劣ざます。

 病気で睾丸をひとつ摘出した男友達を評して

「キンタマひとつでも健康ならいいじゃない」
「女はキンタマなんてどうでもいいのよ」
「女のハンドバッグみたいなものでただのフクロだけどないと困るのよね」
「私の彼、チンチンは大きいけどキンタマが一つか四つかなんて覚えてないわ」

だって。お母さんぼくこわいよう。

 が!ドラマが始まって十年。最初は「大都会、三十過ぎて恋人もおらん。仕事はうまくいかんし貯金もねえ」って貧しくもリアルな女性の悩みが人気だったのに、人気が巨大化したせいでストーリーが暴走、惚れた別れた腫れた切れたと痔のような反復運動のままみなさん四十すぎに!

 んで映画はどう着地するんだと思ったら「チョー金持ちの男と結婚する」ってオチ。おい、そりゃねえだろ。

 ブツクサ言いながら映画館を見回すと、カップルか女性客しかおらん。

「そうそう、そうなのよね〜」と上映中ウルサイ後の席の女め、終映後も「だからね、あれはね」とツレの男にウダウダ解説しとる。

 悄然と押し黙る男の沈痛な表情。くくく、わかるよ思想教育に連行された同志よ。

 夢、破れたんだね。黙祷。



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