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ツバル・温暖化で真っ先に沈む国 ["NUMERO Tokyo"(扶桑社)連載コラム]

読者のみなさんが使っているメールアドレスの末尾はだいたい「.jp」だろう。言うまでもなく「日本」の意味だ。イギリスなら「.uk」だし、フランスなら「.fr」だ。こういうメールアドレスやウエブサイトのURLの国を示す記号を「国別コードトップレベルドメイン」という。

 「国別コード」が世界各国に割り振られたとき、「.tv」つまり「テレビ」と同じつづりになる国があった。こりゃあきっと世界中のテレビ局が競って使用料を払い、大金持ちになるぞ、ラッキーな国だなあと誰も羨ましがった。しかし、そのほとんど誰もが、それが何という国で、どこにあるのか、知らなかった。

 その国の名は「ツバル」(Tuvalu)という。オーストラリアの北東約2500キロの太平洋に浮かぶ、サンゴ環礁の国だ。無名なのも、無理はない。なにせ島が9つ、国の面積を全部併せても26平方キロ(つまり5キロ四方)しかないというミニ国家なのだ。この島々に、約9700人の人々が暮らしている。

 最貧国にランクされている。少しばかりの漁業のほか、産業はないに等しい。耕作可能な土地はほとんどないし、飲料水にさえこと欠く。わずかながら、ココナッツやバナナが自給のために作られている。2000年に「.tv」のドメイン使用権をアメリカの会社に五千万ドルで売却、やっと国連に加盟できたという有り様だ。が、そんなことはどうでもよくなるような美しい国でもある。エメラルドブルーの海と白いサンゴの浜に抱かれ、人々はおだやかに、平和に暮らしてきた。

 が、とんでもない問題が持ち上がった。地球の温暖化に伴う海面の上昇で、島全体が海面下に沈没、国が消滅してしまうかもしれなくなってきたのである。

 なにせ最高でも海抜3メートルという国である。潮位が高くなる2〜3月がいちばんひどい。潮が満ちてくると、低地の地面からは泡が噴き出し、みるみる水たまりが広がって深さ30センチほどの「池」になってしまう。井戸水は塩辛くなる。サンゴの破片と砂でできた島はもろく、波で削られていく。「次に消える島」と言われるバサファ島は、テニスコート2面もない砂にヤシの木と茂みがへばりつき、点のような島の周りを波が洗っている(07年4月7日付朝日新聞)。

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 なぜ地球が温暖化すると海面が上昇するのか、説明しておこう。自動車や工場などが化石燃料(ガソリン、石炭など)を燃やす→で二酸化炭素が出て、地球の大気を覆う→温室のように熱がこもる→大気温が上昇する→北極・南極の氷や氷河が溶ける→海水が増える→海面が上昇する。こんな仕組みだ。

 このまま行くと、どれくらい温度は上昇し、海面は上がるのだろうか。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が今年2月にまとめた報告書は、恐るべき数字をはじき出している。

 今世紀末に地表の平均気温は1.8度から4度上昇する。そうすると、21世紀末の海面は、20世紀末に比べて18〜59センチ上昇する。そう言うのだ。「平均」でこれだけの数字が出るのだから、海流や潮の満ち引きによってはもっと大きな差が出るだろう。そのときツバルはどうなっているのだろう。

 いや、ツバルに限らない。最近日本人の旅行先として大人気のリゾート国、モルディブ。この国だって、ツバルよりは観光産業で潤っているが、海抜でいえば最高2.4メートルと大差ない。今世紀が終わるころには、約1200の島々のうちかなりの数がインド洋の波の下に消えているだろう。

 今のペースで温暖化が進めば、2080年には気温は2〜3度上昇、沿岸湿地の約30%が失われる。広範囲でサンゴ礁が死滅。毎年数百万人が沿岸洪水に遭う可能性が増える。海水温が上昇するから、漁業も被害を受ける。農業は低緯度地域ほど影響が大きい。被害はまず貧しい地域から広がるだろう。「報告書」は不吉な予言に満ちている。

 つまり、工業の恩恵なんてほとんど何も受けていないツバルやそのほかの国々が、どこか遠く離れた「先進国」の自動車や工場がまき散らすCO2のせいで沈んだり、洪水や干ばつで破壊されていくのだ。もちろん日本も、その「先進国」のひとつだ。

 ところで、あなたは、自動車を運転しますか?ついタクシーに乗ってしまったりしますか?





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