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EXILEはなぜ愛される?その2 [東京(中日)新聞連載アウトテイク]

 前回「物語」という言葉を最後に出したので面食らわれた方も多いのではないでしょうか。

 どうして音楽や歌手が「物語」を聴き手に伝えるんだ? 音楽が流行するのは、メロディや歌詞が大衆の気に入るからじゃないのか? そう思われるのではないでしょうか。

 もちろん音楽が流行するのに、メロディや歌詞が大事なのは言うまでもありません。が、私は敢えてそうした「レコードの上に記録された音楽」を視野の外にいったん置いてみたいのです。

 これはあながち荒唐無稽な試みではありません。いま、例えばEXILEにせよ、音楽だけでそのミュージシャンのことを好きになる人の方が、例外的な少数なのではないでしょうか。

 そのファッションを雑誌で見ることもあるでしょう。華々しいダンスやステージ装飾をDVDで見ることもあるでしょう。インタビューやトークをテレビ・ラジオで聞くこともあるでしょう。そしてもっと熱心なら、インターネットの検索エンジンでメンバーのバックグラウンドを調べたり、ファンのコミュニティサイトで情報交換したりする人もいるのではないでしょうか。

 善し悪しは別にして、私たちはいま、音楽をこうした「多面的な情報の総合体」として受け取る情報環境の中で暮らしています。レコードだけでなく、テレビ・ラジオ放送、DVD、インターネットなど、多様なメディアが音楽以外の重層的な情報を運んでくるからです。もはや「音楽が音楽だけで独り立ちすることはできない情報環境」に21世紀の日本人はいます。

 これは音楽だけに限ったことではありません。どんな商品も、その商品のファンダメンタルな価値だけでは競争できません。

 例えばスーパーでタマゴや野菜を手に取ってください。「××県○○村の農家△さんがつくりました」と顔写真までパッケージに印刷されていますね。タマゴや野菜の品質が完全にイコールと仮定するなら、こうした「物語」という情報が付いている商品の方が消費者に好まれ、売れます。

 いや、品質の差が分かりにくい商品ほど「物語」が付帯しているほうが有利といった方がいいでしょう。こうした商品の売り方をマーケティングの世界では「物語消費」と呼びます。一種の「製品外競争」ですね。

 もっと分かりやすい例に「エコ家電」があります。不思議なことですが、エコ家電では、その製品がどれほど地球環境に寄与しているか、厳密に測定され、表示されたりしているわけではありません(エコを偽装表示して問題になった冷蔵庫がありましたね)。

 「エコ家電」というジャンルでは、地球環境保護への貢献度で性能競争が行われているわけではない。「エコ」はそうした「製品内競争」ではないのです。消費者が求めているのは「自分がエコ家電を買うことで地球環境保護の手助けをする」という「物語」なのです。

 エコ家電を買う人は、冷蔵庫やエアコンを買うと同時に「エコに寄与している」という物語をも一緒に消費しているのです。製品の性能差が僅差になり、分かりにくくなるほど、こうした付帯する「物語」が消費を決める重要な要素になります。

EXILE LIVE TOUR 2005 ~PERFECT LIVE

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  • 出版社/メーカー: エイベックス・マーケティング・コミュニケーションズ
  • メディア: DVD



タグ:EXILE
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