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オバマ大統領が象徴する「アメリカの世紀」の終わり ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

 世界を支配する超大国(super power)の条件「三つのM」とは何か、ご存知だろうか。

 Military(軍事力)、Media(マスメディア)、そして Money(通貨)の力である。

 1991年にソ連が崩壊•消滅してから、この三つのMを兼ね備えている国は世界にアメリカしかない。日本はマネーでは強いが、軍事やメディアの海外での影響力がゼロに等しいので、大国にはなれても超大国にはなれない。

 米国の軍事力の強さは言うまでもないだろう。人類を破滅させることができる量と輸送手段を持つ核兵器はもちろん、世界のどこで何が起きても対応できる通常兵器と兵力、輸送力を、他国に頼らずに行使できるのは米国だけだ。

 米国のマスメディアの世界的な優位は、時代が変わっても一貫している。1980年に開局したCNNの影響力は今も健在だし、インターネットという新しいマスメディアも米国生まれ。マイクロソフト、ヤフー、グーグルと、インターネットメディアの新しい主役たちはどれも米国から登場している。

 そして国際基軸通貨としてのドル。

「基軸通貨」の定義はいろいろあるが「国境を越えたモノや資本の決済に使える信用」=安心感が一番大事だ。

 外国と商売をしてドルで代金を受け取っても、それが突然紙くずになった、自国通貨に交換したら大損した、なんていうことがない。こういう安心感を「通貨価値が安定している」という。「通貨価値が安定している」ためには「米国の政府や金融システムが安定している」ことが必須だ。

 政府が崩壊状態になり、1ヶ月のインフレ率が279京%(1京=10の16乗)なんてジンバブエ•ドルは、絶対に基軸通貨にはなれないのだ。

 ただひとつ問題なのは「安定しているかどうか」は主観的な判断だということだ。つまり世界の人々が米国政府や金融システムを「信用」しなければ、ドルは基軸通貨として機能しない。「ドルは危ないから受け取りません」と人々が言い出せば、基軸通貨としてのドルは崩壊する。

 ここまで説明すれば、過去8年のブッシュ政権の愚策がいかに米国の「信用」を破壊したか、お分かりだろう。

 まずイラク戦争。9.11テロでパニックしたブッシュ政権が、「イラクに大量破壊兵器がある」というウソ情報に飛びつき、9.11テロには何の関係もないイラクをムチャクチャに破壊してしまった。逆立ちしても正当化しようがない阿呆な戦争である。

 これで「米国政府」への信用はぺちゃんこ。

 そしてサブプライムローン危機。「グローバル•スタンダード」などといばっていた米国の金融システムの正体が「金融工学」(ルビ:デリバティブ)で膨れ上がったモンスターのような「バブル」にすぎなかったことがバレてしまった。

 20世紀の100年間に、人類は2度の世界戦争を経験した。そしてどちらの戦争でも勝敗を決定したのは米国だった。

 特に1945年以降、米国の軍事力とドルが、安定した平和と貿易を保障したため「先進国」と呼ばれる資本主義国は平和と経済繁栄を享受できた。

 この時代を歴史学や政治学では「Pax Americana」と呼ぶ。ラテン語で「アメリカ支配による平和」の意味だ。(歴史上ローマ帝国支配による平和のことをPax Romana、英国の世界支配による平和のことをPax Britanicaと呼ぶのにならう)

 戦後、米国の軍事力の保護下で経済発展を遂げた日本は(お礼の意味かどうかわからないが)、米国債をせっせと買った。

 実は、米国政府が赤字をジャージャー垂れ流しても、ドルの信用崩壊を気にせずに済んだのは、チョー友好的な日本が「国債を買う」という形でいくらでもおカネを貸してくれたからなのだ。

 だから歴代の大統領は「日米関係は世界でもっとも重要なパートナーシップ」とヨイショしてくれたのである。

 ところが、経済発展した中国がいつの間にか米国債を買いまくり、08年9月、とうとう日本を抜いて世界最大の米国債保有国になってしまった(中国=5850億ドル/日本=5732億ドル)。

 日本に比べると、中国はどう見ても米国に友好的な国とはいえない。そんな国にサイフを握られたら、米国の信用は、ドルの信用はどうなるのか。

 それを見透かしたかのように、サルコジ仏大統領は08年11月の金融サミット直前「ドルはもはや唯一の基軸通貨とは言い張れない」と演説している。

 では、ドルに代る基軸通貨があるのか? 見当たらない。

 政府も金融システムも信用を失ったまま「代わりがないから」という消極的理由でドルが基軸通貨に居座り続けると、どうなるか。

 米国=ドルはますます不安定になり、世界はぶんぶん振り回され続ける。オバマは「パックス•アメリカーナ」の最終章を飾る大統領になるかもしれない。


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