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日本は移民を受け入れて多文化社会に移行しないと衰退するしかないぞ ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

 東京で「CCS」という大学生のボランティア・サークルを見学に行ったことがある。

 仕事を求めて外国から日本に移住してきた移民、いわゆる「ニュー・カマー」を両親に持つ子どもたちは、学校へ行っても日本語がよくわからず、授業に付いていけないことが多い。また、塾や家庭教師に付く経済的な余裕のある家も少ない。そんな子供たちに、無料で勉強を教えてあげる。宿題の手伝いをする。そんなサークルだった。

 大久保にある区民センターの「教室」に一歩入って、私は仰天した。

 小学生や中学生、全部で30人か40人くらいの子どもたちがいただろうか。ワイワイと大変なにぎやかさに慣れてくるころ、気付いたのだ。中国系や韓国系など東アジア系の子どもが多かろうというのは予想していたが、よく見ると、ヨーロッパ系や中近東系の顔立ちの子どもが意外に多いのだ。アフリカ系の子どもも数人いた。

「中途半端になっちゃうんですよね」

 中国系のやんちゃな男の子に算数を教えていた男子学生が教えてくれた。

「家に帰っても、お母さんもお父さんも店(飲食店)の仕事が忙しくて、勉強や言葉の面倒を見てやる時間がない。だから、日本語も母国語も、どっちもいい加減なまま育っちゃうことが多いんです」

 「ニュー・カマー」とは、1980年代以降に来日してそのまま定住した外国人のことだ。第二次世界大戦前後に、日本にやって来た在日韓国・朝鮮人と区別するための言葉でもある。

 80年代以降来日する外国人が増えた背景には、83年、当時の中曽根内閣が「留学生受入れ10万人計画」を発表したことが大きい。これは西暦2000年までに日本で学ぶ留学生をフランス並みの10万人にしようという計画だった。その時にやってきた留学生たちがもう結婚し、家庭を持ち、その子どもたちが中学や高校で学ぼうという年齢に達しているのである。

 ニュー・カマーに限らず、在日外国人の社会的プレゼンスはもはや無視できる数ではない。法務省入国管理局が把握しているだけで、その数は約208万人。在日コリアンの約60万人を筆頭に、中国系が約56万人、ブラジル系が約31万人と続く。「不法滞在」も含めると、一体何人くらいになるのだろう? 200万といえば名古屋の人口とほぼ同じだ。

 いよいよ日本も本格的な「ハイフネイテッド・ジャパニーズ社会」に突入したのだ。私はそう思う。

 “Hyphenated”とはアメリカ生まれの言葉である。移民の国であるアメリカでは、その出身国によって”Irish-American”(アイルランド系アメリカ人)や”Japanese-American”(日系アメリカ人)、”African-American”(アフリカ系アメリカ人)というふうに、その出身民族・文化・地域をハイフン(-)で示す。

 それと同じように、「祖先のルーツは外国でも、日本人」という人々が、これからどんどん増えていくと思う。「君、どこ系?」「おれ?インド系」なんて会話が、普通にこの国で交わされる日も近いだろう。

 いや、そういう現実はもうすでに来ていると考えた方がいいのかもしれない。

 7月29日に行われた参議院選挙で民主党比例区の候補者だったツルネン・マルテイ氏(当選)は、宣教師として来日し、そのまま1979年に日本に帰化したフィンランド人である。いわば”Finnish-Japanese”=「フィンランド系日本人」だ。

 球団経営や携帯電話で有名な「ソフトバンク」社の孫正義氏もルーツはコリアだから、”Korean-Japanese”=「コリア系日本人」と呼ぶべきだろう。

 というより、もう日本には「ハイフネイテッド・ジャパニーズ社会」つまり移民を受け入れることを前提にした「オープン・ドア政策」しか選択肢がないのだ。日本人女性が産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」は05年に1.25にまで落ちた。人口水準を維持するのに必要な出生率は2.07なので、05年から日本は人口の「自然減」が始まっている。つまり人口が減り始めているのである。

 このまま「出生率1.25」が続けば、2050年ごろ日本の人口は1億人を切り、2100年には現在の半分である6414万人になることが政府統計でわかっている。それどころか、西暦3200年には日本人は世界に1人になり、絶滅する。そこまで事態は切迫しているのだ。移民を受け入れていかないことには、日本人は本当に「絶滅」してしまうのだ。

 悪い話では決してない。移民たちが世界からもたらしてくれる多種多様な文化。それは日本を「多文化社会」に変貌させずにはいられないだろう。その姿を、私は今からけっこう楽しみにしている。


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