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めったにほめない私だがほめますよ コマイヌ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

 す•び•ば•せ•ん•ね。今回もブーたれますよ。

 わし、日本のいわゆる「ライブハウス」て好かん。

 だってミュージシャンを甘やかすから。

 ほれ、よくある駅前商店街の雑居ビル地下一階、どーでもええ模倣バンド四つ二千五百円で!、紙コップ入りシケたドリンク五百円で!、壁は落書きとギグ宣チラシだらけ、てなハコよ。あんたらほんま保守的やね。おっちゃんがパンクバンドで暴れてた二十五年前から時計止まっとるやん。

 いやね、アタシもニューヨークで演奏するまで気づかなんだがね(おっちゃんベース弾きやねん)、あちらの”bar”(バンド演奏つき酒場)って、基本は飲酒酩酊•泥酔乱闘•嘔吐失禁する場所なのよ。

 有名なパンクのゆりかご「CBGB」(今はもうない)だって店内の半分はバーとビリヤード場だ。言ってみりゃ「つぼ八」でバンドが演奏してるみたいなもんで、よほどいい演奏しないと客は振り向かん。

 ホント東夷南蛮ども、大音響なんぞ屁とも思わず飲んだくれとる。ここじゃミュージシャンは海兵隊みたいに鍛えられるぞ。

 それに比べりゃ日本のライブハウスなんて大アマ。だって客は最初から演奏聞きに来てるんだもん。

 んでしょーもない演奏でもイエーイエー、最後はアンコールアンコールのお約束(客はだいたい知り合い)。

 こげなメダカの学校じゃ、客が振り向かざるをえんようなパワフルな音楽は出てこんじゃろ、フツー。

 NYみたいなハコは東京にはないなあ、寂しいなあ、などと落涙してたら、あった!

 渋谷はラブホテル街の薄暗い裏路地、エログッズ屋とエロマッサージ屋の裏に「Ruby Room」って怪しげな電飾看板。

 ワケわからん倭人•異人どもが出入りして、とってもラブリーないかがわしさ。しかも火曜夜はサインインすりゃ20分間ステージで何してもいいっていうじゃありませんか。

 で客ほとんど毛唐、じゃなかった欧米人だからだろうね、演奏がよけりゃアカペラだろうがバグパイプだろうが大歓声と握手攻めが待ってる。

 が、つまらんと義理拍手もない。ほんまアングロサクソン的実力主義。

 だから「こら他じゃ演奏できんわなあ」って個性的なミュージシャンが雲霞のごとく集まってきよる。ぼかァ大好きだなァ、こういうの。

 以上前置き。長い。すまん。ここで見つけた中でもとびきりオリジナルだったデュオ「コマイヌ」を紹介したかったのだよ。

 いいよ〜コマイヌは。かわいらしいTシャツ•ジーンズのおねえちゃん二人組。

 が!ANAどってはいかん。アンナちゃんはマックの白いラップトップを「演奏」しながらボサノバみたいな声で淡々と歌っとる。相棒マイちゃんはトランペットを吹いとる。サンプラーやらディレイやらフェイズシフターやら機械とコードの山に埋もれ、声にペットに山びこみたいなエフェクトがかかっておお牧場はアンビエント。

 じゃ、よくあるアンビエントテクノじゃん。ウヒヒ最後まで聞けなさい。

 コマイヌは何と即興演奏バンドなのだ。鈴だパンダ太鼓だとおもちゃ、ケータイに録音した踏切の警報音、ガキの声、雷の音など(演奏に来る途中でテキトーに拾ったらしい)エフェクトがかかって音楽の一部でアンビエント。これがまるで雨上がりの森を歩いているように気持ちイイからぼかァ不思議だなァ。

 だいたいやね、パソコンとペット、おもちゃにケータイで即興音楽やっちゃうってのが、ギターだベースだドラムだって頑迷固陋の邪教「バンド教」を断固粉砕してくれて気持ちええね。

 おれはめったにほめないが、今回は拍手すっぞ。ブラボーブラボー。

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