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小池百合子はけっこうタフでしたたかでプロフェッショナル政治家だぞ ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

 もしあなたが小池百合子・前防衛相(1952年生まれ)のことを「二世議員でもないのに努力して大臣まで登り詰めたアマチュア型政治家の星」だと思っているなら、考えを改めた方がいい。

 彼女の政治家としてのキャリアを見れば「人気上昇中の権力者をかぎ分け、その人物に取り入る能力」と「その人物が落ち目と見るや、臆面もなく別の権力者に乗り換える節操のなさ」は、天才的とさえいえる。

 私は彼女を貶しているのではない。そんな能力も、永田町の権力闘争をサバイバルし、さらに権力を求めてのし上がる「プロフェッショナル型政治家」には重要な資質なのだ。

 最近の例を挙げよう。9月12日正午すぎ、安倍晋三首相が「首相を辞める」と自民党幹部に伝え、政権が崩壊した日、小池は何をしていたのか。

 同じ日の夕方に発足した「小泉前総理の再登板を実現する有志の会」(05年9月の『郵政総選挙』で大量当選したいわゆる『小泉チルドレン』らの集まり)に賛同、署名簿にサインをしているのだ。

「自民党をぶっ壊す」と宣言、世論の人気を一身に集めていた小泉純一郎に接近し、03年9月、小泉内閣で初の大臣ポスト(環境大臣。『クールビズ』を提唱して成功させた)を射止め、郵政総選挙では「刺客」までやってのけた彼女にすれば、当然だろう。私はそう思った(結局、小泉は動かなかった)。

 ところが、9月17日の朝刊を開いて私は仰天した。16日の自民党総裁選の街頭演説の写真に、小池が「司会」としてちゃっかり写っているではないか。

 しかも、右側で候補の麻生太郎がマイクを手に熱弁を振るうのをまったく無視するかのように、左に立つ対抗馬・福田康夫の横に寄り添い、視線を重ね、揃って微笑んでいる。メイクは薄く、茶とベージュの服装も地味で、福田と並ぶとまるで上品な夫婦のようにさえ見える。

 そう、この時点ですでに、自民党派閥の大勢は福田支持に回っていたのである。このタイミングで、元ニュースキャスターの小池が、自分がどうカメラにとらえられるか、計算していないはずがない。

「ああ、彼女はまた『相手の男』を乗り換えたな」。私はそう思った。

 ここで小池の「権力者遍歴ぶり」を振り返ってみよう。

 92年7月 テレビ東京のキャスターから転身、元熊本県知事・細川護煕が結成した日本新党から参議院比例区で初当選

93年7月 衆議院・兵庫2区(出身地)にくら替え、当選

同8月 細川連立内閣で総務政務次官

94年6月 日本新党副代表

同12月 新進党副幹事長

98年1月 小沢一郎党首の自由党へ移る

2000年4月 自由党が分裂、保守党へ

02年12月 小泉総裁の自民党へ移る。環境大臣、沖縄・北方担当大臣

06年9月 安倍晋三内閣が発足。内閣総理大臣補佐官

07年7月 「(原爆投下は)しょうがない」発言の久間彰生大臣の辞任を受け、防衛大臣

同8月 安倍内閣改造を前に続投を拒否。

 お分かりだろうか。細川護煕→小沢一郎→小泉純一郎→安倍晋三と、小池はその時々の権力者と「付き合っては別れ」を繰り返しながら防衛大臣まで上り詰めたのである。

 しかし、この後が問題だ。彼女は自民党に移ってまだ5年。党内に権力基盤がない。

 自民党本流議員の権力基盤とは「政治家・官僚・利益集団」のいわゆる「鉄のトライアングル」がもたらす資金と情報、そして票である。そういう議員たちを「族議員」という。

 わかりやすい例は、就任後8日で農水相を辞任したスキンヘッドの遠藤武彦(バンソーコー大臣こと赤木徳彦の次)だろう。山形県という農業地域を票田に、農業共済組合という利益団体の組合長だった遠藤は、絵に描いたような「農水族議員」である。

 小泉政権は、この「族議員」が長年、政策決定の牙城にしていた自民党内の「部会」の意向をほとんど蹴飛ばし、「諮問会議」という首相直属の場で政策を決めた。そして閣僚や党幹部人事でも、派閥のバランスや年功序列をとことん無視した(『自民党をぶっ壊す』とはこのこと)。

 その結果が、女性や若手議員の抜擢人事という現象になって現れた。小池は、そんな小泉の人事手法にうってつけの人材だったのだ。

 その意味では、01年に小泉が外務大臣に選んだ田中真紀子と、小池はよく似ている。

 似ているといえば、官僚機構や族議員と衝突して大臣職を追われたという点でも、二人はよく似ている。田中は、北方領土返還政策や外務省改革などをめぐって、数少ない「外務族」鈴木宗男や外務官僚ともめ事を繰り広げ、更迭された。小池は防衛省の事務次官(大臣に次ぐナンバー2。官僚の最高ポスト)人事に介入しようとして官僚ともめたあげく、更迭される前に自分で辞めてしまった。小泉・安倍という「後ろ盾」を失った瞬間、押さえつけられていた「鉄のトライアングル」が逆襲したのである。

 田中真紀子には、父・角栄から受け継いだ強固な地盤が選挙区にあるので地位は安泰だろう。が、権力基盤のない小池が自民党で存在感を保つには、世論の人気に直接支えてもらうしかない。

 だから彼女はマスメディアによく出る。ワシントンでライス(コメ)国務長官にひっかけて「マダム・スシと呼んでください」とあまりさえないジョークを言ってみたり、環境省の大臣室に手作りのお総菜を並べたりと、小泉そっくりの「ワン・フレーズ」型「テレ・ポリティックス」(テレビ依存型政治手法)を続けていくしかない。

 いま自民党内には「ぶっ壊れた自民党を建て直す」(麻生太郎)という「小泉以前」への揺り戻しが起きている。きっと小池百合子は考えていることだろう。次の「相手」を誰にするのかを(敬称略)。


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