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EXILEはなぜ愛される?その1 [東京(中日)新聞連載アウトテイク]

 「EXILE」(エグザイル)という14人組の歌・ダンスのユニットがいます。

 名前くらいは聞いたことがおありかもしれません。「ユニット」って何だとか、どんな音楽をやっているんだとか、いろいろご疑問はおありでしょうが、ここではとりあえず知らないままで結構です。このEXILEについての考察に入る前に、まず次のような事実だけ、知っておいてください。

(1) EXILEはいま日本のポピュラー音楽界ではトップスター級の人気者だということ。

コンサートを開けばドーム級の会場を楽々と満員にしてしまいます。09年3月に日本レコード協会が発表した「日本ゴールドディスク大賞」(08年のレコード会社からの出荷数マイナス返品数を元に集計)では、一年間にもっとも売り上げ金額の多い「アーティスト・オブ・ザ・イヤー」に輝いています。

売り上げベスト10アルバムにも、浜崎あゆみやB’z、安室奈美恵といったベテラン勢と並んでアルバムが3枚も入賞しています。CDの売り上げは421万枚を超えたとのことです。この10年で市場規模が半分に減るという大不況に苦しむ日本のCD市場にすれば、これは驚異的な数字。08年邦楽のマーケットはEXILEの「一人勝ち」だったといっても過言ではありません。

(2)  EXILEは日本の芸能界では珍しい「復活した敗者」です。

リーダーの「HIRO」こと五十嵐広之は、1989年から95年まで「ZOO」という歌とダンスユニットで活動していました。アルバムを12枚出し、テレビドラマの主題歌やCMにも曲が使われていましたから、日本のポピュラー音楽界では立派なキャリアです。

ところがZOOは解散してしまい、五十嵐も人気の頂点からどん底に落ちます。日本の芸能界は「一度転落した人気者」には冷たい。だいたいの人は周囲の手のひらを返したような仕打ちに耐え切れず、退場していきます。ところが五十嵐はそのどん底からまた人気のトップにはい上がり、返り咲きました(ですから彼は1969年生まれと年長です)。これは日本の芸能界では希有のことです。

(3) このカムバックに際して、五十嵐はもう一つ「ありえないこと」をやってのけています。

それはマネージメント会社を自分で起業してしまったことです。現在の芸能界はジャニーズやバーニングといった強力なマネージメント会社が群雄割拠していて、マスメディアやレコード会社、広告代理店に強固なネットワークを築いている。そこに新参企業が割り込もうとしても、普通は嘲笑されるだけで相手にされません。その旧態依然として芸能界のしきたりを、五十嵐はひっくり返してしまいました。これも希有のことです。

 さて、こうした事実を出発点に、大衆はEXILEにどんな「物語」を読み取ったのか、考えていきましょう。

EXILE LIVE TOUR

EXILE LIVE TOUR

  • 出版社/メーカー: エイベックス・エンタテインメント
  • メディア: DVD



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