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「ロックは若者文化」などとホンキで言っているヤカラがおったら腹の底から笑ってやれ [週刊金曜日連載ギャグコラム「ずぼらのブンカ手帳」]

 今年も盛夏、多数の「野外ロックフェスティバル」が各地で盛況、誠に結構なことであります。

個人的な思い出を振り返りますに、いやはやウドーさんには、ほんとヤラれちゃいました。だって、ジェフ・ベックとサンタナといえばぼくの中学のときのギター・ヒーローでしょ。プリテンダーズは高校・大学のときに夢中だったし、ドゥービー・ブラザースはまあ趣味じゃないけど本物を見られることなんて滅多にないし、バディ・ガイは三十越してから夢中のブルースヒーローだし、って、そんな顔ぶれを一堂に揃えられたら、一体どないせいちゅーんですか。見に行かないわけにいかないじゃないですか!

 というわけで行ってきました。「ウドー・ミュージック・フェスティバル」。遠路はるばる御殿場までオートバイで片道2時間半。入場料は驚愕の一万七千円。

 いるわいるわ、ロックファンでにぎわう会場・富士スピードウエイ! しかしあれれ、入りますと、何だかいきなり普通の野外ロックフェスとは雰囲気が違う。

 う、客席に並ぶロケンローラーのみなさまのご容姿を見よ。禿頭、薄毛、肥満、ビール腹、銀髪(あるいはそれを無理矢理茶髪に染めた金タワシヘア)と、なんだかまるで両国国技館か府中競馬場のようなありさまではありませんか。隣人の会話に耳を澄ませば「イヤぁ、こないだ××株を▲円で売り抜けてね」といやにナマ臭い。ステージの合間にフットサルに興じる不届きモノの若者なんていません。みなさま『日経新聞』や『週刊新潮』を黙々と読みふける、缶ビールと柿の種で乾杯し酩酊される、さらにはレジャーシートを敷き昏々と午睡をしていらっしゃる。嗚呼何としたことでしょう、まさにここはロック中年パラダイスだったのであります。

 おっとっと、天に唾してはおれません。かくいう筆者も四十三歳と七ヶ月、立派なおっちゃんなのであります。かつてピストルズだラモーンズだ東京ロッカーズだと大暴れしていた元パンクス少年も、あのとき「親不孝者」と泣き叫んでいた母と違わぬ老齢になりました。許してくださいおふくろさん。

 いやいや! 小生などまだまだ浅学非才の若輩者。元ヒッピー、フォーク・全共闘世代の諸先輩方に至っては、今や六十歳を超えられ、場合によっては孫もいる、もはや長寿と健康をお祝いすべきご高齢に達しておられます。

 そう、賢明なる読者諸兄にはもうお分かりでしょう。いまだなお「ロックは若者文化」などとホンキで言っている輩がおったら、腹の底から笑ってやってください。ロックは今や、親の世代からも公認される、安全で無難な文化と成り果てたのです。エリック・クラプトンのコンサートなどご覧ください。客の年齢といい、チケットのバカ高さといい、千昌夫のディナーショーとどこが違うのでしょう。

 40年前のロック・フォークにしても30年前のパンクにしても、あんなモノは音楽じゃない、ゴミだカスだ不良だと大人から社会のクズ扱いされながら、なにくそと花を開かせたのです。だから若者よ、今ごろロックなんかやっているキミをおっちゃんはカッコいいとは思わんね。「こんなの音楽じゃねえ」「聞くに耐えん」。ぼくたちがそう言って怒り狂うような音楽をどうか作ってくれませんか。ラップなんかいい線だと思うんだがなあ。ははははは。

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